2020.01.08

心の柔らかい部分にそっと寄り添う作品たち ―ハニカミヤ―

ハニカミヤの代表的な木のおもちゃ、おきあがりこぼし。

ハニカミヤは葉若俊也(はわか としや)氏と智絵(ともえ)氏の夫婦ユニットによるクリエイターです。その作風は見ての通り、とにかくかわいい。どこか懐かしく、温かみを感じる作品はほとんどすべてが手描きの一点物です。

その屋号通り、とてもシャイなお二人、イベントでの声がけに始まり、幾度かのメールを経てようやくインタビューが実現。アトリエ兼自宅近くの喫茶店で、お話を聞くことができました。

「はにかみ屋」の誕生

初期のころの作品。本業の傍ら書き溜めていた作品を個展でお披露目した。

クリエイターとして活動を開始してから15年、ハニカミヤとして完全独立したのがこの1年の出来事です。それまでは福祉関連の事業所で木工職員として働く傍ら、作品作りをこなしてきました。

葉若俊也の世界観を見出したのは妻・智絵氏

そもそも、“はにかみ屋”を立ち上げ、彼をアーティストとして見出したのが智絵氏です。ささやかな造形・デザイン会社で同僚として出会った当時から、絵や造形物に彼の持つ独特な世界観にいち早く気づきます。

彼の作品を世の人に知ってもらい、広く見てもらいたいという気持ちは、当時からまったまったく変わっていないといいます。

智絵氏はもっぱら彼の作品を世に出すためのディレクターやプロデューサーとしての役割をこなす一方、商品として売り出すものに関して絵付けやコスチュームデザインを行っています。そうした共同作業によって生まれるものがハニカミヤの作品なのです。

個展で発表された絵画はポストカードに。単にかわいらしいだけでなく、寂しさが漂うのもハニカミヤの作品の特徴だ。

一念発起し2018年に完全独立

2018年、俊也氏は満を持して完全独立します。つまり、福祉職員をやめたのです。完全独立すると何が違うのか。何より時間の使い方がまったく違ってきます。

“なにかしら作っていたい”という強い思いを自分のすべての時間に費やすことができるのですから、放っておけば寝食を忘れて作品作りに没頭してしまう俊也氏に、理想的な環境を与え、彼の作品を世に広めるため、ハンドメイド専門サイトに登録して彼の作品を販売するなどの活動をしているのが奥様の智絵氏です。

ハニカミヤのおもちゃの多くはバルサ材で手触りがなめらかだ。

俊也氏が作品に没頭できる環境を整え、個展やクラフト展に出展するなど積極的な活動によって彼のモチベーションを上げるのもすべて裏方として奮闘しています。

アーティスト作品とクラフト作品を明確に線引き

売れ筋の商品をきちんと管理することで客層や客の年代、性別などもざっくりとわかるようになりました。季節的に何がどのように売れるのか。これらはクラフト作家としてハニカミヤを立ち上げてからほぼ感覚的に頭に入っているといいます。

季節の催事にちなんだオブジェ類は、およそ2ヶ月前にはお客さんが意識しだすので、それまでにクラフト作品を用意しておく必要があります。一見すると必要でないようにも思える大きな時間の流れをしっかりと把握した後は、作業にかかる時間の割り出し、つまり小さな時間の管理も行います。

季節を意識したオブジェたち。

作品の価格改定に伴い工数を見直したのですが、それは気の遠くなるような作業だったといいます。起き上がりこぼし一体を作るのにどれだけ時間がかかるのかを作業工程ごとに把握。少しでも多くの作品を作れるように、作業をより効率化し、価格が跳ね上がらないように工夫しました。

根っからのアーティストである夫の俊也氏は、価格を付けること自体にも抵抗があったため、価格の見直しにはどちらかと言えば消極的。

それを時間をかけて説得し、アーティストとクラフト作家としての境をきちんと線引きしました。その結果、俊也氏いわく“趣味の延長だったように思えた”仕事が、まったく違ったものになったといいます。

数多く作品を作ることは、商品としての均一性も含め、作業時間を細かに管理することで可能になりました。ハニカミヤ鉄板の商品に加え、新しいものも随時出していくことも必要です。新しいものへの着想は難しそうに思えるのですが、俊也氏は日々の生活や親しい人たちとの何気ない会話からそれが生まれるといいます。

ギャラリー&雑貨店TASSEとのコラボで生まれた商品の一つ、ブックエンド。

完全独立したときの感動

〝はにかみ屋”がスタートしたのが2001年のこと。子育てのため夫婦ユニットのクリエイターを一時離脱した妻の完全復帰を願い、屋号を変更した2011年。そして木工職員を辞め、完全なクリエイターとして歩みだした2018年。

智絵氏は、完全独立した日のお米の味が忘れられなかったといいます。
お米の一粒一粒が、ハニカミヤとして得た収入で手に入れたものだと思うと、本当にいとおしくおいしかったといいます。

飽食なこの時代に、それほどの思いをしたことが食事でも仕事でもあっただろうかとハッとさせられるほど、新鮮で胸を打つ言葉でした。

作風の劇的変化に“こども”の姿

“はにかみ屋”の当時、葉若俊也氏の作品にはその静けさの中に陰や悲しみなどの負の感情を宿したものが多かったといえます。畏怖を覚えるというか、近づきがたい雰囲気をまとったものが多かったのです。

初期のころの作品。作風には近づきがたいものや暗さが漂う。

そうした作風は子供の誕生とともに劇的に変わります。2005年に第一子が生まれると、それまで醸し出されていたかげりや暗さが払しょくされ、純粋に愛らしくかわいらしい作風へと変わるのです。私たちが知る“はにかみ屋”はおそらくこの時形となったと言えます。

作品には作家の人柄が宿るもの。素直に子供の誕生を喜び、子供の成長を楽しむ素直な感情が現れた作品だからこそ、手に取る人の心をとらえて離さないのでしょう。

かわいこちゃんと呼ばれる作品たち。あどけない表情がたまらない。

ハニカミヤの魅力とは? キーワードは”共感と共鳴”

ハニカミヤの木のおもちゃの特性はその機能性の高さにあります。起き上がりこぼしは90℃傾けてもきっちり起き上がります。やじろべえはその支点をどんなところに置かれてもバランスを取りますし、手回しゴマはまだ自分の手の使い方が良くわかっていない幼子でも回せるように設計されています。

驚くなかれ、このおもちゃが持っている風車もお手製。正面からの風でないと回らないように細工が施されている。

ハニカミヤの作品はおもちゃとしての機能に、かわいらしい表情がくっついているといった方が正しいのかもしれません。さらにおもちゃにあしらわれたキャラクターはすべて手描き。言ってしまえば同じものが一つとしてないのです。

ハニカミヤの商品はすべて手描き。どれもこれもひとつひとつ容貌や味わいが違う。

多くの人はその玩具の表情の愛らしさに魅せられ、空間を彩るオブジェとして据え置いてしまいます。そうした人たちのために、季節ごとのオブジェも用意しています。おもちゃとしての機能を持たない分、オブジェはさらに詩的な世界観を醸していることも付け加えておきます。

これからのハニカミヤについて

ハニカミヤの今後についてお話を伺いました。今後の目標は、独立したアトリエ兼ショップを持ちたいとのこと。現在、アトリエと生活空間が切り離せないため、アトリエと正式に呼べる場所がなく、作品も別で保管するという形態をとらざるを得ないといいます。

イベントで子供たちを相手にマグネット作成のワークショップを行うハニカミヤ。どのイベントでもブースは子供に人気。

しかし一番の目標は、この先もずっとハニカミヤとして誠実な作品作りをしたいということ。その誠実な仕事ほど、雄弁に人柄を語るものはないと感じます。

さらなる飛躍が期待されるクリエイター・ハニカミヤの今後の活動に注目していきましょう!

クリエイター情報(2019年12月17日時点)

クリエイター:ハニカミヤ

ホームページ:https://edsunday.jimdo.com/

ウェブショップ: minnne:https://minne.com/@hanikamiya10

Creema:https://www.creema.jp/c/hanikamiya

Twitter:https://twitter.com/hanikamiya10

Instagram:https://www.instagram.com/hanikamiya10/?hl=ja

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今井 美枝子

今井 美枝子

1965年生まれ。化学メーカーのテクニカルライターと車両板金塗装専門誌記者を経て、フリーランスライターへ。チームでインタビュー記事や企画など、コンテンツのプロデュースも行っています。

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