2020.02.25

行きかう人、忙しい街に出現した文化と人の交差点 西日暮里スクランブル

JR西日暮里駅下車、すぐの場所にそれがあります。
道灌山通りとJR東日本高架橋の交差点に建つ放置された空間。それがHAGI STUDIOの手にかかれば、街に新たな風を吹かせるスポットとしてよみがえります。
その名も「西日暮里スクランブル」。赤と白のストライプに彩られた7つのテナントの入るビルです。

今回は2019年12月にオープンした西日暮里スクランブルにフォーカスします!

HAGI STUDIOとは

西日暮里スクランブルに触れる前に、まずはHAGI STUDIOについてお話ししなくては。

HAGI STUDIOは東京都台東区谷中にある最小文化複合施設HAGISOを企画・運営しているデザインスタジオです。谷根千エリア(谷中、根津、千駄木を含む下町エリア)を中心にリノベーションを行う一方、リノベした物件に入る店などを完全プロデュース。HAGISOはその一例です。

HAGISOを立ち上げてから8年、今もHAGISOのコンテンツを含め運営に携わる彼らですが、地域の生活にすっかり根差した一方で、谷根千を巡る観光客たちの人気の立ち寄り先となっています。

紺屋の白袴にもほどがあるとはこのこと、HAGISOを立ち上げてからブレーンとしてずっと走り続けていた彼らはようやく3年ほど前に法人化しました。アルバイトの方も含め、HAGI STUDIOは現在75名の所帯へと成長。このくらいがもしかしたら、目の届く最大規模ではないか、と述べるのはお話を伺った田坂倉一さんです。

舞い込んだ空きビルのリノベーション話

法人化して1年ほどしたころ、JR東日本が掲げる個性的で心豊かな都市生活空間「東京感動線」を形作るプロジェクトのひとつとして、この空きビルの活用がHAGI STUDIOに持ち掛けられます。

ビルのオーナーはJR東日本都市開発なので、そこからHAGI STUDIO がこの空きビルを借受け、リノベーションしたうえで各ブースに分割、転貸するというもの。3年間の定期借地権付きの貸しビルの運営のリノベーションと運営を任せられたのです。

7つのエリアに分けられたブースのうち、4つはHAGI STUDIO が自主運営しています。

リノベをする前に、しっかり分析

HAGI STUDIOが単なる建築事務所と違うのはリノベ前の分析力にあります。
谷根千をホームとするHAGI STUDIO、今回リノベした物件の所在地はHAGISOから徒歩で15分程度の場所なので、彼らの得意とするエリアなのと思いきや、それは思い違いでした。谷根千とは街の雰囲気がまったく違うのです。

谷根千は静かな住宅街で、静かで穏やかな時間が流れ、のんびりとした雰囲気を醸していますが、西日暮里はもっと忙しいのです。そこに働く人、そこに学ぶ学生など、幅広い年代の人たちが忙しく行きかう街並み。

街には顔がある。それは歴史であったり、地域性であったり、そこ関わる人の立ち位置であったりと、一言では語れないさまざまなファクターによって、とりどりに変化します。

街の顔をしっかりと把握したうえで、東京感動線のコンセプトと賃貸ビルの経営(マネタイズ)などを加味してリノベーションに踏み切るのです。

手をかけすぎないで、おしゃれな空間を創造

HAGI STUDIOの仕事は、サイトでも謳っている「9つの日々のヒント」(http://company.hagiso.jp/about/philosophy/)が基軸となっています。

建築事務所としてまず構造物の強さを確認したのち、収益性を考えてどこまでリノベーションするのかも大枠で決めていきます。

その結果、むき出しの配管をおしゃれに見せる空間デザインと内部の建付けが決まっていったのです。

個性豊かな西日暮里スクランブルの住人達

日暮里スクランブルには7つの魅力的なショップが入っています。個性豊かなショップたちの紹介とちょっとしたトリビアをお届けします!

TAYORI MARKET

生産者と消費者を野菜でつなぐ八百屋さん。HAGI STUDIOがマネジメントする〝食の郵便局TAYORI″で扱っている全国の生産者の生産物を販売しており、野菜の感想は食の郵便局TAYORIを活用して届けることも。
おしゃれなマルシェ風の店に、野菜は宅配便で届きます。

ここで扱われている野菜はHAGI CAFEや西日暮里スクランブル内の飲食店でも使われているのです。

SPICESH(スパイセッシュ)

〝サクッとスパイスを摂取するカレー屋さん″がコンセプトのカレースタンド。ここのメニューもHAGI STUDIOがプロデュースしており、旬の野菜をふんだんに使っているのが売り。メニュー開発は担当者が舌と足でじっくりと素材を見極めていて、新しいテイストのカレーを定期的に提案しているらしい。リピーターもこれなら飽きなど来ないですよね!

西日暮里BOOK APARTMENT

なぜ本棚が80個なのか?と質問したところ、作ったら棚がたまたま80個だったから、との回答。その辺はマネタイズなど関係なく、できたとこ勝負だったわけですが、一棚4000円/月で借りられる棚貸しの本屋にはちゃんとオーナーがいて、店番を棚オーナーが協力して担当しています。

個性豊かな棚オーナーのおすすめを読むだけで、その本を読みたくなるような仕掛けがなされています。いつのまにかハードルが高くなってしまった読書という行為。その敷居を低くしてくれるのが、このブックアパートメントなのです。1つの本棚の大きさはそれほど大きくないので、置かれる本も必然的に厳選されたものになるのですよね。

読書離れなど、さまざまなファクターから本屋自体の経営が厳しく難しい時代に突入したといわれる昨今、本屋のオーナーがその本を進める理由をきちんと語ることによって、読者の本を手に取る気持ちに訴求しようとするこの手法は、今徐々に広まりつつあります。

言うなれば本と読者をつなぐ仲人のような役割なのかな……。そこにはすでに人と人との血の通った交流が生まれているのです。

本棚を見ると、その店主が見えてくる時があります。本を通じて棚オーナーと対話している気分にも浸れそうですね。

NIGHT KIOSK

らせん階段を上がると、バースタンドが。ビール瓶ホルダーをひっくり返して椅子になっていたりと何ともリラックスした雰囲気。世界各地から集まったクラフトビールは150種類ほど。おつまみも充実。家庭的でちょい呑みにぴったりのジャストサイズがうれしい。

仕事帰りに軽くいっぱい、という立ち飲み屋には性別、人種を超えていろいろな人たちが集います。地域文化の発見と人々の出会いの場としてのバー、おいしいお酒とおつまみで交流をアシストしてくれそう。

LABO753

クリエイターのイラストか?と見まごう出来栄え。実はこれ、三河島駅近くにある就労継続支援B型事業所であるstudio753が運営するショップなのです。その屋号は七五三通りに面していることに由来しています。

studio753では精神疾患を抱える人たちが働いています。精神疾患、つまり心の病は外からは見えにくく、理解してもらえないことが多い。こうした患者さんたちのリアルな生活や心の病を抱えて生きることの大変さを少しでも知ってもらいたいとの思いから、ここにLABO753の出店を決めたのだと言います。

クリエイティブな雑貨の数々がお店の一角に並びます。ていねいな仕事ぶりに加え、純粋に〝描きたい″〝表現したい″という衝動から生まれた作品は、目を見張るものがあります。

これが不当なまでに安い値段で取引されている現実をご存知でしょうか。LABO753ではそうしたことにも一石を投じています。もちろんここでは一般的なクラフト製品と同様な値段で取引されていますよ。

人とは違うクリエイティブな雑貨、自分だけの逸品を探してみてはいかがでしょうか。

ぐるぐるジェラート

ショップの運営は根津の〝シェアハウスねづくりや″と、根津のラーメン居酒屋〝ゆきかげ″のメンバーが行います。実はその2件とも、大学生オーナーが手掛けているという驚きの背景が。カレースタンドSPICESHの隣にあるので、カレーの後の口直しやデザートにもぴったりですね。

革マルシェ

革製品の修理屋さんです。革製品は使い込めば使い込むほど味わい深く手になじんできます。もっと愛着がわくのは直してなお使いってもらうこと。

皮革製品は生き物の殺生の先にあります。命をいただいたからには、大切にていねいに使ってもらいたいというのがお店のコンセプトです。

取材を終えて

西日暮里スクランブルは、数年空いていたというブランクをまったく感じさせないほど都会的でおしゃれなビルに生まれ変わり、非常に居心地が良い空間が広がっていました。

何度でも足を運びたくなる場所。西日暮里を降りたらすぐのところにあるので、ぜひ足を延ばしてみてください。

店舗情報

●西日暮里スクランブル

住所:東京都荒川区西日暮里5丁目21−1

Tel:テナントによって異なりますので、直接店舗にお問い合わせください。

E-mail:info@scramblebdg.com

定休日:不定休(※臨時休業あり)

HP:http://scramblebdg.com/

 

●HAGI STUDIO INC.

住所:東京都文京区千駄木3丁目34-10 第一浅井ビル2F

Tel/Fax:03-5834-7018

E-mail:info@hagiso.jp

HP:http://company.hagiso.jp/

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今井 美枝子

今井 美枝子

1965年生まれ。化学メーカーのテクニカルライターと車両板金塗装専門誌記者を経て、フリーランスライターへ。チームでインタビュー記事や企画など、コンテンツのプロデュースも行っています。

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