2020.08.12

こどもの頃はどんな世界が見えていた?忘れてしまった「おさなごころ」を思い起こす展覧会。 / 「おさなごころを、きみに」展(東京都現代美術館)

いつもの「当たり前フィルター」を外して日常に目を凝らすと、そこは「発見」の宝庫。あえて少しだけ日常から踏み出すことで、一生知ることが無かったかもしれない「発見」と出会えることも。そんな「発見」が、あなたにとても大事な「化学反応」をもたらすかもしれません。

この記事では、あなたの「当たり前フィルター」が外れるきっかけになるかもしれない展覧会をご紹介していきたいと思います。今回ご紹介するのは、東京都現代美術館で開催中の「おさなごころを、きみに」展

photo by ぷらいまり
《PixCell-Bambi #10》 / 名和晃平

「こどものための展覧会」であるのと同時に「かつてこどもだった私たちー大人が忘れてしまったクリエイティブな『おさなごころ』を思い起こす」展示でもあるそう。こどものこころで作品を見ることで、どんな世界が見えてくるのでしょうか?

「こどもの視線」で作品を見てみる

会場に入ると、床に透明なビーズの集合体と半透明の箱が置かれています。角度を変えてみると、そのビーズの中や箱の中に子鹿が見えてきます。立ったままでも作品は見られますが、屈んで作品と同じ高さまで目線を落とすことで、より見え方の変化の面白さが見えてくるようです。「おさなごころ」を思い起こすには、まずはこんな風に「視線の高さ」という形から入ってみるのも1つの方法なのかもしれないですね。

photo by ぷらいまり
《PixCell-Bambi #10》《PixCell-Bambi #3》 / 名和晃平

こちらの《錯視地図》は、清澄白河の街の地図の上に、5種類の「錯視ブロック」で建物がつくられています。

photo by ぷらいまり
《錯視地図》/ 錯視ブロックプロジェクト

といっても、あまり「錯視」に見えないなぁ…と、また視線を作品と同じ高さまで落としてみると、まっすぐ積んであるはずのブロックが歪んで見えたり、ふつうのビルが不可能図形のように見えてきたり。「こどもの視線」からでないと、見えない世界もあるのかもしれないと気づかせてくれます。

photo by ぷらいまり
《錯視地図》/ 錯視ブロックプロジェクト

こどもの頃の空想が現実に?

続く展示室では、こどもの頃に思い描いていた「空想」が現実になるような作品も。

例えば、こどもの頃ってヒーローものに憧れたりしますよね。グラインダーマンの《HERO HIROINE》は、そんな願いをかなえてくれる作品。スタッフさんの指示に従っていくつかのポーズを撮影していただくと、数分後にはまるで特撮のヒーローのような動画が完成!誰でもかっこいいヒーロー・ヒロインになれちゃいます。でも「ヒーロー・ヒロインになりたい!」って、口には出せないけれど、大人も心の奥底ではちょっと思っているのかも…なんて、心の中をくすぐられるような作品です。

photo by ぷらいまり
《HERO HIROINE》 / GRINDER-MAN

また、おもわず「おさなごころ」を思い出してしまうのが、AR 三兄弟による《スポンジと運動》。小さい人がスポンジの上でトランポリンのように跳ねている映像の横で、それに合わせて現実のスポンジがぴょこぴょこと運動を始めます。こどもの頃、電車の車窓越しに忍者や小人を併走させる空想をして楽しんでいたような感覚を思い出してしまいます。

photo by ぷらいまり
《スポンジと運動》 / AR 三兄弟

このほか、《スクリーニング・プログラム》として、ダンスカンパニー・ELEVENPLAY、Rhizomatiks ResearchらによるダンスとプロジェクションやARを組み合わせた作品の記録映像や、落合陽一×日本フィルプロジェクトのオーケストラ演奏と映像を同期させた試みなど、技術を使って感性を刺激するユニークな映像作品群も。

こどものころには空想の中だけにあった世界が、技術によって現実に染み出してくるようです。

こどもの視点をもって 大人に戻ってみる

後半では、コンピュータのプログラムでランダムに作成された文字列名前が生成される《非語辞典・人名編》(幸村 真佐男)から、自分のあたらしい名前を受け取ります。

これは、ミヒャエル・エンデの「はてしない物語」で、新しい名前を受け取ることになぞらえたもの。展覧会タイトルの「おさなごころを、きみに」も、この物語の登場人物「幼心の君」へのオマージュでしょうか。大人になると余計なものと思いがちな「空想の世界」を思い返したところで、最後の展示室に向かいます。

《時花/トキハナ》は、回転する円盤の一部に鮮烈な画像が蓄光の仕組みで焼き付けられ、その像がゆっくりと消えていきます。ここまでの展示を見てきた後にみると、こどもの頃には鮮烈な体験であったはずの発見や驚きなどが、大人になるにつれて薄れていってしまう様子にも見え、思い出してきた「おさなごころ」から、もう一度大人の視点に引き戻されるようにも感じます。

photo by ぷらいまり
《時花/トキハナ》/ 森脇 裕之

でもそれはネガティブなことではなく、大人にはなってしまったけれど「おさなごころ」の想像力を組み合わせれば、こどもの頃には空想でしかなかったことも現実にできて「大人も楽しいぞ!」と前向きに現実の世界に戻っていける展覧会でもありました。

親子連れでも、大人だけでも楽しめる展覧会「おさなごころを、きみに」は、2020年9月27日までです。

展覧会情報

おさなごころを、きみに

おさなごころを、きみに

会期 2020年7月18日(土)- 9月27日(日)

休館日 月曜日(8月10日、9月21日は開館)、8月11日、9月23日

開館時間 10:00-18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)

観覧料 一般1,300円 / 大学生・専門学校生・65歳以上1,000円 / 中高生800円 / 小学生以下無料

会場 東京都現代美術館 企画展示室 3F

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ぷらいまり

ぷらいまり

都内でサラリーマンしながら現代アートを学び、美術館・芸術祭のボランティアガイドや、レポート執筆などをしています。年間250以上の各地の展覧会を巡り、オススメしたい展覧会・アート情報を発信。 https://note.com/plastic_girl
Twitter:@plastic_candy

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