所沢にプレオープン。石の超建築「角川武蔵野ミュージアム」

ぷらいまり
ぷらいまり
2020.09.01
photo by ぷらいまり
(写真撮影:ぷらいまり)

埼玉県の東所沢駅から歩いて10分ほどの場所に、2020年8月1日、新しい複合文化施設角川武蔵野ミュージアムがプレオープンしました。設計は、国立競技場の設計に携わられたことでも有名な隈研吾さん。また、これにあわせ、隣接する武蔵野樹林パークにチームラボ どんぐりの森の呼応する生命もオープン。早速伺ってみました。

まるで大地から生えているよう?! 《角川武蔵野ミュージアム》

近づくと、荒々しい石に覆われたその建物の外観に圧倒されます。武蔵野の大地が隆起してそのまま出来上がったような建築は、正面がなく、三角形を組み合わせた複雑な多面体の形状です。地上から建物の中腹に向かって空間が広がるような反り返った形状をしているため、近づいて見上げると、さらに迫力が増します。複雑な多面体であるため、見る方角によって建物の印象が変化して見えるのも面白い建築です。

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角川武蔵野ミュージアム 外観(写真撮影:ぷらいまり)

外観の石にクローズアップして見てみると、サイズのそろった長方形のパーツでできています。はっきりとした白い層状の模様が表面に現れ、少しずつ色あいの異なる1枚1枚がパッチワーク状に見え、軽やかな印象を与えます。

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角川武蔵野ミュージアム 外観(写真撮影:ぷらいまり)

こちらの石は、地層のような縞模様がはっきりと見える中国の珍しい花崗岩。「割肌(われはだ)」という、職人が割り出した石の面をそのまま使い、また、通常は隣のブロックとの段差を調整するところをあえてそのまま残し、石の荒々しさを残しているのだそうです。この段差を出すため、通常は2-3cm厚程度の石を使うところ、こちらの建物には5-6cm厚の石を使っており、ブロック1枚の重量は50kg~70kgにもおよぶそう。

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角川武蔵野ミュージアム 外観 割肌で生じた段差がそのまま生かされている(写真撮影:ぷらいまり)

外壁に石を用いる場合はコンクリートに薄い石を貼りつける方法が一般的ですが、このように自然素材を「ヴォリュームの表面のコスメティック(お化粧)」として用いる20世紀的な建築手法から「なんとか石という物質の豊かさを救出したい」と考えられた隈さんのこだわりですね。隈研吾さんが「私の代表作になるだろう」とコメントされたという、石の建築のひとつの到達点です。

現在は、1Fグランドギャラリーにて「隈研吾 / 大地とつながるアート空間の誕生 − 石と木の超建築」展(※完全予約制)も開催され、こちらの建物の解説のほか、これまでに隈研吾さんが手がけてきた「石」と「木」の建築の模型や写真を楽しむこともできます。

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角川武蔵野ミュージアム 建築模型(写真撮影:ぷらいまり)

夜はライトアップされ、こちらも石の表面の凹凸がさらに際立って美しいです。

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角川武蔵野ミュージアム 外観(写真撮影:ぷらいまり)

現在はこちらの展覧会会場の「1F グランドギャラリー」と「マンガ・ラノベ図書館」のみ入ることができますが、11月には書籍5万冊の収蔵を予定した「本棚劇場」や、荒俣 宏さん監修の「荒俣ワンダー秘宝館」、ギャラリーなどの開館も予定されています。

「本棚劇場」完成予想図

なお、角川武蔵野ミュージアムの目玉のひとつでもある「本棚劇場」。2020年9月4日(金)から10月10日(土)までの間は、金・土限定で、グランドオープンにむけて図書の配架作業がすすむ「本棚劇場」の見学ツアーも開催されるそうです。隈研吾さんがデザイン監修した「本棚劇場」の見どころと、 館長の松岡正剛さんがプロデュースする本の街「エディットタウン」について、ミュージアムスタッフの方から解説いただけるとのこと。オープン前にいち早く見られるのと共に、配架作業中の様子が見られるのも貴重な機会ですね。(事前予約制

アルカイック(古代的)とモダン(現代的)を融合した新しい時代の神社 《令和神社》

角川武蔵野ミュージアムの隣にたつのは、武蔵野坐令和神社。こちらの建築デザインも隈研吾さんの携わったもの。

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武蔵野坐令和神社 外観(写真撮影:ぷらいまり)

造(ながれづくり)という、非対称な「へ」の字型の屋根をもつ伝統的な建築様式を用いながらも、通常の神社とは異なる面に入り口を設置したり、鳥居や千木の素材には現代の素材であるメタルを採用したりするなど、古典と現代を融合させた神社となっています。

こちらの神社は文化発信の「聖地」をつくるという思いがコンセプトとしてあるそうです。

ちなみに、内部にはイラストレーター・天野喜孝さんが手がけられた2羽の鳳凰の天井画も描かれ、彫刻家・土屋仁応さんによる狛犬も鎮座しています。まだ外からしか見ることができませんが、2020年9月26日から中にも入れるようになるそうで、近くで見られるのが楽しみですね。

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武蔵野坐令和神社 天井画(写真撮影:ぷらいまり)

自然を自然のままアート空間に。《チームラボ どんぐりの森の呼応する生命》も常設展示

角川武蔵野ミュージアムの隣にある武蔵野樹林パークには、チームラボによるアート空間《チームラボ どんぐりの森の呼応する生命》が常設展示され、こちらも、角川武蔵野ミュージアムのプレオープンにあわせてオープンしました。

非物質的であるデジタルアートによって「自然が自然のままアートになる」というアートプロジェクトを行うチームラボ。昼間は音のインスタレーション、夜間は光と音のインスタレーションを展開します。

日中は、樹林の中に置かれた銀色の卵形のオブジェ・ovoid(卵形体)に木々が映り込み、風景の中に溶け込みます。鉄琴のような涼しげな音が奏でられる中、このovoidを押すと、音が反響します。

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チームラボ どんぐりの森の呼応する生命(昼)(写真撮影:ぷらいまり)

また、夜は光の演出が加わり、ovoidを押すと周辺のovoidも次々に呼応し、同じ音色を響かせ、同じ光を輝かせます。さらに、周囲の木々も伝播してきた光に呼応し、色を変え、色特有の音色を響かせます。

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チームラボ どんぐりの森の呼応する生命(夜)(写真撮影:ぷらいまり)

日が沈み、周囲が暗くなるほどに幻想的な雰囲気を増していくので、夜がオススメです。(屋外なので、夏場は虫除けなども用意するとよさそうです。)

建築だけでも見応えのある角川武蔵野ミュージアム。2020年11月のグランドオープンに先駆けて、まずは建築を楽しんでみるのはいかがでしょうか?

ミュージアム情報

角川武蔵野ミュージアム

角川武蔵野ミュージアム

開館時間 10:00~18:00(最終入場 17:30)
開館日  金・土曜のみ 10:00~21:00(最終入場 20:30)
休館日  火曜日(祝日は開館)
所在地  〒359-0023 埼玉県所沢市東所沢和田3-31-3
アクセス JR武蔵野線「東所沢」駅から徒歩約10分

展覧会情報

角川武蔵野ミュージアム竣工記念展 隈研吾/大地とつながるアート空間の誕生 − 石と木の超建築

角川武蔵野ミュージアム竣工記念展 隈研吾/大地とつながるアート空間の誕生 − 石と木の超建築

公式サイト https://kadcul.com/event/15
会期    2020年08月01日(土) 〜 2020年10月15日(木)
時間    10:00~18:00(金・土は10:00~21:00/入館締め切りは閉館30分前)
休館日   火曜日
入場料金  大人(大学生以上)=1,600円/中高生=1,000円/小学生=700円/未就学児=無料
※完全予約制
チケット購入サイト https://tix.kadcul.com/

チームラボ/どんぐりの森の呼応する生命

チームラボ/どんぐりの森の呼応する生命

公式サイト https://www.teamlab.art/jp/e/acornforest/
会期    2020.8.01(土) – 常設
時間    12:00 – 22:00(昼間: 12:00 – 17:30 / 夜間: 18:30 – 22:00)時間は季節によって異なります。
・8,9月 12:00 – 17:30 / 18:30 – 22:00
・10,11,12,1月 12:00 – 16:00 / 17:00 – 22:00
・2,3月 12:00 – 17:00 / 18:00 – 22:00
・4,5月 12:00 – 17:30 / 18:30 – 22:00
・6,7月 12:00 – 18:00 / 19:00 – 22:00
※最終入場 21:30
休み    毎週火曜日 *祝日は開園
チケット料金 下記参照
https://tix.kadcul.com/

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WRITER PROFILE

ぷらいまり

都内でサラリーマンしながら現代アートを学び、美術館・芸術祭のボランティアガイドや、レポート執筆などをしています。年間250以上の各地の展覧会を巡り、オススメしたい展覧会・アート情報を発信。 https://note.com/plastic_girl

Twitter:@plastic_candy

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