【ナンスカピーポー】サラリーマンから画家へ。架空の画家に絵を描かせる、時の魔術師(第5回 ユアサエボシさん)

川勝小遥
川勝小遥
2019.07.28
魔術師 制作年不明
魔術師(制作年不明)

今月もやって参りました、ナンスカピーポー第5弾は画家のユアサエボシさんです!

最初に彼の作品に出会ったのはInstagram上です。グラフィックデザイナーの大澤悠大さんがユアサさんの作品(サザエさんの波平がフランシス・ベーコン作品のコレクターである設定シリーズ)をInstagramに投稿されていて一目惚れし、ユアサさんにダイレクトメッセージをさせていただいた後、EUKARYOTEユーカリオ)での彼の個展に出向いたことから関係が始まっています。

ユアサさんは1982年生まれなのですが、大正生まれの架空画家であるユアサエボシ(1924~87年)という設定の元で作品を輩出されています。そのためユアサさんの作品を見ていると「もしかしたら、本当に大正時代にユアサエボシはいたかもしれない」という不思議な気持ちにさせられるんです!

私の周りにもユアサさんのファンは多く、”アハ体験”を起こさせるような緻密なストーリー設定、画面構成、不可思議なモチーフに説得力のある描写力など、その抜かりなさにも魅了されているのだと思います。

そんな秘めたるユアサさんのターニングポイントや実現したいことについて伺いました!

「画家として生きていく」と腹をくくったら転機が訪れた

魔術 制作年不明
魔術(制作年不明)

__ユアサさんの今の活動に至ったターニングポイントを教えていただけますか?

私は東洋大学の経済学部国際経済学科卒業後、一般企業で働いていたのですが、半年で企業が倒産したのを機に23歳で美術系の専門学校に進学しました。

__半年で倒産とは!導かれているようですね。。当時、影響されたモノやヒトはいましたか?

シュルレアリスムの影響を受けて、新聞記事を使った5cm角のコラージュ作品をつくっていました。それから哲学者のジョルジュ・バタイユに影響されて、女性の裸体や性的な恍惚とした姿などをグラファイト(鉛筆の粉)を使って表現していました。2010年からカール・グスタフ・ユングやジークムント・フロイトの影響を受けて、人々の夢によく現れる情景を絵に現したり、自身の夢日記を書いていました。夢日記は書くのに時間を使いすぎてしまうので途中でやめましたが(笑)。

丘 制作年不明
丘(制作年不明)

__ユアサさんの過去作品にあった心象風景はそこから来ているのですか!

そうなんです。その後2012年に結婚し、一時は印刷会社に勤めるも絵を描きたいフラストレーションにより1年で退職。30歳になった年に改めて「画家として生きていく」と腹をくくります。家族に「2年で決着をつけるから」と約束し、旧名イシジマヒロユキからユアサエボシに改名しました。それまではありとあらゆる公募展に応募しても、ことごとく落ちていましたが、学生時代に制作したコラージュ作品を元に、タグボードアワード、東京ワンダーウォール、村上隆のGEISAIと立て続けに受賞することができました。

GHQ PORTRAITS 制作年不明
GHQ PORTRAITS(制作年不明)

家族と約束した32歳を過ぎてからは、岡本太郎賞で「GHQ PORTRAITS」を受賞したことがきっかけで、セゾンギャラリーでの展示に繋がります。今年度末に行う帝国ホテルプラザでの展示もそれに続きます。

また、今月まで開催していたGINZA SIXでの展示も様々な方の目に触れ、作品が沢山の方の手に渡りました。ターニングポイントの1つですね。

同業者だけでなく、高田純次、蛭子能収の生き様を意識

通訳官 制作年不明
通訳官(制作年不明)

__いくつもの転機を重ねて来られたのですね。ユアサさんが憧れている方はいらっしゃいますか?

アーティストでしたらマルセルデュシャンやマンレイの人物像に注目しています。

生き様で意識するのは、高田純次さんや蛭子能収さんなんですよね。高田さんは元々宝石商、蛭子さんはダスキンの営業マンで、お二方とも世に出られたのは32歳。私も大学卒業後、金融関係のサラリーマンをしていたこともあり、サラリーマンを経て今のポジションを築いてらしゃるお二方の生き様は印象的です。先程申し上げた32歳のリミットは、正しく彼らを意識しています。

習性 制作年不明
習性(制作年不明)

__装いよりも人物像や生き様に注目されるのがユアサさんらしいと感じました。これから実現したい事はありますか?

1924年生まれである架空の画家、ユアサエボシの作品が、実は2019年の「今」生まれている、という虚偽を塗り替えたいです。歴史って誰かの思惑によって操作されている側面があると思うので。あくまで私はユアサエボシの研究者的ポジションで、俯瞰して作品をみていたいです。

それから、使われていないトンネルで展示をしたいんです。作品の保存を考えると1日限りのパフォーマンスになりそうですが、例えば地方の人里離れたトンネルだったら可能かもしれません。地方の芸術祭の参入も視野に入れています。

__架空の画家、ユアサエボシは歴史上は既に亡くなっていますが、今こうやって私の目の前にユアサさんはいて、きっとあと30年は世界を見せてくれる。その一部始終に立ち会っているのに高揚します。トンネルでの展示、私も拝見したいので心当たりが見つかればお伝えしますね! 最後に読者へのメッセージや告知をお願いします!

僕は23歳から作家を目指しました。やりたいことが見つかったら年齢関係なくチャレンジしてみてください。

__ユアサさん、ありがとうございました!

 

 

次のナンスカピーポーは浦芝眞史(うらしばまさし)さんです。お楽しみに〜!

 

ユアサエボシプロフィール紹介

ユアサエボシ

ユアサ エボシ(ゆあさ・えぼし)
1983年千葉県生まれ。2005年東洋大学経済学部卒業。2008年東洋美術学校絵画科卒業。

主な展覧会
2019年“プラパゴンの馬”(EUKARYOTE 東京)
2018年“シェル美術賞アーティストセレクション”(国立新美術館 東京)
2018年“Multi shutter”(EUKARYOTE 東京)
2017年“岡本太郎現代芸術賞”(川崎市岡本太郎美術館 神奈川)など

受賞歴
2013年 第8回 タグボートアワード 青山悟賞
2013年 GEISAI♯19 ガブリエル・リッター賞
2015年 千葉市芸術文化新人賞
2018年 第10回絹谷幸二賞

リンク集
Instagram
https://www.instagram.com/ebosi_yuasa/

Twitter
https://mobile.twitter.com/ebosi_yuasa

川勝小遥
WRITER PROFILE

川勝小遥

1990年生まれ京都市出身。空間演出作家、兼アートキュレーター。見た目は派手だけど、根はすっごく真面目。ドバイやバナナに興味津々。

Twitter:@1126koharu
Instagram:@koharu_kawakatsu

FOLLOW US

RELATED ARTICL

関連記事

SPECIAL

特集

HOT WORDS

CATEGORY

カテゴリ

何気ない毎日に創造性のエッセンスをもたらす日常の「なにそれ?」を集めました。
ちょっとしたアクションで少しだけ視野を広げてみると、新たな発見って実は身近にあるのかも。