6=2×3。15=3×5。2021=〇×△だ!ちょっとディープな素因数分解の世界

みのきち
みのきち
2021.01.11

普段、私たちが見ているこの世界。
ほんの少しだけ「数学」を知ってみると、意外な奥行きが見えてくるかもしれません。

今回は、ちょっとディープな素因数分解の世界に覗いてみましょう!

「素因数分解」って、何だっけ?

「素数」「素因数分解」という言葉が、数学に馴染みがなくても、「聞いたことある!」「小中学校で習った!」という人が多いのではないでしょうか。

では、この「素数」「素因数分解」を、少し復習してみましょう。

「素数」というのは「1より大きい整数で、1と自分自身以外に正の約数を持たない数」のことです。
※1より大きい整数とは、「2、3、4、5、6…」のことです。

こんな風に書くと難しく見えますが、具体例を見てみるとピンと来るはずです。

例えば、2、3、5、7はどれも素数です。どれも「1と自分自身以外」では割り切ることができません。

一方、6は2と3で割り切れるので素数ではありません。「1と自分自身以外」である「2と3」で割り切ることができます。

また、「素因数分解」は、「正の整数を素数の積で表すこと」です。

「2021」を素因数分解すると…?

「素因数分解」について、具体例を見てみましょう。

例えば、

\[
6=2\times3\\
\]

\[
12=2\times2\times3\\
\]

\[
15=3\times5\\
\]

といった具合に「素数の積」で表現することが素因数分解です。

では、今年の西暦である「2021」を素因数分解してみましょう。一見、なんとなく素数っぽいですね。

しかし、実は素数ではなく…

\[
2021=43\times47\\
\]

と素因数分解することができます。

このように、少し大きな数の場合、6や12や15のようにパッと見で素因数分解することは、なかなか難しいです。しかも2021の場合は、割り切る素数(43と47)が、若干大きいことも厄介です。

実は超難しい「素因数分解」

では次に、もっと大きな数を素因数分解してみましょう。

\[
4294967297
\]

42兆を超える、かなり大きな数です。

これを素因数分解すると…

\[
4294967297=641\times6700417\\
\]

となります。ここまで大きな数だと、さすがに手計算では出来なさそうですね…。

実は、「大きな整数の素因数分解はかなり難しい」というのは、コンピュータにとっても同じことなのです。

もちろん、今のコンピュータは、4294967297くらいの数であれば、一瞬で素因数分解することができます。しかし、もっと桁数を増やしてしまうと事情は変わります。

このことについて、数学者 黒川信重の著作である「リーマン予想の今,そして解決への展望」には、以下のように書かれています。

“Nが200ケタ程度の2つの素数の積であることも知っていたとしても、N=pqとなるpとqを求めるためには[中略]、現在の技術では、数千年程度の時間がかかる”

これだけ、コンピュータが発達している現代であっても、素因数分解に数千年もかかるとは驚きです。

ちなみに、先ほどの例で挙げた4294967297という数は、17世紀の大数学者フェルマーが「素数だ」と思っていた数です。この数が素数でないことが確認され、素因数分解されたのは、なんと約100年後のこと。

それほどまでに、素因数分解は難しいのです。

現代の生活に欠かせない「素因数分解」

「素因数分解が難しくても、私には関係ないし…」と思った方もいるかもしれません。しかし、素因数分解は、現代の私たちの生活に密接に関わっています。

それは、情報セキュリティです。

例えば、オンラインで買い物をする際に、クレジットカードの情報を送信します。その際、第三者から情報を盗まれることなどがないように「暗号化」という技術を使っています。

「RSA暗号」という暗号では、「素因数分解の難しさ」が重要なカギになっています。「大きな整数の素因数分解はかなり難しく、現代の技術では膨大な時間がかかること」が、RSA暗号の安全性を支えているのです。

子どもの頃に学ぶ素因数分解ですが、現代のコンピュータ技術にまで関わっており、私たちの生活に必要不可欠なものとなっています。

「2021」の素因数分解の小技

最後に、おまけとして2021を簡単に素因数分解する小技を紹介します。

それには

\[
45^2-2^2=45\times 45 -2\times 2=2025-4=2021
\]

と、因数分解の公式

\[
x^2-y^2=(x-y)(x+y)
\]

を使います。

\(x=45、y=2\)とすると

\[
45^2-2^2=(45-2)(45+2)=43\times 47
\]

となります。左辺は2021だったので、

\[
2021=43\times 47
\]

となり、サクッと素因数分解できました。

もちろん、いつでもこの方法が有効なわけではないですが、モノによっては工夫すると、難しいはずの素因数分解が、意外とあっさりできてしまうことも。

みなさんも、ぜひ日付や車のナンバーなど、身の周りの数を素因数分解してみてくださいね!

※参考文献:黒川信重「リーマン予想の今,そして解決への展望」
みのきち
WRITER PROFILE

みのきち

東京生まれ東京育ち。大学と大学院で数学を専攻。最近は、数学の命題をプログラミングして具体例を確かめることにハマっている。入浴剤とドリップコーヒーを集めるのが好き。ドイツ語の勉強中。散歩がてらパン屋を見つけると入ってしまう。

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