2021.06.12

17世紀、数学者同士を繋げた学術サークルがすごい!中心人物は神学者メルセンヌ

普段、私たちが見ているこの世界。
ほんの少しだけ「数学」を知ってみると、意外な奥行きが見えてくるかもしれません。

今回は「17世紀の学術サークル」のお話から、数学の歴史を覗いていきます。

仲間が集まり、議論し、互いに刺激を受けて高め合う……そんな場が大切なのは今も昔も変わりません。特に、最近では「コミュニティ」という言葉が一般的になり、仕事やプライベートで「コミュニティづくり」や「コミュニティ運営」に関わっている人が増えてきていますよね。

数百年も前の事例ですが、「17世紀の学術サークル」もコミュニティの一つ。そこには、現代の私たちが学べることがあるかもしれません!

侮れない!サークル活動

あなたはサークル活動をした経験はありますか?

「学生時代に軽音サークルに所属していました」「社会人になってから、フットサルサークルに入りました」など、何かしらのサークル活動経験がある方は多いのではないでしょうか。

サークル活動の目的は、趣味の追及・息抜き・友だちづくりなど、人によって様々ですよね。

中には「サークルのおかげで、精神的に救われました」「サークルで知り合った人と結婚しました」など、サークル活動がきっかけで、人生が変わった人もいると思います。

さらには、サークル活動が、自分の人生だけでなく、社会や歴史に大きな影響を与えることもあります。

例えば、大学のサークルで社会問題に関する勉強会をしてSNSで発信していたら、大きなムーブメントになり行政が動き始めた……なんてことも、このご時世、十分起こり得ます。

そう考えると、サークル活動は侮れない存在ですよね。

今回紹介する「17世紀の学術サークル活動」も、その影響力は絶大。数学史を語る上で、なくてはならない存在となったのです。

偉大な数学者たちが関わっていた!17世紀の学術サークル

舞台は17世紀のヨーロッパ。

現代のようにインターネットなどの通信手段や、飛行機などの便利な交通手段のなかった時代です。さらに、17世紀初頭は、数学の論文を発表する雑誌なども存在していませんでした。

そのため、「数学の成果を発表すること」や「数学の成果を知ること」は簡単なことでありません。例えば、「素晴らしい公式を発見したぞ!」という人がいても、その人がその公式を広く知らせることが非常に難しいのです。それでは、数学の発展が妨げられてしまいますよね。

しかし、フランスの神学者メルセンヌを中心とした学術サークルでは、ヨーロッパの数学者たちが国を越えて交流し、成果を知らせ合っていたのです。このことは、数学の歴史上、非常に重要な意味を持つことになりました。

しかも、メルセンヌのサークルには、歴史に名を残す偉大な数学者たちが関わっていたのです!

例えば、「数論の父」と呼ばれるフェルマーもその一人。

フェルマーは、20世紀末まで未解決問題だった「フェルマーの最終定理」で知られる大数学者です。1636年頃からメルセンヌのサークルと関わるようになり、以後、彼はヨーロッパ中に知れ渡っていくこととなりました。

その他にも、「我思う、ゆえに我あり」で有名なデカルトも、メルセンヌのサークルに関わっていた一人です。

デカルトは哲学者として有名ですが、数学者としても素晴らしい業績を残しています。

このフェルマーとデカルトは、メルセンヌのサークルを通じて、論戦になったことがあります。あまり穏やかな話ではありませんが、一流の数学者たちが議論できる機会があったのも、サークルの存在があってこそのことなのかもしれませんね。

このメルセンヌのサークルは、後のルイ14世の時代になると、フランス科学学士院へと発展していきました。

現代でも研究され続けている「メルセンヌ数」

17世紀に研究者たちの架け橋となったメルセンヌ。彼の名前は「メルセンヌ数」という数学用語で、現在でもよく知られています。

メルセンヌ数は

\[
2^n-1 \quad (n=1,2,3,4,5,\cdots)
\]

で表される数のことです。

具体的に書くと

\(1\)(\(n=1\)のとき、\(2^1-1=1\))
\(3\)(\(n=2\)のとき、\(2^2-1=3\))
\(7\)(\(n=3\)のとき、\(2^3-1=7\))
\(15\)(\(n=4\)のとき、\(2^4-1=15\))
\(31\)(\(n=5\)のとき、\(2^5-1=31\))
\(63\)(\(n=6\)のとき、\(2^6-1=63\))
\(127\)(\(n=7\)のとき、\(2^7-1=127\))

といった数のことです。

特に、メルセンヌ数の中で素数であるものを「メルセンヌ素数」と言います。
※素数とは、1より大きい整数で、1と自分自身以外に約数を持たないもののことです。

先ほど挙げた中では、3, 7, 31, 127がメルセンヌ素数です。

実は、この「メルセンヌ素数」については未だ解明されていないことがあり、現在も様々な研究が行われています。

例えば、「メルセンヌ素数は無限に存在するか?」という問題は、有名な未解決問題です。また「コンピュータで大きなメルセンヌ素数を探す」という研究も行われており、2018年には新たな最大のメルセンヌ素数が発見され、話題となりました。その桁は2486万2048桁!ここにはとても書ききれない大きな数です。

21世紀の現在も研究され続けているメルセンヌ数、十分にすごい存在ですよね。

しかし、数学の本を見てみると、以下のような記述がありました。

ミニム派修道士メルセンヌは『メルセンヌ数』という名前で現在でも知られているが、この人の果たした数学研究者間の取持ちという役割は、歴史的にはメルセンヌ数よりはるかに大きな意義を持っている(後略)

引用元 足立恒雄「フェルマーの大定理 整数論の源流[第2版]」p.39

この記述から、メルセンヌのサークルがいかに重要であったかがわかりますね!

便利な通信手段や交通手段のない時代に、数学者たちを繋げた裏側には、きっと計り知れない努力があったことでしょう。

2021年の現在は、インターネットを通じて世界中の人と知り合うことができる時代。さらに最近ではコロナ禍の影響で、便利なオンラインツールがより一層広まりました。そう思うと、サークル活動やコミュニティづくりにおいて、様々な工夫ができそうです。

メルセンヌへ敬意を表しつつ、21世紀の私たちにできることを考えていきたいですね!

※参考文献

●足立恒雄「フェルマーの大定理 整数論の源流[第2版]」(日本評論社)

●彌永昌吉「ガロアの時代 ガロアの数学 第一部 時代篇」(丸善出版)

●GIMPS「List of Known Mersenne Prime Numbers」(2021/6/10参照)
https://www.mersenne.org/primes/

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みのきち

みのきち

東京生まれ東京育ち。大学と大学院で数学を専攻。最近は、数学の命題をプログラミングして具体例を確かめることにハマっている。入浴剤とドリップコーヒーを集めるのが好き。ドイツ語の勉強中。散歩がてらパン屋を見つけると入ってしまう。

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