コレクターの「想い」も感じる、新しいミュージアム / WHAT

ぷらいまり
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2021.02.11
コレクターの「想い」も感じる、新しいミュージアム / WHAT  photo by ぷらいまり
(写真撮影:ぷらいまり)

いつもの「当たり前フィルター」を外して日常に目を凝らすと、そこは「発見」の宝庫。あえて少しだけ日常から踏み出すことで、新たな「発見」と出会えることも。

この記事では、あなたの「当たり前フィルター」が外れるきっかけになるかもしれないアートスポットをご紹介します。今回ご紹介するのは、2020年12月に天王洲に新しく誕生したミュージアム「WHAT美術品などを扱う倉庫ビジネスを手がける寺田倉庫による新しいミュージアムとは、いったいどんな場所なのでしょうか?

「保管する」から「見せる」へ。新しいコンセプトのミュージアム。

あなたは美術館で「この作品、おうちにあったらいいのにな。」なんて思ったことはありますか?自分で作品を買うのは、美術館で作品を見るよりも少しハードルが高いもの。一方、個人で多くの作品を購入されるコレクターさんたちもいらっしゃいます。

「WHATは、寺田倉庫が保管するアートコレクターさんたちの貴重なアート作品を公開する新しいミュージアム。「WHAT(WAREHOUSE OF ART TERRADA)」という施設名称は、「倉庫を開放し、普段見られないアートを覗き見する」 というユニークなコンセプトからつけられたそうです。なかなか目にすることのできない個人のコレクションの世界を”覗き見”させてもらうなんて、なんだかわくわくしませんか?

WHAT 外観 photo by ぷらいまり
WHAT 外観(写真撮影:ぷらいまり)

若手から大御所まで、見応えあるコレクターの所蔵作品群と、コレクターの想い。

WHATでは2021年5月30日(日)まで、「-Inside the Collector’s Vault, vol.1-解き放たれたコレクション」展を開催し、2人のコレクターさんの作品を公開しています。

1人目は、日本屈指の現代美術コレクターとして知られる精神科医・高橋龍太郎氏。1990年代以降の日本のアートシーンを俯瞰するうえで欠かせないコレクターであり、収集した作品は2000点以上におよぶとも。

今回の展覧会では、岡﨑乾二郎氏をはじめ、会田誠氏、今津景氏、毛利悠子氏、そして若手の川内理香子氏や水戸部七絵氏らと、バリエーション豊かな18作家・約30点の作品が並びます。

スペース3 展示風景 photo by ぷらいまり
スペース3 展示風景(写真撮影:ぷらいまり)

これまでに国内外21の美術館でコレクション展を開催している高橋氏。コロナ禍で心底飢えた「美術館に作品を観に行くこと」の渇望感を今回の展示テーマに込めたといいます。これまでのコレクションの重要な作品を敢えて避け、”これまで展示されてこなかった、若い、ストロークの強度を感じさせる作家の作品と、先行する作家たちの冒険に満ちた試みを中心に展示”したそうです。

《モレモレ:ショーケース #1》 / 毛利 悠子 photo by ぷらいまり
《モレモレ:ショーケース #1》 / 毛利 悠子(写真撮影:ぷらいまり)

美術館の展示とは少し違う、「観る側」の視点で選ばれたのが印象的な作品群です。解説も高橋氏ご本人が手がけられ、”凄まじさといえば水戸部七絵に出会った時も同じです。2016年アトリエを訪ねた時は腰を抜かしました。” など、美術館の客観的な解説とは一味違った、作品と出会った時の驚きや感動などの生の感覚が伝わってきます。

《DEPTH》 / 水戸部 七絵 photo by ぷらいまり
《DEPTH》 / 水戸部 七絵(写真撮影:ぷらいまり)

もう1人のコレクターさんは奈良美智氏の作品を中心にコレクションする、匿名のA氏。会場には約40点の奈良美智氏の作品が並びます。

“Rock and Roll”(アートカー) / 奈良 美智 photo by ぷらいまり
“Rock and Roll”(アートカー) / 奈良 美智(写真撮影:ぷらいまり)

”命を削って描いていると感じるパワーがあり、近くにあることでパワーをもらえる。”と、奈良作品について語るA氏。ご本人による解説には、それぞれの絵画との出会いや、どんなときにその作品を観て何を考えるのか、といった、エピソードが並びます。

《I’m Swaying in the Air》《Brutal Youth》/ 奈良 美智 photo by ぷらいまり
《I’m Swaying in the Air》《Brutal Youth》/ 奈良 美智(写真撮影:ぷらいまり)

例えば、ナイフを持った少女の描かれた《Slash with a Knife》については、”小さな女の子が覚悟を持って戦っていて「お前は本気なのか?」と毎日、何度も、挑発されている気がしていました。” ”この絵がなければ、どこかで、何か、で数多く負けていたと思います。” など。作品とともに過ごす生活について書かれた文章を読んでいると、自分の近くにも1つ気に入った作品を置いてみたい気分になりますね。

《Slash with a Knife》 / 奈良 美智 photo by ぷらいまり
《Slash with a Knife》 / 奈良 美智(写真撮影:ぷらいまり)

なかには購入せずに後悔しているというその場にないは作品の解説も。これもまた、美術館の展示では出会うことの出来ないユニークなスタイルですね。

アートを活用して天王洲を盛り上げる 寺田倉庫。

WHATを運営する寺田倉庫株式会社は、美術品保管を主軸としながら、貴重な画材を販売する「PIGMENT TOKYO」や、日本最大のギャラリーの複合施設「TERRADA ART COMPLEX」などを運営し、天王洲をアートの一大拠点にするための街づくりに取り組んでいます。

今回ご紹介した「WHAT」のスペース内では、WHATの前身であり建築模型の保管と展示を行う「建築倉庫ミュージアム」が「建築倉庫プロジェクト」と名称を改め、建築に纏わる展覧会を開催しています。現在は、建築と詩(ことば)がコラボレーションした「謳う建築」展が開催され「-Inside the Collector’s Vault, vol.1-解き放たれたコレクション」展とあわせて鑑賞することができます。また、ギャラリーとカフェを融合し、食事や飲み物を楽しみながら日本のアート業界の未来を担うアーティストの作品を鑑賞・購入することができる「WHAT CAFEも近隣にオープン。

TENNOZ ART FESTIVAL 2019 で制作された 《どこまでも繋がっていく》/ 淺井 裕介 photo by ぷらいまり
TENNOZ ART FESTIVAL 2019 で制作された 《どこまでも繋がっていく》/ 淺井 裕介(写真撮影:ぷらいまり)

天王洲エリアでは、運河沿いにある建物や施設を活用しておこなっているアートイベント「TENNOZ ART FESTIVAL」の開催など、天王洲の街のいたるところでアート作品を楽しむことができます。

ますます目の離せない天王洲地区。ミュージアムやギャラリー、そして屋外で、気軽にアートと触れ合ってみませんか?

展覧会情報

-Inside the Collector’s Vault, vol.1-解き放たれたコレクション

公式サイト https://what.warehouseofart.org

会期   2020年12月12日(土)—2021年5月30日(日)
会場   WHAT 展示室 1階、2階(〒140-0002 東京都品川区東品川 2-6-10 寺田倉庫G号)
開館時間  火~日 11~19時(最終入場18時)
休館日  月曜休館(祝日の場合、翌火曜休館)
入場料   一般1200円、大学生/専門学校生700円、中高生500円、小学生以下 無料
※同時開催 建築倉庫プロジェクト「謳う建築」の入館料を含む
 建築模型倉庫見学(オプション)500円
※オンラインチケット制
※障害者手帳をお持ちの方とその付添者1名は無料。ご入館の際、障害者手帳等をご掲示ください。
※学生の方は、ご入館の際に学生証をご掲示ください。
※新型コロナウイルス感染症の影響により、開館日・営業時間に変更が生じる可能性がございます。
最新の情報はHPよりご確認ください。

ぷらいまり
WRITER PROFILE

ぷらいまり

都内でサラリーマンしながら現代アートを学び、美術館・芸術祭のボランティアガイドや、レポート執筆などをしています。年間250以上の各地の展覧会を巡り、オススメしたい展覧会・アート情報を発信。 https://note.com/plastic_girl

Twitter:@plastic_candy

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