伝統技術 ✕ 現代の感覚 で生まれる あたらしい「和のあかり」 / 和のあかり×百段階段2021~ニッポンのあかり、未来のひかり~ @ホテル雅叙園東京

ぷらいまり
ぷらいまり
2021.08.14

都内にいることを忘れてしまいそうな非日常空間、 東京都指定有形文化財「百段階段」。今こちらで、個性的な”あかり”をつかったあかりアート展示が行われています。

この記事では、ホテル雅叙園東京の文化財「百段階段」で開催中の企画展、「和のあかり×百段階段2021 ~ニッポンのあかり、未来のひかり~」をご紹介します。

絢爛豪華な有形文化財を舞台に、幻想的なイルミネーション

舞台となるのは、東京都目黒区にあるホテル雅叙園東京内の文化財「百段階段」。1935(昭和10)年に建てられた、同ホテルに現存する唯一の木造建築とのことです。それぞれ趣向の異なる7つの部屋が、99段の長い階段廊下で繋がれています。

7つの部屋を結ぶ 99段の階段 photo by ぷらいまり
7つの部屋を結ぶ 99段の階段(写真撮影:ぷらいまり)

2009年に東京都の有形文化財に指定されたその建物の特徴のひとつは、絢爛豪華なその装飾。各部屋の天井や欄間には、当時屈指の著名な画家達が創り上げた美の世界が描かれています。今回、その美の空間を“あかりアート”が彩ります。

例えば、「漁樵の間」の室内はすべて純金箔、純金泥、純金砂子で仕上げられ、柱や欄間には精巧な彫刻の数々が。七夕にまつわる彫刻も施されたこの部屋では、華やかな七夕飾りと、和傘をつかったあかりの演出。まさに、”非日常”の空間です。

「漁樵の間」展示風景 photo by ぷらいまり
「漁樵の間」展示風景(写真撮影:ぷらいまり)

また、天井と本間 合計15面に荒木十畝による四季の花鳥画が描かれた「十畝の間」を明るく照らすのは、”折り紙”を応用した柔らかい明かり。折り紙作家・布施知子さんと照明デザイナー・阿曾正彦さんによる「ORITERASU」という照明です。黒漆の螺鈿細工が随所に施された部屋で、その黒漆に幾何学的な造形が映り込みます。

「十畝の間」展示風景 photo by ぷらいまり
(写真撮影:ぷらいまり)
「十畝の間」展示風景 photo by ぷらいまり
「十畝の間」展示風景(写真撮影:ぷらいまり)

”伝統技術” と "現代の感覚"の掛け合わせで作られる 新しい工芸のかたち

日本の伝統的な技法を使いながらも、現代の生活・感覚になじむように工夫された工芸品たちも。

例えば、美人画の大家・鏑木清方による四季草花や美人画が天井と欄間に描かれた「清方の間」。こちらの空間を照らすのは、照明作家・谷俊幸さんによる照明。「駿河竹千筋細工」という江戸時代から続く竹細工の技法を活かした繊細な照明は、伝統技法を使いながらもモダンなデザインで、陰までもが美しく空間を彩ります。

≪HOKORE06≫ / 谷俊幸 photo by ぷらいまり
≪HOKORE06≫ / 谷俊幸(写真撮影:ぷらいまり)

また、照明以外の工芸品も。「草丘の間」で聞こえてくる涼しげな音の正体は、南部鉄の風鈴や、ガラスの江戸風鈴、鋳物の小田原風鈴など、素材によって個性的な音を響かせる風鈴たち。その中でも個性的なのは、富山県高岡市の鋳物メーカー「能作」による真鍮製の風鈴。すっきりとスタイリッシュなその外観は「風鈴」のイメージも一新しますね。

「草丘の間」展示風景 photo by ぷらいまり
「草丘の間」展示風景(写真撮影:ぷらいまり)
「能作」の風鈴 photo by ぷらいまり
「能作」の風鈴(写真撮影:ぷらいまり)

染め物用の金型が灯りに?理化学用ガラスがお皿に?発想の転換で生まれる新しい工芸品

工芸品を現代風にアレンジするだけでなく、本来は違った用途のものを別の用途に転用してしまう試みも。

会場の入り口に置かれたこちらの灯籠。微細な隙間から灯りが漏れ、まるでレース編みのような美しい影を作り出しています。このランプシェード部分、浴衣を染めるための型を利用したものなのだそう!埼玉県越谷市にある「中野型染工場」の制作する「籠染灯籠」は、浴衣生地の生産過程で実際に染色に使用したもので、基本的に1点ものなのだそうです。

「籠染灯籠」 photo by ぷらいまり
「籠染灯籠」(写真撮影:ぷらいまり)

また、こちらのガラスの器は、温度計や計量機器などの理化学ガラスを製造する工場として誕生した「上越クリスタル硝子」から、職人の技とデザイナーの感性が融合する場として生まれた「月夜野工房」によるもの。それぞれの時代に求められる硝子製品のかたちを探し、現代風のテーブルウェアへとかたちを変えています。

「月夜野工房」によるテーブルウェア photo by ぷらいまり
「月夜野工房」によるテーブルウェア(写真撮影:ぷらいまり)

伝統ある技術・技法を活用しながら、現代の感覚にアップデートしていく製品の数々。展示作品の一部は、ミュージアムショップでの購入も可能なので、お気に入りの作品をおうちでも楽しむこともできますよ。

歴史的な建築を舞台に、 "伝統技術" と "現代の感覚" を融合した空間アート、楽しんでみませんか?

展示空間は全て写真撮影も可能です。 photo by ぷらいまり
展示空間は全て写真撮影も可能です。(写真撮影:ぷらいまり)

「和のあかり×百段階段2021~ニッポンのあかり、未来のひかり~」は、2021年9月26日(日)までの開催です。

商品情報

和のあかり×百段階段2021~ニッポンのあかり、未来のひかり~

公式サイト https://www.hotelgajoen-tokyo.com/100event/wanoakari2021

開催期間  2021年7月3日(土)- 9月26日(日) 会期中無休
開催時間  11:30-18:00(最終入館17:30)
※土曜日及び、7月22日・23日・8月8日-13日・9月19日は20:00まで(最終入館19:30)
※8月21日は17:00まで(最終入館16:30)
会場    ホテル雅叙園東京 東京都指定有形文化財「百段階段」
料金    当日券1,200円 / ペアチケット2,300円 / 学生600円(要学生証呈示) / 未就学児無料

ぷらいまり
WRITER PROFILE

ぷらいまり

都内でサラリーマンしながら現代アートを学び、美術館・芸術祭のボランティアガイドや、レポート執筆などをしています。年間250以上の各地の展覧会を巡り、オススメしたい展覧会・アート情報を発信。 https://note.com/plastic_girl

Twitter:@plastic_candy

FOLLOW US

RELATED ARTICL

関連記事

SPECIAL

特集

HOT WORDS

CATEGORY

カテゴリ

何気ない毎日に創造性のエッセンスをもたらす日常の「なにそれ?」を集めました。
ちょっとしたアクションで少しだけ視野を広げてみると、新たな発見って実は身近にあるのかも。