法律、マナーから、無意識の習慣まで。その”ルール”、あなたならどう動く? / 「ルール?展」(21_21 DESIGN SIGHT)

ぷらいまり
ぷらいまり
2021.08.24

私たちの暮らしのなかにある様々な「ルール」。面倒だなぁと感じるものから、当たり前になってしまって気にかけていないものまでありますが、特に昨年以降、「ルール」を意識する機会も増えたのではないでしょうか? 今、そんな「ルール」に注目した展覧会が開催されています。

この記事では、東京都の六本木にある「21_21 DESIGN SIGHT」で開催中の「ルール?展」をご紹介します。

ルール?展 入り口 photo by ぷらいまり
ルール?展 入り口(写真撮影:ぷらいまり)

こんなに?!身の回りにあるたくさんのルールたち

会場の入り口には、作品解説とともにたくさんのスタンプが並びます。「好きなスタンプを2つ選んで表紙に押してください」とあるので、たくさんのスタンプから選んで押してみると、「歩き出すときは 右足からふみださなければならない」など交通標識風に描かれた少し不思議なルールがあらわれます。

≪鑑賞のルール≫ / 佐々木 隼 photo by ぷらいまり
≪鑑賞のルール≫ / 佐々木 隼(写真撮影:ぷらいまり)

こちらは、≪鑑賞のルール≫ (佐々木 隼) という作品。これらは独特なルールですが、そういえば美術館の中でも「大声で話してはいけない」「作品に触ってはいけない」など、たくさんのルールがありますね。

普段の生活ではどうでしょうか?この展覧会のポスターは日常の何気ない風景が映っているように見えますが、会場の解説を読むと、この何気ない風景の中にもたくさんのルールが隠れていることに気づきます。

#これもルールかもしれない photo by ぷらいまり
#これもルールかもしれない(写真撮影:ぷらいまり)

ルールって、”守って当たり前” のもの?

身の周りはルールに囲まれているけれど、ルールは「守って当たり前」のものなのでしょうか?この展覧会では、そんな前提を揺さぶるような作品も並びます。

会場の外にあるちょっと変わった交通標識。「葛宇路」と、どこかの道の名前を示しているようですが… 実はこれ、中国の葛宇路(グゥ・ユルー)というアーティストが、中国で道や通りを表す「路」という文字が自分の名前に入っている事を利用して、”自分の名前”の標識を無名の道路に設置したもの。

≪葛宇路≫ / 葛宇路 photo by ぷらいまり
≪葛宇路≫ / 葛宇路(写真撮影:ぷらいまり)

ところが、その名前はそのまま道の名前として定着してしまい、中国の地図サービスなどにもその名前が記載されるようになったのだそう。勝手に設置したこれらの看板は、最終的に撤去されてしまいますが、一度根付いた名前はなかなか消えないかも知れませんね。決められた「ルール」と「慣習」の境界のようなものを考えさせられます。

≪葛宇路≫ / 葛宇路 photo by ぷらいまり
≪葛宇路≫ / 葛宇路(写真撮影:ぷらいまり)

≪自分の所有物を街で購入する≫ (丹羽良徳) は、作家が一度購入した商品を別の店の売り場に持ち込んで再び購入し直す映像作品。普通の買い物とは違った買い方の様子をみていると、「きちんとお金は払って、お店に被害は出ていないから問題ない?」「でも、お店には迷惑がかかるかもしれないからルール違反?」と、どこまでが「問題無い」のラインなのか、”当たり前”の売買のルールが揺らいでしまうように感じられます。

≪自分の所有物を街で購入する≫ / 丹羽良徳  photo by ぷらいまり
≪自分の所有物を街で購入する≫ / 丹羽良徳 (写真撮影:ぷらいまり)

社会のルールを意識するような展示も多い中、少し毛色が異なり、そのユニークな動きに目が釘付けになってしまうのは ≪四角が行く≫ (石川将也+nomena+中路景暁) という作品。ベルトコンベアに乗った3つの直方体に、さまざまな形の穴の空いた壁が次々と迫ってくるのに対し、直方体たちは臨機応変に隊列を変えながらすり抜けていきます。

次はどうやってすり抜けるのかな?と想像しながら見ていると、ルールの従い方はひとつではなく、柔軟にも対応できる事を感じられます。

≪四角が行く≫ / 石川将也+nomena+中路景暁 photo by ぷらいまり
≪四角が行く≫ / 石川将也+nomena+中路景暁(写真撮影:ぷらいまり)

「ナンスカ」で以前にインタビューさせていただいた映像作家・ 石川将也さんのアニメーション作品をもとにつくられたこちらの作品。ぱたぱたと姿勢を変えながら壁をすり抜けていく直方体たちの動きも気持ちが良く、いつまでも見入ってしまいます。

≪四角が行く≫ / 石川将也+nomena+中路景暁 photo by ぷらいまり
≪四角が行く≫ / 石川将也+nomena+中路景暁(写真撮影:ぷらいまり)

そのルール、本当に必要? 考えながら動いて観る展覧会

こうして展示を見ていくと、法律などで決められているルールから、明文化されていないけれど習慣的に”あたりまえ”になっていること、無意識にやってしまうことまで、ほんとうに様々な「ルール」があることを実感します。

会場の入り口で押した ≪鑑賞のルール≫ のスタンプのほかにも、会場内には展示に並ぶ際の独特なルールが示されたり、ルールに従えば触って動かして良い箱が置かれていたりと、自分ならどうルールに従うのか考えるポイントが用意されています。

ルールに則って会場内で使うことができる木箱 photo by ぷらいまり
ルールに則って会場内で使うことができる木箱(写真撮影:ぷらいまり)

リーズナブルなルールから、なんだか不思議なルールまで。あなたならそのルール、従いますか?

「ルールなら必ず守る」? それとも「理由が分かれば守る」? ひょっとしたら「誰かが見ていたら守る」?逆に「まわりのみんなが守っていないなら守らない」?ただ、展示を見るだけではなく、どう動いたら良いか問いかけられているようです。

「ルール?」展 展示風景 photo by ぷらいまり
「ルール?」展 展示風景(写真撮影:ぷらいまり)

この展覧会を見た後には、法律や、マナーのような規則、無意識に習慣的にやってしまうことまで、身の周りの「ルール」が浮かび上がって見えてくるかもしれません。twitterでは「#これもルールかもしれない」というハッシュタグで、様々な「ルールかも知れないもの」が投稿されているので、今まで気づかなかったルールに気づいたら投稿してみたいですね。

「ルール?」展は、11月28日(日)までです。

展示会情報

ルール?展

公式サイト http://www.2121designsight.jp/program/rule/
会期    2021年7月2日(金)- 11月28日(日)
会場    21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー1&2
休館日   火曜日(11月23日は開館)
開館時間  平日 11:00 – 17:00、土日祝 11:00 – 18:00(入場は閉館の30分前まで)
*一部の展示は、定員入替制の体験型作品です。平日16:00、土日祝17:00以降は、場合により体験できないことがございますのでご注意ください。
入館料   一般1,200円、大学生800円、高校生500円、中学生以下無料

※「ルール?展」展では、会場内および入場時の混雑を避けるため、 2021年8月14日より事前予約制によるご来館受付を行います。
なお、一部作品では同時に体験できる人数が限られておりますが、このご予約はすべての作品の体験をお約束するものではございませんので、あらかじめご了承ください。

* 招待券、招待状、年間パス、障害者手帳をお持ちの方と付き添いの方1名、メンバーシップの方は無料でご入場いただけますが、入館時間枠のご予約が必要です。
* メンバーシップのご入会・更新手続きは休止しております。
* 当日、入館時間枠に空きがある場合は、事前予約なしでご入館いただけます。

ぷらいまり
WRITER PROFILE

ぷらいまり

都内でサラリーマンしながら現代アートを学び、美術館・芸術祭のボランティアガイドや、レポート執筆などをしています。年間250以上の各地の展覧会を巡り、オススメしたい展覧会・アート情報を発信。 https://note.com/plastic_girl

Twitter:@plastic_candy

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