見て、体験して、しくみやしかけを知って体感する「つくる」の魅力 —— つくる展ーTASKO(タスコ)ファクトリーのひらめきをかたちにー (高崎市美術館)

ぷらいまり
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2022.08.14

群馬県高崎市にある高崎市美術館で、「つくる」ことに注目したユニークな展覧会が開催されています。この展覧会を手がけるのは、日本のものづくりをさらに元気にしているアートファクトリー「TASKO(タスコ)」。

TASKOの独創的な作品を楽しみながら、そのアイディアはどうやって考えつくの?面白い動きはどんな仕組みでつくられているの?と、「つくる」ことの魅力に多様な視点でせまる展覧会 「つくる展ーTASKO(タスコ)ファクトリーのひらめきをかたちにー」 をご紹介します。

とにかくいろんなものが動いている!

「TASKO」は、2012年に結成されたものづくりのプロ集団。美術・舞台制作、プロデュース、設計制作、デザイン&ウェブと、様々な専門のスタッフが集まり、独創的なアイディアと「つくる」力で、新しいものづくりに挑戦し続けているアートファクトリーです。

「つくる」展 エントランス(写真撮影:ぷらいまり)
「つくる」展 エントランス(写真撮影:ぷらいまり)

そんなTASKOのつくる展覧会、とにかくあらゆる作品が動いているんです!

≪FLOWER DISPLAY (フラワーディスプレイ)≫ / TASKO (写真撮影:ぷらいまり)
≪FLOWER DISPLAY (フラワーディスプレイ)≫ / TASKO (写真撮影:ぷらいまり)

例えば、入り口付近で私たちを迎えてくれる ≪FLOWER DISPLAY (フラワーディスプレイ)≫ は、壁面を覆う花が開いたり閉じたりしながら文字を描き出します。美しいだけでなく、ふわりと花が咲く瞬間を目にするような、滑らかな動きが気持ちよい作品です。

≪ROTATE(ローテート)≫ / TASKO(写真撮影:ぷらいまり)
≪ROTATE(ローテート)≫ / TASKO(写真撮影:ぷらいまり)

2Fには、動きの要素に注目した作品の展示室も。≪ROTATE(ローテート)≫ は、きっと誰もが一度は目にしたことのあるプラスチックでできた虹色のバネのオモチャがくるくると回転する作品。「回転」とひとことで言っても、回ったり止まったりを繰り返したり、滑らかに回ったり、カクカク回ったり…と、一方向に回転する動作に「制御」を加えることで、様々な表情が生まれてきます。

「動き」 ✕「音」「光」「香り」…五感を使ってたのしめる作品たち

「動き」だけでも楽しいですが、そこに別の要素が掛け合わせることで、さらなる驚きが生まれます。

≪札幌ループライン≫ / TASKO、岸野雄一、クワクボリョウタ、海藻姉妹(写真撮影:ぷらいまり)
≪札幌ループライン≫ / TASKO、岸野雄一、クワクボリョウタ、海藻姉妹(写真撮影:ぷらいまり)

例えば、≪札幌ループライン≫は、ジオラマの中を、LEDをつけた小さな電車が走りながら、ジオラマを影絵として映し出していく作品。札幌市を走る環状の路面電車をモチーフとした作品です。ジオラマの中に置かれたペン立てなどの見慣れた日用品も、「光」と「動き」を組み合わせることで美しい「風景」へ鮮やかに変化していきます。

私たちは毎日ディスプレイでフルカラーの鮮明な映像を目にしていますが、影絵というアナログな装置で映し出される映像の無限大の解像度とフレームレートは意外にも新鮮に感じられるかもしれません。

≪ル・ディスコシャンデリア≫ /  YURI SUZUKI、KIMURA(写真撮影:ぷらいまり)
≪ル・ディスコシャンデリア≫ / YURI SUZUKI、KIMURA(写真撮影:ぷらいまり)

≪ル・ディスコシャンデリア≫は、床に敷かれたマットを踏むと、音が鳴ったり、電球の光や音楽が変化したりする作品。マットを踏むだけで音楽が出来上がっていくような楽しさがあり、体験しているうちに、自然と身体でリズムをとってしまいます。複数人で体験しても楽しいですね。

≪パフューマリー・オルガン≫ / TASKO、山本製作所、株式会社インビジ、香りのデザイン研究所(写真撮影:ぷらいまり)
≪パフューマリー・オルガン≫ / TASKO、山本製作所、株式会社インビジ、香りのデザイン研究所(写真撮影:ぷらいまり)

また、この展覧会を見ていると、時折、美術館のなかにパイプオルガンのような素敵な音色が響いて聞こえてきます。その正体は、≪パフューマリー・オルガン≫。音楽の「音階」に "香り" を割り当てた「香階」を組み合わせた作品です。オルガンを弾くと、香料の入った瓶が動いて空気が吹き込まれ、笛のような音が出るのと同時に香りが展示室に広がります。30分に一度、自動演奏も行われ、展示室が心地の良い音と香りに包まれ、様々な感覚を使って楽しむことができる作品です。

ユニークな発想と作品は、身近なものから生まれる?!

ところで、こんなユニークな作品たちはどのようにつくられるのでしょう?

≪「つくる展」インスタレーション≫ / TASKO(写真撮影:ぷらいまり)
≪「つくる展」インスタレーション≫ / TASKO(写真撮影:ぷらいまり)

実は、今回の展覧会の「立体ロゴ」には、その過程が表現されています。「平面(設計)」→「 立体(造形)」→「うごき(機械)」→「制御(デジタル)」という、TASKOのものづくりの基本となる4つの要素で「つくる展」の文字が表されているんですね。

会場では、こうした「ものづくり」の部分についても紹介。アイディアをまとめたスケッチや、作品を構成するパーツ、科学的な原理やしくみまで、わかりやすく解説されています。

≪ひかりの3原色≫ /TASKO  光と色の仕組みなどもわかりやすく解説されています。(写真撮影:ぷらいまり)
≪ひかりの3原色≫ /TASKO  光と色の仕組みなどもわかりやすく解説されています。(写真撮影:ぷらいまり)

作品を構成しているパーツは、ほとんどは誰もがインターネットやホームセンターで簡単に手に入れられるものなのだそう。原理や素材のひとつひとつは身近なものでも、「発想」と「組み合わせ」、それからそれを実際に「つくる」力で、他にはない作品になっていくんですね。

≪TASKOの棚から≫(写真撮影:ぷらいまり)
≪TASKOの棚から≫(写真撮影:ぷらいまり)

インスタレーション ≪TASKOの棚から≫ には、TASKOのファクトリーに置かれている小物達も。古いテレビなどの機器や試作品、工具から自然の素材まで。一見バラバラなものたちですが、こうした「作品になる前」の面白いものたちが新しい作品の「発想」のもとになるのかもしれませんね。

展覧会を見た後には自分たちでも「つくる」ことがしたくなるかもしれない展覧会、「つくる展ーTASKO(タスコ)ファクトリーのひらめきをかたちにー」は、高崎市美術館で、2022年9月4日まで開催中です。

展覧会情報

つくる展ーTASKO(タスコ)ファクトリーのひらめきをかたちにー

公式サイト https://www.city.takasaki.gunma.jp/docs/2022060400024/
会期  2022年7月9日(土)~9月4日(日)
時間  10:00~18:00(最終入館は17:30)*金曜のみ20:00まで
休館日 毎週月曜日(祝日の場合は開館し翌日休館)、祝日の翌日
会場  高崎市美術館
住所  〒370-0849 群馬県高崎市八島町110-27 (Map)
TEL   027-324-6125
観覧料  一般…600円(500円)/大高生…300円(250円)※学生証をご提示下さい。中学生以下…無料
※(   )内は20名以上の団体割引料金およびインターネット割引料金です。
※「身体障害者手帳」、「療育手帳」、「精神障害者保健福祉手帳」をお持ちの方および付き添いの方1名、中学生以下、65歳以上の方(マイナンバーカード、運転免許証、保険証をご提示ください)は無料でご覧いただけます。

ぷらいまり
WRITER PROFILE

ぷらいまり

都内でサラリーマンしながら現代アートを学び、美術館・芸術祭のボランティアガイドや、レポート執筆などをしています。年間250以上の各地の展覧会を巡り、オススメしたい展覧会・アート情報を発信。 https://note.com/plastic_girl

Twitter:@plastic_candy

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