一新される、台湾の観光列車

Seikyo
Seikyo
2020.01.22
台南駅の切符売り場

みなさん、はじめまして。半分台湾人のSeikyoと申します。
これから台湾ならではの文化を、デザインの視点を交えながら発信していきたいと思います!

さっそく第一弾は「台湾の鉄道」について。

実は日本ともゆかりのある台湾鉄道。
台湾に一度足を運ばれた方は、「乗ったことがある!」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

台湾の鉄道事情

台湾は南北に細長い島であることから、南北間の長距離での移動は主に「台湾高速鉄道(台湾新幹線)」を利用することが多いです。したがって、公共交通機関を使って比較的短距離での移動となると、「台湾鉄道」を利用する人のほうが多いようです。新幹線に比べるとスピードは断然落ちますが、運賃が比較的安く、また沿線の風景や駅舎など、どこか懐かしさを感じられるというのが魅力なのかもしれません。

日本風の屋根が残存する駅舎。日本っぽい名前がつけられている駅も多い。

「台鉄」の歴史

台湾で一番早く鉄道が建設されたのは、1887年。当時は中国清朝の時代で、その後の日清戦争を経て、日本統治時代に飛躍的に建設が進んだ台湾の鉄道は、レールの軌間が日本と同じく1067mm(狭軌)を採用しているなど、多くの点で日本の鉄道と近いものがあり、今なおその当時に建てられた駅舎などが島全体に残っていたりと、昭和の雰囲気を目の当たりにすることができます。
また、近年では、日本で製造された車両を導入するなど、日本から技術支援を受けたり、民間の交流イベントが開催されるなど、日頃から双方の関わりがとても深いと言えます。

夜の台南駅。昔ながらの古い駅舎が今も使われています。

直面する課題とは

そんな台湾鉄道ですが、戦後の経営体系や政策の問題もあって、長年にわたって列車の車体や設備が古かったり、遅延が多かったりと、国民から次第にマイナスのイメージをもたれるようになりました。また、一時期は新しく導入された台湾を一周できる観光列車の車内インテリアデザインのセンスが問題視され、「台鉄美学」というマイナスのワードがネット上で話題になるほどでした。
そんな中、2019年に台湾鉄道が主導して、デザインの力でブランドイメージを一新させる取り組みが行われたのです。

デザインで新しい風を吹き込む

列車内で上品な時間をくつろぐことで有名な観光列車。日本やヨーロッパ各地でも、ゆったりとした空間の車窓から現地の美しい眺めを見ることで有名ですが、今回台鉄はすでに運行している観光列車の車体の一新に乗り出しました。現地のインテリアデザイン事務所、JC Architecture(柏成設計)さんが手掛けたデザインがこちらです。

画像提供:© J.C. Architecture
画像提供:© J.C. Architecture

「秋の風」というテーマのもと、南国の海と小石のカラーをしたシートや、四季をテーマにしたカーテンなど、台湾の自然を存分に取り入れたコンセプトになっています。落ち着いた雰囲気の中で、鮮やかなブルーがポイントカラーになっているところがとても印象的ですね。車体の外装は台湾で有名な現役の急行列車「莒光号(きょこうごう)」のオレンジと、落ち着いた印象のブラックを見事に組み合わせて、コントラストが上品な仕上がりになっています。
正直なところ、台湾でこれほど洗練されたデザインの車体を見るのは初めてと思えるくらい、レベルアップしたなと実感できました。

画像提供:© J.C. Architecture

今後も変わり続ける台湾鉄道

現在主要駅のリニューアル工事や、新しい列車の購入を進めている台湾鉄道ですが、近年官民あげてイメージの一新にものすごく力を入れているなと、実感できたニュースでした。
新しい時代を迎えた台湾の鉄道。今後の動きにも是非注目したいと思います。

では次回もお楽しみに!

Seikyo
WRITER PROFILE

Seikyo

1996年台湾生まれ。半分台湾人。東京でグラフィック&Webデザイナーとして働きながら、台湾と日本の文化のギャップをデザイン的な視点で発信中。

FOLLOW US

RELATED ARTICL

関連記事

SPECIAL

特集

HOT WORDS

CATEGORY

カテゴリ

何気ない毎日に創造性のエッセンスをもたらす日常の「なにそれ?」を集めました。
ちょっとしたアクションで少しだけ視野を広げてみると、新たな発見って実は身近にあるのかも。