手書きの看板が目を引く、台南のレトロ映画館「全美戯院」

Seikyo
Seikyo
2020.07.15

みなさん、こんにちは。半分台湾人のSeikyoです。
今回皆さんにご紹介するのは、台湾の古都台南に残るレトロ映画館、「全美戯院」(チュエンメイシーユエン)です。

道ゆく人の目を惹きつける手書きの看板たちを、早速探っていきましょう!

「全美戯院」ができるまで

この「全美戯院」の建物は、もともと日本統治時代に葉氏によって豪邸と店舗を兼ねた建物として建てられました。しかし第二次世界大戦中にアメリカ軍の空爆を受け、戦後は欧氏兄弟によってバロック風の外観の映画館「第一全成戯院」に、再び建て替えられることになったのです。

全美戲院誠徵周一至五晚班售票員.機動售票志工.工讀生亦可.可免費看電影.請電 0926792098 吳經理.謝謝~!

今日全美戲院さんの投稿 2019年8月15日木曜日

創建当初の映画館が写った古い写真

戦後、台南のこの一帯はのべ10数軒の映画館が営業をしていて、全盛期には「電影里(映画の里)」と呼ばれるほど、市民に映画が親しまれてきました。

ちなみに映画館は中国語で一般的に「電影院」と呼びますが、このように一昔前の歴史がある映画館に関しては「戯院」と名付けています。

戦後の全美戯院の発展

その後1969年に、欧氏兄弟から今の経営者である呉家の手に渡り、初めて「全美戯院」と名付けられ、当初は封切り館として営業していました。しかし、その頃はシネマ間の競争が激しかったことから、急遽1971年に洋画のセカンドランを主に上映する映画館として一転し、半額で映画を2つ見られるという実に魅力的なキャンペーンを打ち出し、若者から親子世代まで大いに反響を呼んだそうです。

「全美戯院」の魅力の一つといえばその価格設定で、なんと今でも一般の映画館の相場の半分で、映画が2つ続けて楽しめるのです。現在売られているチケットが、大人ひとりで台湾ドル140元(日本円で550円相当)なので、びっくりするくらい安く映画を楽しむことができます。

レトロな手書きの看板が名物

「全美戯院」のもうひとつの魅力といえば、建物の外壁に立てかけてある大型の看板でしょう。

映画の大型看板の裏側にこっそり見えるバロック式の建物

この看板ですが、実は上映されている映画の一つ一つを手書きで描き直しているのです。
道路の向かい側にある小さな駐車場には、簡易的な屋外展示スペースもあり、道ゆく人たちをレトロ感が漂う「街のアート作品」が迎え入れてくれます。

有名俳優たちの似顔絵。夜になるとライトアップされる
昔ながらのチケット売り場

チケットを購入する窓口も昔ながらの面影を留めており、当日上映の映画とタイムテーブルがガラス張りの仕切りに表示されています。
入り口を入ってすぐのところには小さな売店もあり、ここでポップコーンやドリンクを購入できます。

入り口から入ってすぐのところにある売店

地元民に愛され続ける、レトロシネマ

各地の映画館の設備がますますアップデートされていく今、このように昔ながらの映画館が今なお地域の人々に支え続けられている事例は、台湾でもほとんど見かけなくなってきています。

私も学生時代に家族や友人と何度か行った記憶があり、行くたびにどこか懐かしい気持ちに包まれます。最初の公開で見逃してしまった映画でやはり映画館で見たいという時も、「全美戯院」がいつも待っていてくれました。今なお残る映画の宣伝カーも、現役で台南の市街地を走り続けています。

全美戯院の映画宣伝カー

公開作品や映画館の設備などは部分的に新しいものを柔軟に取り入れつつも、昔ながらの落ち着いた雰囲気と人々の記憶を残しているところが、「全美戯院」が今なお多くの人に愛され続けられている理由なのかもしれません。

では、次回もお楽しみに!

施設情報

全美戯院(CHUANG MEI Theater)
住所    台湾台南市中西区永福路二段187号
公式サイト https://www.cm-movie.com.tw/
Facebook https://www.facebook.com/cmmovies/?epa=SEARCH_BOX

Seikyo
WRITER PROFILE

Seikyo

1996年台湾生まれ。半分台湾人。東京でグラフィック&Webデザイナーとして働きながら、台湾と日本の文化のギャップをデザイン的な視点で発信中。

FOLLOW US

RELATED ARTICL

関連記事

SPECIAL

特集

HOT WORDS

CATEGORY

カテゴリ

何気ない毎日に創造性のエッセンスをもたらす日常の「なにそれ?」を集めました。
ちょっとしたアクションで少しだけ視野を広げてみると、新たな発見って実は身近にあるのかも。