道端の雑草を手すき紙の原料に?!台湾の外来植物図鑑「紙植」とは

Seikyo
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2020.08.04
Taiwan Plants
図鑑の装丁一覧(画像提供:©︎紙植)

みなさん、こんにちは。半分台湾人のSeikyoです。

今回ご紹介するのは、台湾の外来植物をテーマにデザインされた図鑑、「紙植」です。
植物をそのまま原料にして作られた手すき紙が魅力のプロジェクトを、さっそく見ていきましょう!

外来の植物に脅かされる、台湾の生態系

台湾は古くから様々な民族がこの地を訪れていて、特に人の往来が自由になった現代社会では、人間とともに持ち込まれた様々な外来生物が、今生態系を脅かしつつあります。

Taiwan Plants
台湾で観賞用として持ち込まれた、色鮮やかで美しい「ランタナ」だが、外来植物である(画像提供:©︎紙植)

このプロジェクトの軸である植物の中で典型的な例が、「ツルヒヨドリ」と呼ばれる植物で、日本では台湾に近い沖縄本島で見かけることができます。この植物はもともと中南米に生息していましたが、人間によってアジア地域にも持ち込まれたのです。

ツルヒヨドリはその強い繁殖力で他の植物を覆うようにして成長し、日光を遮断してその植物を枯らしてしまうことから、生態環境に深刻な影響を及ぼす懸念が持たれています。その驚異的な成長スピードから「緑の癌」と呼ばれるほど、現在では台湾でも環境問題となっています。

Taiwan Plants
台湾で環境問題となっている、外来植物「ツルヒヨドリ」(画像提供:©︎紙植)

駆除した外来植物を、図鑑に使う紙の原料に

そこで、このプロジェクトのメンバーたちが思いついたアイディアが、駆除されたあとの処分予定の外来植物たちを持ち帰って、慎重に扱った上でそれらに新たな価値を与えようという発想です。
具体的には、台湾各地に生息する20種類もの外来植物をリサーチし現地で摘み取って、手すき紙の原料にし、多くの人に知ってもらえるよう「紙」の中に閉じ込めさせたのです。

Taiwan Plants
様々な外来植物を原料に作られた、手すき紙(画像提供:©︎紙植)

機械の手は一切借りず、完全にハンドメイドで作成された手すき紙は、植物の匂いやテクスチャが紙に留められていて、目で見るだけでなく、嗅覚と触覚でもその植物の「存在」をとても身近に感じることができるという、斬新な仕上がりになっています。

Taiwan Plants
手すき紙はそのまま図鑑のページの一部として使用されている(画像提供:©︎紙植)

20種類にものぼる外来植物のイラストで、幅広く認知を図る

この台湾各地にすでに生息している外来植物は、図鑑の構成上大きく「道端で見かける植物」、「水辺で見かける植物」、「景観用としての植物」と「山間の日が当たる場所に生息する植物」の合計四章に分けられて、より詳細に紹介されています。

Taiwan Plants
探したい植物にすぐにたどり着けるように、図鑑の右側にしおりがついている(画像提供:©︎紙植)

これらの外来植物は手書きのイラストを使って図鑑上に表現され、幅広く認知させることを目的に、実際の植物と見比べがしやすいように忠実に描かれています。

Taiwan Plants
水彩で細かく描かれた植物のイラスト(画像提供:©︎紙植)

図鑑以外にも、植物ごとにポストカードが制作され、より多くの人に外来植物の姿を知ってもらえるよう、様々は工夫がこなされています。

Taiwan Plants
黒の背景に植物がより際立つ、ポストカードのデザイン(画像提供:©︎紙植)

外来植物の実態をより多くの人に伝える

科学の進歩により人の往来がとても便利になった現代社会ですが、それと同時に本来そこにいなかった動植物までも、罪なく人間と共に世界中の様々な場所に持ち運ばれてしまっています。今私たちが何気に道端で見かけたきれいなお花も、実はもともとこの地に咲いていた固有の植物の生態系を脅かしているのかもしれません。

Taiwan Plants
細部のデザインにまでこだわっている(画像提供:©︎紙植)

この植物に直接出会える図鑑を通して、外来植物の実態を少しでも身近に理解を深められる、とても素晴らしいプロジェクトだと感じました。

では、次回もお楽しみに!

商品情報

紙植 – 台湾外来植物図鑑
デザイナー     Chia Chen Wang, Yu Xuan Chen
プロジェクトサイト https://www.behance.net/gallery/65248275/_
Facebook      https://www.facebook.com/%E7%B4%99%E6%A4%8DExotic-Plant-Paper-867677416752410/

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WRITER PROFILE

Seikyo

1996年台湾生まれ。半分台湾人。東京でグラフィック&Webデザイナーとして働きながら、台湾と日本の文化のギャップをデザイン的な視点で発信中。

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