紅茶の香りがするビール?!台湾の朝食文化からヒントを得たクラフトビールとは

Seikyo
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2021.05.14
Ugly Half Beer
画像提供:©️酉鬼啤酒 Ugly Half Beer

みなさん、こんにちは。半分台湾人のSeikyoです。
今回は台湾で今話題を呼んでいる「モーニングビール」についてご紹介したいと思います。

早速みていきましょう!

台湾の朝食文化からアイデアを得たクラフトビール

台湾の新北市に拠点を置くクラフトビール醸造所の「UGLY HALF BEER 酉鬼啤酒」。2019年にニュージーランドとアメリカに背景を持つMax GilbertとHarn Sunによって創業され、新しいクラフトビールの文化を広めようと、台湾に拠点をおき自らブランドを立ち上げました。

南国のフルーツ「グアバ」の味がするビールや牡蠣ビールなど、斬新なクラフトビールを世の中に送り出してきた彼らが、今回着目したのが台湾の朝食文化。台湾では朝食を家の中でとるよりも外食することが一般的で、街中にはあちらこちらに「朝ご飯屋さん」を見かけることができます。

その独特な朝ご飯屋さん文化といえば、赤と黄色のコントラストが目立つ看板や、中華と洋食が両立しているバリエーション豊かなメニューだけでなく、お客さんの要望に応じてメニューをカスタマイズしてくれるのが一番の特徴と言えます。具体的には例えばサンドイッチを頼んだ時に、好みに応じて食パンの耳を切ってもらえたり、ドリンクをアイスなし・砂糖なしにするなど、お客さんの希望に応じてくれるお店が多く存在します。

Ugly Half Beer
画像提供:©️酉鬼啤酒 Ugly Half Beer

そういった台湾の朝ご飯屋さんならではの「おもてなし精神」から生まれたのが、まさに今回ご紹介するクラフトビールの名前にもなっている「吐司去(掉的)邊大冰紅」で、日本語に直訳すると「食パン耳なしのLサイズアイスティー」という意味になっており、ユニークなことにお店でオーダーするときのお客さんの典型的フレーズがそのまま商品名になっているのです。

画像提供:©️酉鬼啤酒 Ugly Half Beer
画像提供:©️酉鬼啤酒 Ugly Half Beer

台湾の朝ご飯屋さんの定番メニューでもあるトーストと甘くて冷たいアッサム紅茶のセットをインスピレーションに、朝から気軽に飲めるビールというコンセプトと合わせて、この「モーニングビール」が誕生したのです。

画像提供:©️酉鬼啤酒 Ugly Half Beer
画像提供:©️酉鬼啤酒 Ugly Half Beer

いらなくなった食パンの耳を原料の一部に

イギリスで廃棄パンからビールを作る酒造「Toast Ale」から啓発されたというUGLY HALF BEERのメンバーたちは、台湾新北市の「五股」という地のパン工場から廃棄される予定の食パンの耳を仕入れて、醸造に使う麦芽の一部として代用するという、とても斬新なアイディアにたどり着いたのです。焼き上げた後の食パンの耳を細かく砕き、小麦・裸麦・エンバク・ウィーンモルトと混ぜて糖化させ、アッサム紅茶をブレンドさせることで、ほんのり紅茶の香りも感じられるクラフトビールが生まれました。

廃棄される予定の食パンの耳(画像提供:©️酉鬼啤酒 Ugly Half Beer)
廃棄される予定の食パンの耳(画像提供:©️酉鬼啤酒 Ugly Half Beer)
画像提供:©️酉鬼啤酒 Ugly Half Beer
画像提供:©️酉鬼啤酒 Ugly Half Beer

世界的な環境問題にもなっているフードロスを見事においしく解決し、サステイナビリティを実現していることに、このクラフトビールの大きな意味を感じます。

テイクアウト用の紙袋をモチーフにしたラベルデザイン

画像提供:©️酉鬼啤酒 Ugly Half Beer
画像提供:©️酉鬼啤酒 Ugly Half Beer

ラベルデザインを手掛けたのは、コロナの関係でニューヨークから台湾に戻ってきたアーティストの「黃海欣」さん。今回初めてアートの域を超えてブランドデザインに携わることになったそうですが、自身がまさに朝ご飯屋さんに滞在する時間の中で、台湾の朝ご飯屋さんを代表できるシンボルとなるものをキャッチし、最終的にモチーフとなった、台湾でよく見かけるテイクアウト用にトーストなどを入れる紙袋にたどり着いたそうです。

白地に赤のインクで印刷された袋の表のイラストや楷書っぽいフォントなど、どれも「台湾魂」がデザインに詰め込まれており、紙袋の上の縁がギザギザに切り込まれているのも、なんとも「台湾らしさ」を感じ取れます。

左が台湾の屋台でよく見かける、テイクアウト用の紙袋(画像提供:©️酉鬼啤酒 Ugly Half Beer)
左が台湾の屋台でよく見かける、テイクアウト用の紙袋(画像提供:©️酉鬼啤酒 Ugly Half Beer)
画像提供:©️酉鬼啤酒 Ugly Half Beer
画像提供:©️酉鬼啤酒 Ugly Half Beer

穀物の搾りかすを再利用して手提げ袋を作成

廃棄されるパンからビールは作れますが、醸造した後の廃棄物も果たして再利用することは可能なのでしょうか?

ビールの製造工程で大量に残ってしまう穀物の搾りかすなどの副産物は、そのまま捨ててしまうか、養鶏場の飼料として使われることが多く、なんとか資源を再利用できないかと考えたチームのメンバーたちは、台湾でプラスチックの削減に取り組むクリエイティブチーム「A Plastic Project」と力を合わせて、なんと穀物の搾りかすから手提げ袋を作るプロジェクトまで始動させたのです。

乾燥させた後の穀物の搾りかす。色が浅いのが麦芽で、濃い目なのが食パンの耳(画像提供:©️酉鬼啤酒 Ugly Half Beer)
乾燥させた後の穀物の搾りかす。色が浅いのが麦芽で、濃い目なのが食パンの耳(画像提供:©️酉鬼啤酒 Ugly Half Beer)
袋の表面には茶色の粒が見える(画像提供:©️酉鬼啤酒 Ugly Half Beer)
袋の表面には茶色の粒が見える(画像提供:©️酉鬼啤酒 Ugly Half Beer)

ビールの醸造過程で余ってしまった穀物の搾りかすを乾燥させて細かく砕き、100%リサイクルされたプラスチックの原料の中に混ぜ合わせることで、繰り返し使うことのできるプラスチックバッグとして再生され、袋からはほのかにパンを焼き上げた後の香りもするそうです。

ビール3本と手提げ袋とでセット販売されている(画像提供:©️酉鬼啤酒 Ugly Half Beer)
ビール3本と手提げ袋とでセット販売されている(画像提供:©️酉鬼啤酒 Ugly Half Beer)

残った食パンの耳からビールを作るというなんとも面白い発想に、醸造された地の文化的要素をデザインに落とし込んだこのクラフトビール。環境問題に積極的に向き合う姿勢も、またすばらしいと感じました。

紅茶の香りがする台湾初のクラフトビールを、皆さんもぜひ味わってみてはいかがでしょうか。
では、次回もお楽しみに!

UGLY HALF BEER 酉鬼啤酒
Facebook:https://www.facebook.com/uglyhalf/

|A Plastic Project
https://www.a-p-p.tw/

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WRITER PROFILE

Seikyo

1996年台湾生まれ。半分台湾人。東京でグラフィック&Webデザイナーとして働きながら、台湾と日本の文化のギャップをデザイン的な視点で発信中。

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