もみ殻やコーヒーかすをアップサイクルして作られた、台湾発のエコな「Rice-Cycle弁当箱」とは

Seikyo
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2021.06.02
Rice-cycle弁当箱(画像提供:©️ TZULAÏ)
Rice-cycle弁当箱(画像提供:©️ TZULAÏ)

みなさん、こんにちは。半分台湾人のSeikyoです。
今回ご紹介するのは、本来捨てられる素材を再利用して作られた、台湾発のサスティナブルなお弁当箱です。早速、みていきましょう!

台湾のお弁当文化とその課題

日本と同じく東アジアの文化圏に属する台湾は、日本と同じくお米を主食としています。日本ならではのお弁当文化は戦前に台湾にも伝わったと言われており、味だけでなく見た目のビジュアルにもこだわる日本式のお弁当は台湾人の間でも特に人気があり、「日式便當(=日本式のお弁当)」という言葉があるほど、日本文化の一つとして認知されています。

そんな台湾ですが特に外食文化が盛んで、日本人ほど自ら作ったおかずを弁当箱に詰め合わせて持ち歩く習慣はあまりありませんが、テイクアウト用の容器に使われているプラスチックや、油汚れによってリサイクルが難しくなった紙の容器など、いかにゴミを減らし再利用可能な素材にシフトするのかが、目前の課題となっています。

台湾東部は稲作が盛んで、自然環境も豊か
台湾東部は稲作が盛んで、自然環境も豊か

竹粉と精米で残った「もみ殻」を再利用するアイデア

2013年に設立された、台湾発の生活雑貨ブランド「TZULAï(ツーライ)」。この単語は台湾語で「家の中」を意味し、台湾の伝統工芸と環境に配慮したエコなプロダクトを世の中に送り出してきました。

今回TZULAïが目をつけたのが、職場や学校のランチタイムに使う「お弁当箱」。台湾は日本と同じくお米を主食としているため、その米から発想を得て、精米の過程で出てくるお米の「もみ殻」を再利用し、お弁当箱を作る材料の一部に混ぜることで、アップサイクルを実現させたアイデアが誕生したのです。

精米の際に残る「もみ殻」。通常だとそのまま廃棄されることが多い(画像提供:©️ TZULAÏ)
精米の際に残る「もみ殻」。通常だとそのまま廃棄されることが多い(画像提供:©️ TZULAÏ)

天然素材でできたランチボックスの材料のベースとなっているのは、竹の切れ端を細かく砕いた粉。それにもみ殻を足した上で、プラスチックなどは一切使わず独自の技術を生かして成型され、ナチュラルな色合いと質感が特徴のランチボックスに仕上がっています。

フタの部分は、台湾の家庭で見かけるアンティークタイルのデザインからヒントを得ていて、優美な曲線を描いているだけでなく、冷蔵庫や収納棚に積み重ねたときに、上に重ねた弁当箱が下の溝に綺麗にはまるように工夫されています。フタに取り付けられているシリコン部分も簡単に取り外すことができ、弁当箱の内側も曲線的に作られていることから、洗うときも汚れをきれいに落としやすいように設計されています。

サスティナブルな素材と呼ばれている竹と、通常はそのまま廃棄されるもみ殻に新たな利用価値を与えることで、環境にも人にもやさしい日用品が誕生したのです。

外観からも天然素材でできたことがうかがえる、やさしい色合いになっている(画像提供:©️ TZULAÏ)
外観からも天然素材でできたことがうかがえる、やさしい色合いになっている(画像提供:©️ TZULAÏ)
バイキング式が多い台湾の弁当屋さんでテイクアウトの際に使うことで、容器から発生するゴミを削減することを実現(画像提供:©️ TZULAÏ)
バイキング式が多い台湾の弁当屋さんでテイクアウトの際に使うことで、容器から発生するゴミを削減することを実現(画像提供:©️ TZULAÏ)

コーヒーかすを配合することで、茶色に変身

もう一つのカラーバリエーションである茶色の弁当箱に使用されているのは、こちらも同じく本来捨てられてしまうコーヒーかすと竹粉。プラスチックは原料に一切使わずに、シリコンを除いて100%天然素材で成型されていることから、大人から子供まで安心して使うことができ、その役目を終えて処分する際にも、環境汚染を避けて土に還すことが可能になりました。

またこの弁当箱は、300個以上の弁当箱を使った経験と30年以上弁当のおかずを作ってきた、弁当コンサルタントで料理家の野上優佳子さんもプロジェクトに参加し、弁当箱のサイズ感や使いやすさなど日本人的な視点をデザインに盛り込むことで、日本と台湾の食文化がコラボして出来上がった弁当箱として、世の中に送り出されました。

シックな茶色のデザインが、落ち着いた雰囲気を醸し出している(画像提供:©️ TZULAÏ)
シックな茶色のデザインが、落ち着いた雰囲気を醸し出している(画像提供:©️ TZULAÏ)
お弁当箱を持ち運ぶ専用のバッグも開発された(画像提供:©️ TZULAÏ)
お弁当箱を持ち運ぶ専用のバッグも開発された(画像提供:©️ TZULAÏ)

日々の暮らしからサスティナビリティを実現

ピクニックなど幅広い生活シーンで使うことが可能(画像提供:©️ TZULAÏ)
ピクニックなど幅広い生活シーンで使うことが可能(画像提供:©️ TZULAÏ)

安価で加工しやすい材質であることから、まだまだプラスチック製が多い世の中のお弁当箱。さまざまなプラスチックが複合的に使用されていることから、リサイクル処理も難しいという課題があります。

プラスチックごみ問題だけでなく、自然破壊やフードロス、地球温暖化など、今私たちの社会はさまざまな問題に直面しています。一見自分一人の力では解決ができない大きな問題に見えますが、日々のちょっとした行動やひらめきから生まれたアイデアで、社会問題を解決するアクションにつながるのだと、この弁当箱のプロジェクトは証明してくれていると感じます。

最近台湾ではあちらこちらで、こうしたサスティナビリティを実現する取り組みが広まってきています。大自然から得た素材を安心・安全に使い、手放すときも環境にやさしいものを。そう語りかけてくれるお弁当箱だと感じました。

では、次回もお楽しみに!

|TZULAÏ
https://www.tzulai.com/

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WRITER PROFILE

Seikyo

1996年台湾生まれ。半分台湾人。東京でグラフィック&Webデザイナーとして働きながら、台湾と日本の文化のギャップをデザイン的な視点で発信中。

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