2021.06.19

アート ✕ 技術 ✕ 職人技で生まれる デジタルの”触感” / 画像・アラウンドスケープ・粒子 Image, Aroundscape, Particle (RICOH ART GALLERY)

銀座和光本館の向かいにある三愛ドリームセンター内に、RICOH ART GALLERYという新しいアートギャラリーがオープンしました。「リコー」と言えば、やはり写真のギャラリー?と思いきや、こちらでは新しい印刷技術とアーティストの作品を掛け合わせたユニークな表現が紹介されています。

この記事では、RICOH ART GALLERYのオープニング展示として開催されている「画像・アラウンドスケープ・粒子 Image, Aroundscape, Particle」展と、StareReapという新しい技術をアートに活用する取り組みを紹介します。

「画像・アラウンドスケープ・粒子」展 展示風景  photo by ぷらいまり
「画像・アラウンドスケープ・粒子」展 展示風景

デジタルと現実世界を行き来する、梅沢和木のデジタルコラージュ作品

この展覧会は、インターネット上の画像を大量に収集し、Photoshopをつかってコラージュする作品を制作するアーティスト・梅沢和木さんによる個展です。

円筒状の会場に並ぶのは、アニメのキャラクターのようなモチーフと、シューティングゲームやニコニコ動画のコメントの弾幕*を思わせるような、画面一杯にあふれる情報・色彩・ノイズにあふれた画面。ディスプレイの中のような「2次元」的なイメージの作品ですが、作品に近づくと、その表面には絵の具が塗り重ねられるような凹凸が。

≪画像の粒子 -Twelve Style≫/ 梅沢和木(部分) photo by ぷらいまり
≪画像の粒子 -Twelve Style≫/ 梅沢和木(部分)

まるでレリーフのように、ドット・ジャギー・ピクセルといったイメージが細かい凹凸で表現されています。本来はディスプレイの中にしか存在しない、デジタル特有のザリザリとしたノイズの質感が、「物質」として目の前に現れ、触れなくともその凹凸が目から触感のように伝わってきます。

梅沢さんは、情報と物質の境界面としての指先の感覚について「指先が触れている感触が、ぼくにとってある種のリアリティになっている。からだの一部が触れる、その接触を介して膨大な情報に一気に接続される感覚です。」*と言及しています。

デジタルと現実世界との間で、デジタルにはないはずの物質感を、アーティストは制作のインターフェースで感じ取る一方、今回の凹凸の表現によって、その感触が目で触るように鑑賞者にも伝わってくるようです。

20μm厚のインクを何層にも重ね 様々な質感を作り出す「Stare Reap」技術

これらの凹凸の表現は、「StareReap」というインクジェット技術を活用した方法によってつくられています。1層が23ミクロン、なんと髪の毛の半分ぐらいの厚みの樹脂を何層も重ねて印刷することで、人の手では再現できないような凹凸を表現しているのだそう。

今回の作品の場合は、約3mmの厚みの中に、なんと150回以上の印刷を重ねている**のだとか!

左から≪Xro≫≪時喰いZ≫ / 梅沢和木 photo by ぷらいまり
左から≪Xro≫≪時喰いZ≫ / 梅沢和木

StareReapの立体化技術は、オイルペイント、テキスタイル、木目、革、石目など幅広い質感を表現することができ、また、サイズ・色調なども幅広く扱えるそう。ギャラリーの中には、この技術を紹介するパネル展示もあり、岩のごつごつした感じや着物の布地の質感などが印刷によって再現されている様子を見ることができます。

StareReap解説パネル 右が2.5Dプリントによる印刷 photo by ぷらいまり
StareReap解説パネル 右が2.5Dプリントによる印刷

このStareReapはアートとビジネスをつなげるリコーの新規事業プログラムとして3年前に立ち上げられ、そのプロジェクトとしてこのRICOH ART GALLERYが新しくオープンしたそうです。

「アーティスト」と「エンジニア」によって生まれる 新しい表現

今回展示されている作品は、2.5DプリントともいえるStareReap技術を用いて作られた作品ではありますが、その上から梅沢さんにより手作業で加筆されています。

展示室には、展示されている作品と同じデータを、2.5Dプリントされた所までのプリントも展示されていますが、完成品と比べると何かが物足りない…これらの作品が、梅沢和木さんという「アーティスト」と、StareReepの「エンジニア」の方々が共同で制作することで生まれてきた作品なのだと言うことを感じられます。

「画像・アラウンドスケープ・粒子」展 展示風景  photo by ぷらいまり
「画像・アラウンドスケープ・粒子」展 展示風景

「エンジニア」と呼ぶプリンティングチームにもプロフェッショナルなスタッフの方々がいて、普通に見たら分からないものの、担当者によってプリントにその人の個性が表れるのだとか。デジタルの技術ですが、その作業はアナログ的な比重が大きく、アーティストとエンジニアの「対話」が重要な意味を持つ**のだそう。それは「職人」の世界の技ともいえるかもしれませんね。

アーティストによって制作された画像を、職人の手によって物質化し、再びアーティストの手に戻って「作品」に仕上げられる。新しい技術を取り入れながらも、人の手と対話によって生まれる新しい表現ですね。

写真では伝わりきらないこの感覚。ぜひ生でご覧になっていただきたい作品です。

* 梅沢和木「画像・アラウンドスケープ・粒子」図録内 「梅沢和木の制作する身体、その手」 / 藪前知子
(梅沢コメント部分は初出 「共同討議1 記号から触覚へ」『ゲンロン5特集:幽霊的身体』2017年6月号、ゲンロン、p23)

** 梅沢和木「画像・アラウンドスケープ・粒子」図録内  「梅沢和木✕家入一真✕林達之 クロストーク」

展覧会情報

画像・アラウンドスケープ・粒子 Image, Aroundscape, Particle @RICOH ART GALLERY

画像・アラウンドスケープ・粒子 Image, Aroundscape, Particle @RICOH ART GALLERY

展覧会webサイト https://artgallery.ricoh.com/exhibitions/image-aroundscape-particle_2

会期  2021年6月5日(土) 〜 2021年7月3日(土)

会場  RICOH ART GALLERY

住所  東京都中央区銀座5-7-2 三愛ドリームセンター8階・9階

休廊日 月日祝

4050

ぷらいまり

ぷらいまり

都内でサラリーマンしながら現代アートを学び、美術館・芸術祭のボランティアガイドや、レポート執筆などをしています。年間250以上の各地の展覧会を巡り、オススメしたい展覧会・アート情報を発信。 https://note.com/plastic_girl
Twitter:@plastic_candy

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