2021.08.09

まるで探偵!矛盾を導く数学の証明法「背理法」とは?

普段、私たちが見ているこの世界。
ほんの少しだけ「数学」を知ってみると、意外な奥行きが見えてくるかもしれません。

今回のテーマは、数学の証明法の一つ「背理法」です。

「背理法」は、矛盾を導くことを特徴とする証明法で、その様子は、まるで探偵や敏腕刑事のようです!

好きな推理小説や刑事ドラマなどを思い浮かべながら、読んでみてくださいね。

矛盾を導き、事件を解決!

探偵や刑事が主役の作品は、子どもから大人まで広く人気がありますよね。

青山剛昌さん原作の漫画『名探偵コナン』、テレビ朝日系列のドラマ『相棒』など、長年世代を超えて愛され続ける名作がたくさん。

探偵や敏腕刑事が、見事な推理や尋問で事件を解決するプロセスには、夢中になってしまいますよね。

そのなかでも、容疑者の証言や、物的証拠などに「矛盾」が生じて、事件解決のカギとなる……という展開に、ハラハラすることがあります。

では、例として、架空の事件の捜査を見てみましょう。どこかに矛盾が隠れているので探してみてくださいね。

8月2日に、東京である事件が発生しました。13時~15時頃の犯行と推測されています。

容疑者として浮かび上がったのは太郎さんと次郎さん。2人は友人同士です。

ある探偵が、この2人を調べることになりました。

まず、太郎さんを調べてみると、太郎さんは8月1日から8月3日まで、出張で北海道に行っていたことがわかりました。ホテルの予約履歴や、関係者の証言などから、この事実は確実なようです。また、8月2日の13時に、太郎さんは、北海道の取引先の人とミーティングをしていたことがわかりました。アリバイが成立しています。

そこで、探偵は次郎さんを尋問することにしました。

 

探偵「8月2日の13時~15時頃、次郎さんは何をしていましたか?」

次郎「レストランで友人と食事をしていました」

探偵「そうなんですね。レストランの場所はどこでしたか?」

次郎「新宿です」

探偵「その友人は誰ですか?」

次郎「太郎さんです」

 

このやりとりから、探偵は「次郎さんが犯人ではないか」と推測し、次郎さんをくわしく調査することに決めました。

もしも、この話が本当だと仮定すると……

先ほどのやりとりの矛盾点は、次郎さんが「8月2日の13時~15時頃、太郎さんと新宿で会っていた」と発言したところです。この話が本当だとすると、太郎さんが出張で北海道にいたことと矛盾してしまいます。

もしかすると、探偵は、次郎さんが「レストランで友人と食事をしていました」と答えた時点で、「次郎さんはウソをついているかも」と思ったかもしれません。

しかし、ここで探偵は「ウソをついてるだろ!本当のことを言え!」と言うことはせず、いったん「そうなんですね」と、次郎さんの話を真実として受け入れました。そして、質問を続けて行き、矛盾点を導き出したのです。

ポイントは「探偵が、いったん次郎さんの話を真実として受け入れた」ところ。「もしも、この話が本当だと仮定すると……」という前提を置くことで、おかしな点が浮かびあがってきました。

まとめると

①いったんウソであると思われることを、本当だと仮定してみる
②その前提のもとで調べていくと、矛盾が導き出せた
③ウソであることが、証明された

というプロセスを踏んでいたのです。

実は、これによく似た「矛盾を導く証明法」が数学には存在しています。

探偵気分で数学の証明にチャレンジ!

では、矛盾を導く証明法を体験してみましょう。

まずは、問題を出すので、探偵になったつもりで考えてみてくださいね。

【問題】
ミカンが21個あり、これを4人に配ります。このとき、少なくとも誰か1人は6個以上のミカンを受け取ることを証明してください。ただし、全てのミカンは、必ず誰かしらに配布されるとします。

まずは、具体例を考えてみましょう。

4人をAさん、Bさん、Cさん、Dさんとします。

例えば、21個の配り方として

Aさん:4個
Bさん:7個
Cさん:3個
Dさん:7個

Aさん:5個
Bさん:5個
Cさん:5個
Dさん:6個

などを考えてみると、確かに、少なくとも誰か1人は6個以上のミカンを受け取ることになりそうです。

これをスッキリと証明するために、矛盾を導く証明法を使ってみましょう。

今回の場合、証明したいことは「少なくとも誰か1人は6個以上のミカンを受け取る」です。これを否定し、「全員が5個以下しかミカンを受け取らない」と仮定します。

もちろん「全員が5個以下しかミカンを受け取らない」は真実ではないでしょうが、先ほどの探偵のように、いったんは真実として受け入れてみましょう。

こ仮定のもと、4人が受け取ることができるミカンの最大個数を考えてみます。

「全員が5個以下しかミカンを受け取らない」と仮定しているので、それぞれが受け取ることができるミカンの最大個数は5個です。したがって、以下のようになります。

Aさん:5個
Bさん:5個
Cさん:5個
Dさん:5個

このとき、ミカンの合計個数は4×5個、つまり、20個。これが、4人の受け取ることができるミカンの最大個数となります。

しかし、ミカンは21個ありますよね。「全てのミカンは、必ず誰かしらに配布される」という条件があったのに、配布できるミカンの最大個数は20個。これでは21個全てを配り切れず、矛盾が生じてしまいました。

ということは、「全員が5個以下しかミカンを受け取らない」という仮定が間違っていたということになります。したがって、「少なくとも誰か1人は6個以上のミカンを受け取る」ということが証明できました。

このような、矛盾を導く証明法を「背理法」といいます。

背理法では

①証明したいこと(命題)を否定し、これを仮定する
②その仮定のもとですすめていくと、矛盾が導き出される
③これにより、証明したいことが示される

というプロセスを踏みます。

ミカンの例では

①「全員が5個以下しかミカンを受け取らない」と仮定
②4人が受け取ることができるミカンの最大個数は20個なので矛盾
③「少なくとも誰か1人は6個以上のミカンを受け取る」が示された

という流れで証明していました。

今回の例に限らず、「背理法」は、数学において非常に有用な証明法です。

例えば「○○は無限に存在する」という命題を証明したいときには、「○○は有限個しか存在しない」と仮定して矛盾を導き出すことがあります。ぜひ「素数は無限に存在する」の証明を調べてみてくださいね。背理法の凄味を実感できるはずです。

探偵の取り調べのように、ウソを「そうなんですね」といったん受け入れて、矛盾を導く「背理法」。日常生活でも、ときどき背理法のような思考を取り入れてみてはいかがでしょうか。

例えば、冷蔵庫に買ったはずのプリンがないとき、家族に「食べた?」と質問しても、全員が「食べてない」と答えたとしたら……「食べたでしょ!」と怒る前に、「食べてない」と仮定して、一人一人に質問してみると、あっさり犯人が見つかることがあるかもしれません!

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みのきち

みのきち

東京生まれ東京育ち。大学と大学院で数学を専攻。最近は、数学の命題をプログラミングして具体例を確かめることにハマっている。入浴剤とドリップコーヒーを集めるのが好き。ドイツ語の勉強中。散歩がてらパン屋を見つけると入ってしまう。

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