地図がないとき、東京スカイツリー®までの距離を計算するには? ~役に立つ!三角比~

みのきち
みのきち
2022.02.16

普段、私たちが見ているこの世界。

ほんの少しだけ「数学」を知ってみると、意外な奥行きが見えてくるかもしれません。

今回は、「もしも地図がなかったら……」という場面を考えていきます。

スマホがある今、「地図がない」という状況は考えづらいかもしれません。しかし、そんな不便な場面を想定してみると、数学が役立つことが見えてきます。

もしも地図がなかったら……

最近、地図を見る機会はありましたか?

コロナ禍で外出機会が減り、「地図を見る機会が減ったなあ」という人も多いかもしれません。

しかし、初めての場所に行くときなど、やはり地図は欠かせないものです。旅行先などでは、手放せない存在ですよね。

特に最近では、スマホの地図の便利さに驚かされます。

現在地を示し、ナビまでしてくれる……一昔前では考えられないほど高機能になっています。

当たり前に存在している上、どんどん便利になっている地図ですが、よくよく考えてみると「誰かがつくってくれたもの」ですよね。そして、大昔には「地図がなかった時代」もあったことでしょう。

そこで今回、試しに「もしも地図がなかったら……」というシチュエーションを想定してみたいと思います。

スカイツリーまでの距離は?

あなたは、地図がない状態で、東京を観光しているとします。すると、向こうの方に「東京スカイツリー」が見えました。

「せっかくなので、歩いてスカイツリーまで行こう!」と思ったのですが、地図がないため、ここからどのくらいの距離があるかわかりません。

もしも、かなりの距離を歩かなければならないとしたら、大変ですよね。スカイツリーは634メートルもあるので、近そうに見えて、案外すごく遠くにあるかもしれません。

地図なしで、大まかな距離を把握するには、どうしたら良いのでしょうか?

こんなときに、とても役に立つ情報が3つあります。

それは、「仰角(ぎょうかく)」「地面から目までの高さ」「三角形の比」です。これらがわかると、スカイツリーまでの距離を計算することができるのです。

まず、「仰角」とは、何かを調べてみると……

物を見上げたときの視線の方向と、水平面とのなす角

引用元Weblio辞書 デジタル大辞泉「仰角」

とのこと。天文学では「高度」とも呼ぶそうです。

今回のケースでは「スカイツリーのてっぺんを見上げたとき、あなたは視線の角度を、水平面からどのくらい上げたか?」に対応します。

つまり、下の図の角\(a\)が、仰角です。

@nansuka

仰角をキッチリ正確に測るためには、精密な計測機器が必要になってくるでしょう。しかし、簡易的に大まかな角度を測る方法がいくつかあります。

なかでも、分度器や重りを使って、簡単な計測器をつくる方法が有名です。少し手間はかかりますが、工作好きの人であれば、楽しんでつくることができると思います。よかったら調べてみてくださいね!

また、星の観測では「げんこつ」などの手の形を使って仰角を測ることもあるそうです。以下のサイトでは、げんこつ1個が10°に相当することを使って、仰角を測る方法を紹介しています。

※NHK for School「げんこつを使った高度のはかり方」

今回のケースでは、仰角が30°であったとしましょう。

次に、調べるのは「地面から目までの高さ」です。

これは、おおよそ

「あなたの身長」-「あなたの目から頭のてっぺんまでの長さ」

に相当します。
※車椅子などを使用している場合は、この限りではありません。「身長」を「座った状態での自分の高さ」に変えて、計算する必要があります。

「あなたの目から頭のてっぺんまでの長さ」は、人によってさまざまではありますが、およそ10~15センチであると言われています。

したがって、

「あなたの身長」- 10センチ

を計算すると、大体の「地面から目までの高さ」が得られます。

もちろん、厳密には、この式では不正確で、靴の厚みなども考慮するべきです。本来であれば、精密な計測機器を使用して、きちんと測るべきでしょう。

しかし今回は、すぐにわかる情報で、大まかに計算することにします。

例えば、「あなたの身長」が170センチ、「あなたの目から頭のてっぺんまでの長さ」が10センチであるとしましょう。

すると、「地面から目までの高さ」は

170センチ – 10センチ = 160センチ

ということになります。

では、この二つの情報「仰角」と「地面から目までの高さ」を、図にあてはめてみます。

@nansuka
※この図では、人とスカイツリーの縮尺が合っていませんが、わかりやすさを重視して、このようにしています。本来は、人の身長に比べてスカイツリーの方が圧倒的に高いです。

三角形ABCの高さ(辺AC)は

「スカイツリーの高さ」-「地面から目までの高さ」

なので、単位をメートルにして計算すると、

634メートル – 1.6メートル = 632.4メートル

です。

ここまでで、三角形ABCについて、かなり色々なことがわかってきましたね。

知りたかったのは「スカイツリーまでの距離」なので、三角形ABCの底辺(辺BC)がわかれば、見事解決となります。

最後に、もう一つの重要情報「三角形の比」を使って、仕上げとしましょう!

「三角形の比」で距離がわかる!

まずは、ここまでで得られた情報を、図にあてはめてみます。

@nansuka

改めて、三角形ABCに注目してみましょう。

内角が「30°と60°と90°」ですよね。

この形状の直角三角形、どこかで見たことがありませんか?

正三角形を半分にした直角三角形です。三角定規の形状としても有名ですよね。

また、中学校では、辺の長さの比が「\(1:2:\sqrt{3}\)」と習った記憶があるのではないでしょうか。

つまり、三角形ABCの辺の長さの比は

\[
AC:AB:BC=1:2:\sqrt{3}
\]

となっているのです。

@nansuka

辺ACは、632.4メートルなので

\[
AC:BC=1:\sqrt{3}
\]

であることから、スカイツリーまでの距離(辺BC)は

\[
BC= AC \times \sqrt{3} = 632.4 \times \sqrt{3}
\]

となります。

\(\sqrt{3}\)の値は、およそ1.73です。中高生のときに「ひとなみにおごれや(1.7320508)」という語呂合わせで、\(\sqrt{3}\)の値を記憶した人もいるのではないでしょうか。

この値を使って計算してみると

\[
632.4 \times 1.73 = 1094.052
\]

となり、目標にしていた「スカイツリーまでの距離」が計算できました!

約1100メートル、つまり、約1.1キロメートルなので、およそ徒歩圏内であることが確認できましたね。

もちろん、歩く速度は人それぞれではありますが、そんなに無茶な距離ではなさそうです。

また、もしも「632.4×1.73を暗算するのはしんどい」と感じる人は、大きめに見積もって「650×2よりは小さい値になるから、1300メートルよりは小さいだろう」と計算してみるのもよいでしょう。

こんな風に考えてみると、地図なしでも、できることはたくさんあるんですね!

とても便利な「三角比」

今回のケース、実はちょっとズルいことをしています。

仰角が30°で、直角三角形ABCの内角が「30°と60°と90°」の有名な直角三角形だったため、辺の長さの比がすぐにわかってしまっていた点です。

もしも、三角形ABCが有名な直角三角形ではない場合はどうしたら良いのでしょうか?

たとえば、仰角が20°で、直角三角形ABCの内角が「20°と70°と90°」であった場合、どのように辺の長さの比を求めれば良いのでしょうか?

未知の直角三角形だったとしても、なんとかする方法があります。

一番シンプルな方法は、「紙に直角三角形を描いて、長さを測って比を計算すること」です。

つまり、直角三角形ABCと相似な「ミニサイズの直角三角形」を紙に描いて、その辺の長さを測って、比を計算します。

定規や分度器が必要なので、少々大変な方法ではあります。しかし、現実の直角三角形ABCは、高さ600メートル超えの超巨大三角形なので、この長さを直接測ることに比べれば、はるかに簡単な方法ですよね。

このように、相似な三角形を紙の上に描くことで、間接的に、直角三角形ABCの辺の長さの比を知ることができるのです。

そして、先ほどのように、「AC:BC」という辺の長さの比と、辺ACが632.4メートルであることを使って、スカイツリーまでの距離を求めることができます。

ここでのポイントは「ミニサイズの直角三角形」と「辺の長さの比」を考えた点です。

この工夫により、大きすぎて直接測ることができない対象を、紙の上で計算できるようになりましたよね。

そう考えると、「三角形の比」は、とても重要であることがわかります。

「三角形の比」……といえば、高校時代に「三角比」を習いませんでしたか?「サイン・コサイン・タンジェント」という言葉は、多くの人が覚えていることでしょう。

実は、今回出てきた「AC:BC」は、タンジェントに対応します。

仰角を\(a\)とすると

\[
\tan{a}=\frac{AC}{BC}
\]

となっているのです。ここで出てくるタンジェントは仰角\(a\)によって、値が決まります。

そして、スカイツリーまでの距離(辺BC)は

\[
BC=\frac{AC}{\tan{a}}
\]

と計算できるのです。辺ACが632.4メートルなので、\(\tan{a}\)の値を把握しておけば、スカイツリーまでの距離が計算できるんですね!

このように考えてみると、三角比は測量に役立つことがわかります。

スマホやGPS、さらには紙の地図すらもなかった時代には、三角比が強力な道具であっただろうことが想像できますね!

現代では、著しい科学技術の発展により、三角比の必要性を実感する機会は少なくなっています。スカイツリーまでの距離を知りたければ、わざわざタンジェントを考えるまでもなく、スマホで調べれば良いからです。

しかし、「もしも○○がなかったら……」「昔の人はどうしていたのかな?」と考えてみることで、数学の利便性が見えてくることがあります。便利な世の中ではありますが、こんな風に思考実験してみると、新たな発見があるかもしれませんよ!

参考文献

●NHK for School「げんこつを使った高度のはかり方」(2022/1/18参照)
https://www2.nhk.or.jp/school/movie/clip.cgi?das_id=D0005400158_00000

●Weblio辞書 デジタル大辞泉「仰角」(2022/1/18参照)
https://www.weblio.jp/content/%E4%BB%B0%E8%A7%92

みのきち
WRITER PROFILE

みのきち

東京生まれ東京育ち。大学と大学院で数学を専攻。最近は、数学の命題をプログラミングして具体例を確かめることにハマっている。入浴剤とドリップコーヒーを集めるのが好き。ドイツ語の勉強中。散歩がてらパン屋を見つけると入ってしまう。

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