不便・雨漏り・老朽化上等!それでも人々を惹きつけるメタボリズムの真髄…歴史的名建築を皆で守ろう!!「中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト」

センノヂ
センノヂ
2021.03.03
 中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト

銀座8丁目、汐留のほど近くにそびえ建つ、一風変わった建物。およそビルらしくないデコボコとした突起物はブロックの集合体のようで、ひとつひとつに潜水艦を思わせる窓が付いています。
その様子はドラム式の洗濯機が積み上げられているようでもあり、周囲のビルとくらべると明らかに異質で、とてもポップです。

このビルの名前は、「中銀(ナカギン)カプセルタワービル」。竣工がおよそ50年前という古株ですが、日本のみならず世界中から、その行く末に大変関心が集まるビルなのです。

見た目が非常に個性的ですが、実は大変な価値のある建物。保存と再生が望まれ、「中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト」なるものも結成されています。

今回は「中銀カプセルタワービル」と、ビルを守ろうとする本プロジェクトの取り組みをご紹介します。

「新陳代謝」しながら変化する、世界的なメタボリズム建築

世界で初めて、カプセル型のマンションとして実用化された「中銀カプセルタワービル」。1972年、世界的な建築家である黒川紀章氏が「新陳代謝」を意味するメタボリズムの考えに基づき設計したものです。

カプセルをそれぞれ独立した部屋として作り、老朽化したら取り替える。これが「中銀カプセルタワービル」の大きな特徴と言えます。住居はもちろん、事務所、セカンドハウス、趣味の部屋など…かたちにとらわれず、自由な使い方ができるとして人気です。

 中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト

生物の細胞が常に生まれ、そして入れ替わる「新陳代謝」。都市や建物が「新陳代謝」さながら、社会や人々の成長によって柔軟に変化していくこと。こうした理念が、メタボリズムです。

日本で生まれ、世界へと広がったメタボリズム。「中銀カプセルタワービル」は、メタボリズムの象徴的な建物として、建築好きのみならず、今なお世界中の人々から注目を集めます。

これは気になる!「中銀カプセルタワービル」はどうやって作られた?

 中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト

「中銀カプセルタワービル」は、13階のA棟と11階のB棟の2棟からなる構造。建物名が書かれた赤い「塔屋」が良いアクセントになっていて、なんとも印象的ですよね。

全部で140個あるカプセルは、2本のコアシャフト(塔)にボルトによって固定されており、空中に浮いている状態。積み重ねている訳ではないのです。
なるほど。カプセルが取り替えられるのは、このしくみのおかげ。あちこち向いているカプセルのナゾも解けました!

 中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト

当初この建物は、20年から25年程度でカプセルを交換するとして作られていました。しかし、技術的な問題や諸事情から、結局50年近く経ってもカプセルの交換は1度も行われていないのが現状。老朽化は避けられません。

「中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト」とは

雨漏りに水漏れ。お湯が出なくてシャワーが使用停止になるなど…カプセルでは、さまざまな不具合がもはや平常運転の状態。
これまでに完全な建て替えやカプセルの交換などの話はあったものの、結局流れてしまったり、建物の行く末に関して二転三転してきた過去もあります。

中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト

この先どうなるかわからない──そんな中、文化的な価値があるこの建物は、やっぱり未来に残すべきだという気運が高まります。そして2014年11月、十数カプセルを所有する前田達之さんを代表に、オーナーや住人がメンバーとなり、「中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト」が立ち上げられました。

「中銀カプセルタワービル」とその現状を多くの人に知らせるべく、カプセル見学ツアーの開催をはじめ、PR活動や取材、音楽やアートに関するイベントなどを精力的に行う本プロジェクト。そのおかげか、空きカプセルや売りカプセルの情報が出ても、即埋まってしまうほどの人気です。

中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト

「中銀カプセルタワービル」においては、不具合や不便さは問題ではなく、むしろ住人は不便な面を楽しんでいる風にも見えます。マイナス面でさえ魅力に変えてしまうビルの魔力は、確実にあるのでしょうね。

歴史的建造物の記録を手に取ってみよう!

そして、プロジェクトで外せないのが書籍の出版。2015年10月「中銀カプセルタワービル 銀座の白い箱舟」、2017年1月「中銀カプセルガール」を出版。さらに2020年12月には、クラウドファンディングにより「中銀カプセルスタイル: 20人の物語で見る誰も知らないカプセルタワー(Nakagin Capsule Style)」を出版しています。

ファンでもそうでなくても、ビルの雰囲気に浸りたい人は手に取ってみてはいかがでしょう?

中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト

おためし「マンスリーカプセル」と早く住みたい人の「中銀カプセルバンク」

中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト

「マンスリーカプセル」は、1ヶ月単位で「中銀カプセルタワービル」に住むことができる、いわばおためしのシステム。見学だけでは得られない、住んでみてわかる魅力と価値を多くの人に伝えたいという狙いもあります。

カプセルの購入や賃貸の希望者は、カプセルの空き情報をいち早く得られる「中銀カプセルバンク」への登録がおすすめ。

さらに未来へと生き続ける「新陳代謝」するビル

中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト

「中銀カプセルタワービル」では、カプセルにその人ならではの思い思いのリノベーションを施し、住む人も多いようです。
元々あったオリジナルの家具や仕様も、もちろんとても魅力的。でも、経てきた年月とともに、住む人やオーナーに合わせて変化を遂げたカプセルも価値あるものではないでしょうか。

はじめは荒れた環境を、ただ住めるよう整えただけだったかも知れません。でも、着実にカプセル、そしてビル自体も成長を遂げていると言って良いのでしょう。

さまざまな人が入れ替わり、人とともに成長して変化する。まさに「新陳代謝」するビル。過去から来た近未来のビルが、さらに未来へと生き続けられることを、願わずにはいられません。

プロジェク情報

プロジェクト名 「中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト」
公式サイト  https://www.nakagincapsuletower.com/
Facebook  https://www.facebook.com/NakaginCapsuleTower
instagram    https://www.instagram.com/nakagin_capsule_tower/
Twitter    https://twitter.com/nakagincapsule

センノヂ
WRITER PROFILE

センノヂ

昭和40年代のセンスに魅せられ古着やインテリアにハマるが、現在ではその頃に建てられたとおぼしきビルや住宅を愛でるのが何よりの癒し。いつか、自分でプロデュースした雑居ビルを建ててみたいです。

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