隈研吾さんによる独創的な石の建築の美術館「角川武蔵野ミュージアム」 「石の美術館 STONE PLAZA」をご紹介してきましたが、このほかにもご紹介したい、素材を独創的につかった建築の美術館があります。この記事では、富山市にある、木と鏡を素材に美しい空間美を醸しだす「TOYAMAキラリ(富山市ガラス美術館)」をご紹介します。
空間を贅沢に使った開放的な建物
北陸新幹線も停車する富山駅から路面電車で10分ほど。西町駅からすぐの街中にある建物です。
アルミ、ガラス、御影石の3種類の素材の細長いパネルで彩られた外観は、立山連峰の峰々の山肌を表現しているそうです。それぞれの素材が異なる様子で光を反射し、その名の通り「キラリ」とした印象です。
ところが、館内にはいるとその雰囲気は一変。木でいっぱいの暖かみのある空間になります。2階から6階までは、四角い枠を回転させながら積み上げたような「スパイラルボイド」と呼ばれる広大な吹き抜けになっていて、視線が上へ上へと吸い込まれるようです。
設計の中心となったのは、2020年の国立競技場の設計にも携わられた隈研吾さん。国立競技場でも中心的な素材として木が用いられていますが、こちらもそれ以前につくられた、木の使い方が印象的な建築です。
2015年にオープンしたこちらの建物のなかには、富山市立図書館本館や富山市ガラス美術館、ショップ、カフェ、銀行なども入っています。
なお、館内のサインもユニーク。これらのフォントも、建物にあわせて作ったオリジナルフォントなのだそうです。
目の錯覚も?ユニークな素材のつかいかた
木材に囲まれたこの建物ですが、よく見ると一部の柱は鏡でできていることに気づきます。柱に映り込んだ木材が天井や壁面の木材と繋がって見えるので、まるで柱がないように広々と感じられるのも面白いです。
圧倒的に ”木“ の印象が強い建物ですが、じっくり見るとぎっしりと敷き詰められている訳ではなく、木材と木材の間隔がとられ、地の壁も見えます。木々の間隔を広く取って、吹き抜けの向こう側を見渡せるようにし、木材の質感を残すことで「木材らしさ」がより強調されるように見えます。
こういった工夫の効果で、”木”の印象が強く頭に刷り込まれていく、ユニークな内装ですね。
ちなみに、こちらは外観だけでなく内部もgoogle mapの中で散策することができますよ。
これもガラス? 多様なガラス作品が並ぶ「富山市ガラス美術館」
「TOYAMAキラリ」の中には「富山市ガラス美術館」もあります。
2階と3階は企画展、4階ではコレクション展を開催しています。また、6階には現代ガラス作家の巨匠・デイル・チフーリ氏によるインスタレーション作品が並ぶ「グラス・アート・ガーデン」があります。
シャンデリアのようなキラキラとした作品や、浅瀬の海の中のように明るく透明でカラフルな空間、水風船のようにまん丸で多くの模様で彩られた作品や、植物のようなユニークな色・形の作品群などが並び、工芸的な「ガラス」のイメージが変化するかもしれません。
富山は「ガラスの街づくり」として、30年にわたり、市の古沢・西金谷地区にある「グラス・アート・ヒルズ富山」を中心に、ガラス作家の人材育成やガラスの産業化といったテーマに取り組んできていたのだそうです。
ガラスの中でも特に現代ガラスに特化した富山市ガラス美術館。展示室の外側にあり無料で鑑賞可能な、グラス・アート・パサージュは、富山に縁のあるガラス造形作家の作品を集められており、また、企画展示室でも1年のうちに多数の企画展が開催されています。
TOYAMAキラリは、建築空間そのものもガラス作品の展示も楽しむことができる施設です。
美術館情報
TOYAMAキラリ(富山市ガラス美術館)
住所 〒930-0062 富山県富山市西町5番1号
開館時間 9時30分~18時(金・土曜日は20時まで)
休業日 第1第3水曜日、年末年始※企画展ごとに休場日が異なる場合があります。
料金 常設展 大学生以上の方 200円 / 団体 170円※企画展は観覧料が異なります。