2020.12.23

身近にある ”透明な力” から 日常の風景を見つめ直す / 「MOTアニュアル2020 透明な力たち」展 (東京都現代美術館)

「MOTアニュアル2020 透明な力たち」展 photo by ぷらいまり

いつもの「当たり前フィルター」を外して日常に目を凝らすと、そこは「発見」の宝庫。あえて少しだけ日常から踏み出すことで、一生知ることが無かったかもしれない「発見」と出会えることも。そんな「発見」が、あなたにとても大事な「化学反応」をもたらすかもしれません。

この記事では、あなたの「当たり前フィルター」が外れるきっかけになるかもしれない展覧会をご紹介していきたいと思います。

今回ご紹介するのは、東京都現代美術館で開催中の「MOT アニュアル 2020 透明な力たち」展。わたしたちの身の回りにあるけれども気づきづらい、”透明な力”を、様々な方法で気づかせてくれる展覧会です。

身近なものがつくりだす 思いもよらない動き:片岡純也+岩竹理恵

展覧会の会場入り口で私たちを出迎えてくれるのは、時計の針のように同じ場所をぐるぐるとまわりつづける電球。見慣れた電球なのに、普通は「動かないもの」が動き回っているだけで、普段とは全く違ったものに見えてきます。

≪回る電球≫ / 片岡純也+岩竹理恵 photo by ぷらいまり
≪回る電球≫ / 片岡純也+岩竹理恵

配線もなくどうやって同じ起動を描きつづけているのかと不思議に思いますが、小さな送風機からの風によって同じ場所を回り続けているようです。

外した電球を机の上に置いたとき、電球がくるりと一回転した。電球の形は円錐形をしていて、すこし力を加えるとずっと回転し続ける形だと気がついた。

「BankART LifeV Under 35/2017 「片岡純也+岩竹理恵」展 図録より

「かたち」によってこのような動きが生み出されるなんて、身近にありながらもなかなか気づかないものですね。

また、2冊の本が回転しながらパラパラとお互いのページをめくり合う≪めくりあう本≫は、2冊の本がただ回転する運動を繰り返しているだけなのに、人が本をパラパラとめくるときの心地よい感触までもが伝わってくるようでもあり、機械が感情を持っているようにも見えてきます。

≪めくりあう本≫ / 片岡純也+岩竹理恵 photo by ぷらいまり
≪めくりあう本≫ / 片岡純也+岩竹理恵

パリでのレジデンスをきっかけに 2 人組のアートユニットとして活動を展開している片岡純也さんと岩竹理恵さん。会場は、片岡純也さんの「動きのある作品」と岩竹理恵さんの切手や博物辞典など多様な素材から切り抜いた断片を組み合わせてできた「繊細なコラージュ作品」で構成されています。素材は身近にあるものたちでありながらも、その切り取り方、組み合わせ、そして動きによって日常とは全く違った世界が見えてきます。

≪ポジション≫  -手紙からの採集 / 片岡純也+岩竹理恵 photo by ぷらいまり
≪ポジション≫ -手紙からの採集 / 片岡純也+岩竹理恵

身近な植物や微生物たちの つくり出す 力:清水陽子

こちらの展示室は化学や生物の実験室といった雰囲気。生物学と化学をバックグラウンドとし、アートとサイエンスの融合を試みる清水陽子さんの展示室です。

清水陽子さん 展示室風景 photo by ぷらいまり
清水陽子さん 展示室風景

作品のひとつ ≪Photosynthegraph≫ は、植物の「光合成」と「写真」の原理を利用して植物上にグラフィック印刷を行った作品。植物にマスクを設置して光を当てた後、化学処理を施すことで葉の上に様々なグラフィックが”現像”されます。

≪Photosynthegraph≫ / 清水陽子 photo by ぷらいまり
≪Photosynthegraph≫ / 清水陽子

様々な画像をプリントしてきたなかでも特にフェルメールの作品は最も美しくその像が現れたそうで、「フェルメールの光を操る表現の巧さがよくわかる」と清水さんはいいます。(MOT/VABF関連トークイベント「地球から宇宙へと広がるバイオアート」より)

≪バイオスピーカー≫ / 清水陽子 photo by ぷらいまり
≪バイオスピーカー≫ / 清水陽子

このほか、微生物をつかってセルロースの繊維などのさまざまな素材を培養し、それらの素材をスピーカーコーンに利用した≪バイオスピーカー≫など、植物や微生物たちの肉眼では見えないサイズ・日常では気づかないスピード感での働きによって様々なものを作り出していく様子を、ユニークな形で目に見えるようにしています。普段気づかないけれども、わたしたちのすぐ近くで共存しているものたちの力が感じられます。

目に見えないけれども 人に影響をあたえる大きな力:久保ガエタン

薄暗い部屋に展示されたのは、久保ガエタンさんによる「振動」を可視化することをテーマとした作品。音や地震による振動を科学的に捉えようとした装置や、ナマズによって地震を予知しようとした過去など、様々な方面から目に見えないこれらの力を可視化しようとしてきた歴史を映像と展示物を通じて触れながら、最後にはその力が充満し、噴出する瞬間を疑似体験します。

超常現象や自然科学的に知覚できないもの、精神分析や社会科学の中の見えない関係性を「オカルト(隠された存在)」と総称し、独自の装置を通して考察を続ける久保ガエタンさん。

《聞こえないけど聴こえてる》 / 久保ガエタン photo by ぷらいまり
《聞こえないけど聴こえてる》 / 久保ガエタン

特に、肉眼では捉えられないウィルスによってわたしたちの今までの「日常」が大きく変化してしまった今年、そのような見えない力を可視化することの重要さがより感じられてきます。

≪ユーイング型 円盤式地震計(復元模型)≫ / ジェイムズ・アルフレッド・ユーイング (久保ガエタン展示内) photo by ぷらいまり
≪ユーイング型 円盤式地震計(復元模型)≫ / ジェイムズ・アルフレッド・ユーイング (久保ガエタン展示内)

※ 会場にも注意文がありますが、とても大きな音が出る作品なので苦手な方はご注意ください。

この「MOTアニュアル」展は、東京都現代美術館(=MOT)で、年に一度開催される(=アニュアル)若手作家の作品を中心とした展覧会。今回は、このほかにも、自立分散組織、機械学習、監視社会などの「文明における自動化の動向j」を考察するGoh Uozumiさん、人々が持っている「当たり前」を日常とは異なる視点から問い直し、ワークショップや遊びのような活動を通じてその再構築・書き換えを試みる中島佑太さんと計5名の作品が展示されています。

それぞれ、物理的なもの、社会的なものなどジャンルは違いながらも、テーマとしているのは、わたしたちの身の回りにあって「当たり前」なものとして目を向けづらい力たち。この「透明な力たち」を、ユニークな方法で見ていくことによって「当たり前フィルター」が外れ、見慣れた風景も少し違って見えてくるような展覧会でした。

なお、過去に「ナンスカ」の記事でご紹介させていただいた”理科の実験器具が売っている雑貨屋さん”「リカシツ」は、今回の展示の協力も。展覧会会場の東京都現代美術館からもすぐ近くなので併せて立ち寄ってみるのもおすすめです。

リカシツ 外観 photo by ぷらいまり
リカシツ 外観

展覧会情報

MOT アニュアル 2020 透明な力たち

公式サイト https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/mot-annual-2020/

会期 2020年11月14日(土)- 2021年2月14日(日) 休館日 月曜日(2021 年 1 月 11 日は開館)、

12 月 28 日-2021 年 1 月 1 日、1 月 12 日

開館時間 10:00-18:00(展示室入場は閉館の 30 分前まで)

観覧料 一般 1,300 円 / 大学生・専門学校生・65 歳以上 900 円 / 中高生 500 円 / 小学生以下無料

会場 東京都現代美術館 企画展示室 3F

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ぷらいまり

ぷらいまり

都内でサラリーマンしながら現代アートを学び、美術館・芸術祭のボランティアガイドや、レポート執筆などをしています。年間250以上の各地の展覧会を巡り、オススメしたい展覧会・アート情報を発信。 https://note.com/plastic_girl
Twitter:@plastic_candy

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