2021.04.03

まるでCGのような 神秘的な色と動き… 新素材「蛍光磁性流体」とは?

「えっ、これってCGじゃないんですか?!」 思わず疑ってしまうような、奥行き感のある色と艶、黒色からビビッドな色への変化、そして生き物のように変化し続ける形状。

Fluorescent Ferrofluid / 蛍光磁性流体(株式会社フェローテックホールディングス 公式YouTubeより)

CGで作り出した映像のようにもみえますが、こちらはフェローテック社が開発した新素材「蛍光磁性流体」と、メディアアーティスト・児玉幸子氏の作品「モルフォタワー」とのコラボレーションによって生まれた作品。

この記事では、この不思議な新素材「蛍光磁性流体」をご紹介します。

そもそも「磁性流体」って?

まず目をひくのは、液体の表面から立ち上がる流線型の突起のような形状と、生き物のようなその動き。

蛍光磁性流体(青)
蛍光磁性流体(青)「Fluorescent Ferrofluid / 蛍光磁性流体」(株式会社フェローテックホールディングス 公式YouTubeより)

この不思議な物質「磁性流体」は、磁性をもった粒子が液体中に分散されたもの。通常は磁性をもつ物質同士が集まって液体と分離してしまうのですが、「磁性流体」はこれを安定的に分散させることで、液体そのものが磁石にくっつくような動きをします。

砂鉄に磁石を近づけると、磁力線の流れに沿ってウニのトゲのような形ができますよね。磁性流体では液体で同じようなことが起こり、多数の液体の突起ができる「スパイク現象」という現象が起こります。映像の中では、磁力を制御することで、まるで”動く彫刻”のように様々な形状を作り出していたんですね。

「90秒でわかるフェローテックの磁性流体」 (株式会社フェローテックホールディングス 公式YouTubeよりhttps://www.youtube.com/watch?v=YEtZ_tAMVYk)
「90秒でわかるフェローテックの磁性流体」 (株式会社フェローテックホールディングス 公式YouTubeより https://www.youtube.com/watch?v=YEtZ_tAMVYk)

もともとはNASAの宇宙服や、宇宙船内部へ無重力下で液体燃料を送る方法など、宇宙での使用を想定して開発されたというこの素材。日常では目にする機会もないように思いますが、実は、スピーカーの中で振動を制御するために使われたり、釣り用のリールなどの回転するものの軸に摩擦が起こらないように使われたりと、以外にも身近なところで使われているようです。

発想の転換から生まれた 独特な質感と色

今回の「蛍光磁性流体」は、光が当たると真っ黒いこの磁性流体がカラフルに見えたり、金属光沢のような艶と深みも感じられたりするなど、今までの磁性流体にはない特有の「色」がとても印象的です。

蛍光磁性流体(紅、青、緑、黄緑)
蛍光磁性流体(紅、青、緑、黄緑)

磁性をもつ物質は通常黒い色をしていて光を吸収してしまうため、基本的に「磁性流体」は黒く、色のついたものが欲しいというニーズはあったものの、色素によってはっきりとした色をつけることは難しく、長年の課題だったそうです。

そんななか、フェローテック社が着目したのが「蛍光」という特性を持つ素材。高いエネルギーを持つ短い波長の光を吸収し、それよりも長い波長の光を発光する性質を持った物質です。磁性体に影響を与えない蛍光物質を発見し、ベースとなる液体に均一に溶け込ませることに成功したのだそうです。

紫外光を当てていない状態の蛍光磁性流体
紫外光を当てていない状態の蛍光磁性流体

ブラックライトのような高いエネルギーを持つ光を当てると、ブラックライトの当たった部分は紅、青、緑、黄緑色と蛍光物質の色、光の当たらない部分は磁性流体特有の深い黒みが見えることによって、まるでCGで描いたような不思議な質感、独特な深みのある色合いを作り出しているんですね。

魅惑の 磁性流体 × アートの世界

≪MORPHO TOWER≫ / 児玉幸子 「Fluorescent Ferrofluid / 蛍光磁性流体」(株式会社フェローテックホールディングス 公式YouTubeより)
≪MORPHO TOWER≫ / 児玉幸子 「Fluorescent Ferrofluid / 蛍光磁性流体」(株式会社フェローテックホールディングス 公式YouTubeより)

この新素材を作品に昇華したのは、メディアアーティストの児玉幸子さん。2000年より、磁性流体を用いたアート作品を発表していますが、最初に磁性流体という素材に出会った際の印象について、以下のように語っています。

磁性流体を最初に見たとき、コンピュータグラフィックスやホログラフィーを見慣れた目にとって、その素材感というか、生命観、テクスチャーがものすごく新鮮でした。CG映像を日常的に見慣れている状態で感じるリアリティというか。それで、さらに実際の作品をビデオ映像に撮ると、実物とはまた違った別のリアリティなんですね。

私自身は、磁性流体の棘(とげ)に、生命と暴力、という相反する意味を見いだしていて、そこに惹かれています。

「科学の横道―サイエンス・マインドを探る12の対話 」佐倉 統 (中公新書、2011年)より

今までに見たこともない新しい素材は、アーティストにも新しいインスピレーションを与えるのかもしれませんね。

≪MORPHO TOWER≫ / 児玉幸子 「Fluorescent Ferrofluid / 蛍光磁性流体」(株式会社フェローテックホールディングス 公式YouTubeより)
≪MORPHO TOWER≫ / 児玉幸子 「Fluorescent Ferrofluid / 蛍光磁性流体」(株式会社フェローテックホールディングス 公式YouTubeより)

現在は、教育やアート用として紹介されている蛍光磁性流体。フェローテック社に伺うと、将来的には、ディスプレー用や、さまざまな素材・部品のクラックやピンホール検出などの用途も想定しているそうです。

産業用としてもアートとしても、今後の展開に期待してしまう新素材ですね。

製品情報

蛍光磁性流体

公式サイト https://ft-mt.co.jp/product/ferrofluid/education_art/

開発元   フェローテックマテリアルテクノロジーズ

※別途相談および免責事項
① 本4色以外にも御要望・カスタム品に対しては、ご相談ください。
② 種々条件によって発色度合いは異なるため、色の見え方は保証いたしません。
③ 日本語呼称は、一般的な系統色を示しています。

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ぷらいまり

ぷらいまり

都内でサラリーマンしながら現代アートを学び、美術館・芸術祭のボランティアガイドや、レポート執筆などをしています。年間250以上の各地の展覧会を巡り、オススメしたい展覧会・アート情報を発信。 https://note.com/plastic_girl
Twitter:@plastic_candy

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