「軍手の人形」、「タオルで作った犬」、「トイレットペーパーを入れる毛糸の人形」… 言葉で聞いてピンとこなくても、実物を一度見たら「あぁ、懐かしい!」ってなるかもしれません。
商店街の店先や公民館、道の駅などでよく見かける、身近なものを素材に、各地の「おかあさん」たちによって作られた「おかんアート」。ちょっとレトロ感もあって、でも逆に新鮮でかわいい?そんな「おかんアート」が大集合した展覧会が開催されています。
この記事では、東京都渋谷公園通りギャラリーで開催中の「Museum of Mom’s Art ニッポン国おかんアート村」をご紹介します。
![会場は 渋谷PARCO向いにある 東京都渋谷公園通りギャラリー photo by ぷらいまり](https://www.nansuka.jp/wp/wp-content/uploads/2022/02/01.jpg)
懐かしい? それとも、新鮮!? 不思議な魅力の「おかんアート」たちが大集合!
展覧会ではなんと1,000点を超える作品が展示されているそう!まずはその作品たちを見てみましょう。
「おかんの辞書に断捨離はない。」展覧会のステートメントはそんな言葉からはじまります。そう、「おかんアート」は、ひょっとしたら捨てられてしまうかもしれないような、身の周りにあるものから作られていたりします。
![photo by ぷらいまり](https://www.nansuka.jp/wp/wp-content/uploads/2022/02/02.jpg)
綿ロープをほぐして作った「ロープ犬」や、ウィスキーの瓶でつくられた「ボトル人形」、それから、タオルでつくられた「タオル犬」など、素材感を活かした作品たちが並びます。
![毛糸の犬に、タオルの犬、ボトル人形など。展示台いっぱいに作品が並びます。 photo by ぷらいまり](https://www.nansuka.jp/wp/wp-content/uploads/2022/02/03.jpg)
カラフルな「アクリルたわし」や、ニワトリ型の「なべつかみ」、軍手にポンポンをつけた「拭き掃除手袋」など、見た目も楽しく、実用的な小物たちも。
![アクリルたわしや布わらじなど。カラフルで実用的な作品も。 photo by ぷらいまり](https://www.nansuka.jp/wp/wp-content/uploads/2022/02/04.jpg)
「軍手でつくられた人形」や、「キューピー人形の手作り服」など。ちょっとゆるくてかわいい手作りキャラクターたちも並びます。
![キューピー人形の衣装も、みんなカラフルで個性的です。 photo by ぷらいまり](https://www.nansuka.jp/wp/wp-content/uploads/2022/02/05.jpg)
今回の展覧会のキュレーターのひとりで、作家・編集者・写真家である都築響一さんは、「おかんアート」を10年以上にわたって追いかけてきたといいます。
日本各地を取材旅行する中で、各地の「道の駅」などの一角に、全国どこにいってもなぜか同じ手づくりの「アクリルたわし」や「布わらじ」が売られている。それに気がついた事が「おかんアート」に注目したひとつのきっかけなのだそうです。
作品から伝わってくるのは、「つくるたのしさ」
それぞれの地域でつくられた「1点モノ」の手芸なのに、全国で同じものがつくられていて、多くの人が「懐かしい」って感じるなんて、よく考えたら不思議ですよね。
日本各地に公民館や敬老センターなどの人が集まる場所があって、そんな場所に集まっておしゃべりをしながら、こうした手芸が広められてきたといいます。
![展覧会の共同キュレーター「下町レトロに首っ丈の会」の会長・伊藤さんが集められたというキット・コレクションも。その種類の多さに驚きです。 photo by ぷらいまり](https://www.nansuka.jp/wp/wp-content/uploads/2022/02/06.jpg)
展示されている作品を見ると、「タオル犬」や「軍手人形」など、ベースが同じでも、様々なバリエーションが生まれ、作り手の方々の独自の表現が広がっています。誰にでも作れるシンプルなものだからこそ、様々な表現が広がるのかもしれませんね。
![photo by ぷらいまり](https://www.nansuka.jp/wp/wp-content/uploads/2022/02/07.jpg)
みんなで集まってつくることで、「もっとこうしたら面白いかも?」なんて、どんどん新しい表現が生まれてきたり。多様な「おかんアート」からは、そんな創意工夫の楽しさが伝わってきます。
![photo by ぷらいまり](https://www.nansuka.jp/wp/wp-content/uploads/2022/02/08.jpg)
展覧会にあわせ、「#おかんアート村」というハッシュタグで、TwitterとInstagramに投稿された画像や動画が一堂に会するweb上展覧会 「おかんアート村 クラウド・ミュージアム」 も開催されています。
投稿作品は特設サイトのほか、会場のモニターでも展示されています。会場には行けない方も、こちらを是非チェックしてみてくださいね。
![](https://www.nansuka.jp/wp/wp-content/uploads/2022/02/09.jpeg)
「おかんアート」を突き抜けた独自の表現 ーー特別展示「おかん宇宙のはぐれ星」も
今回の展覧会の1室では、都築響一さんが「これまでの取材や、今回のリサーチで出会ったアーティストたちのうち、素材から言えばおかんアートの範疇だけど、独自の突き抜けようがもはや別のゾーンに入っている、と感じられた3人」の特別展示「おかん宇宙のはぐれ星」も開催されています。
名画座・早稲田松竹の館内清掃に長年従事しながら、身近な廃材を使って組み上げられた、荻野ユキ子さんによる「ジオラマ」作品。それから、広告チラシを折ってつくる箱を、驚異的に美しく、大量に作り続ける野村知広さんによる、膨大な数の「チラシ箱」。
そして、2020年のコロナ禍の巣ごもり期間に、毎日の日記のようにつくり続けられた、嶋暎子さんによる「新聞紙バッグ」。新聞紙のバッグには写真をコラージュしたタグもつけられ、実用的なバッグでもあり、オブジェでもあるようです。
![野村知広さんによる膨大な数の「チラシ箱」(手前)と、嶋暎子さんによる「新聞紙バッグ」と大判のコラージュ作品(奥、壁面) photo by ぷらいまり](https://www.nansuka.jp/wp/wp-content/uploads/2022/02/10.jpg)
バッグとあわせて、嶋さんの大判のコラージュ作品も展示されています。若い頃に油絵を描いていたものの、入選させるために先生に手を入れられるのが嫌で、1960年代から貼り絵をはじめたという嶋さん。仕事も子育ても、家事も忙しい中、家族が寝静まった夜中のひとりの時間につくり続けていたといいます。60年以上、作品を作り続けてきたストーリーからは、「作らずにいられない」 というような感覚が伝わってきます。
![嶋暎子さんのコラージュ作品の一部。膨大な数の写真が緻密に張り込まれています。 photo by ぷらいまり](https://www.nansuka.jp/wp/wp-content/uploads/2022/02/11.jpg)
ものすごい物量とともに、「つくること」の楽しさが伝わってくるような展覧会「Museum of Mom's Art ニッポン国おかんアート村」は、2022年4月10日(日)まで、東京都渋谷公園通りギャラリーで開催されています。
展覧会情報
Museum of Mom’s Art ニッポン国おかんアート村
公式サイト https://inclusion-art.jp/archive/exhibition/2022/20220122-119.html
会期 2022年1月22日(土)~ 4月10日(日)
開館時間 11時~19時
閉館日 月曜日(ただし3月21日は開館)、3月22日(火)
会場 東京都渋谷公園通りギャラリー 展示室 1、2及び交流スペース
入場料 無料
キュレーター 都築響一+下町レトロに首っ丈の会
※特別展示「おかん宇宙のはぐれ星」は、都築響一のキュレーションとなります。