2022.03.23

記憶をつなぐ さまざまな「家族写真」のカタチ ーー浅田政志 だれかのベストアルバム (水戸芸術館現代美術ギャラリー)

最近、「家族写真」って撮りましたか?

「コロナ禍で帰省できないから撮れない」、逆に「毎日顔をあわせているから改めて撮る機会がなかなかない」 という方も多いのではないでしょうか?

身近なようで、何事もないときには改めて振り返りづらい、そんな「家族」と「記念写真」にまつわる展覧会 「浅田政志 だれかのベストアルバム」展 をご紹介します。

家族で「消防士」や「水族館のトレーナー」に? 個性的な家族写真

「浅田政志 だれかのベストアルバム」展 入り口  photo by ぷらいまり
「浅田政志 だれかのベストアルバム」展 入り口

消防士姿の4人の写真。かっこいいけれど、なんだかちょっと違和感。本物の消防士ではなく、父、母、兄、自分の4人家族を被写体に、“浅田家の未来"をテーマとした、ユニークな「家族写真」をつくりだしてきた写真家・浅田政志さんの家族写真の1枚です。

こうした家族写真をまとめた写真集「浅田家」は、”写真界の芥川賞”ともいわれる木村伊兵衛写真賞を受賞し、2020年には二宮和也さん主演の映画「浅田家!」の原案にもなりました。

「水戸芸術館現代美術ギャラリー」で開催中の「浅田政志 だれかのベストアルバム」は、浅田さんの全シリーズを総覧する最大規模の個展で、これまでの作品を浅田さん本人の言葉とともに振り返ります。

「浅田政志 だれかのベストアルバム」展 入り口  photo by ぷらいまり
「浅田政志 だれかのベストアルバム」展 入り口

展覧会会場入り口にあるのは、大けがをした3人の男性と、それをあきれたように見つめる看護師さん。浅田さんの小学生時代に本当にあった家族の思い出を再現したというこちらの写真からはじまり、写真のテーマは”思い出”から” 浅田家の未来”へと、広がっていきます。

ラーメン屋から、ヒーローショー、水族館のトレーナーまで。真剣だけれど「家族写真」だと分かると思わず笑顔になってしまう作品が並びます。会場には、ご家族のインタビューもあり、交渉から撮影まで自分たちでこなす大変さと、皆で作品を作り上げる楽しさの両面が伝わってきます。

「浅田政志 だれかのベストアルバム」 会場風景 photo by ぷらいまり
「浅田政志 だれかのベストアルバム」 会場風景

また、浅田家だけではなく、公募した全国の家族を被写体に制作した作品も展示されます。”全く知らないだれかの家族写真”なんて、普段なら目にすることがないものながら、たった1枚の写真から、その家族の背景を想像してしまいます。

「だれか」の記憶が 自分の記憶につながる体験

浅田さんは、東日本大震災の後、岩手県野田村で津波に流された写真を洗浄するボランティアの活動に携わり、その経験からアルバムを作り、残すことの大切さを伝える活動も行っています。

筆者もこの写真洗浄活動に参加したことがあるのですが、だれかのアルバムに残されていた写真を洗っていく作業は、通常なら目にするはずのないだれかの記憶をのぞき続けるような体験で、それはこの展覧会で目にしてきた家族写真につながるようにも感じられます。

『アルバムのチカラ』(2011-2021)より
『アルバムのチカラ』(2011-2021)より

岩手県野田村では、そうして洗浄した写真を返却する方法にも工夫を凝らしており、震災から11年目となる今も続く返却活動の様子も紹介されています。

たくさんある写真を見やすくまとめ、写真返却場所での「お茶会」を開催し、交流もできる場としたそうです。例え自分の写真がなくても、だれかの写真がトリガーになって思い出に話がはずむこともあるのだとか。

その写真は、名前も知らない”だれか”だけにとっての大事なものかもしれないけれど、それがどこかで自分の記憶にもつながってくるような、写真の不思議な力を感じられます。展覧会のタイトル「だれかのベストアルバム」につながるようにも思えます。

集合しなくても「家族写真」。 想って、残すことの大切さ。

最新作のシリーズ「私の家族」は、家族が集合しない新しい「家族写真」の試みです。家族がそろってカメラに向かうのではなく、ある一人の視点から捉えられた家族観を、浅田さんによる複数の写真と、参加者による文章で表しています。

「集合」していなくても、仮にもうこの世にはいない人でも、その人のことを考えて物語をつないでいくことができることが分かります。

《私の家族/外之内加奈》(2021)より
《私の家族/外之内加奈》(2021)より

家庭に家族アルバムが置かれるようになったのは、ここ2世代くらいで、今はその3世代目のパスを次世代につなげるかどうかの瀬戸際の世代だと浅田さんは言います。

穏やかに過ぎてゆく日常生活の中ではアルバムを見たいという気持ちはそれほど強く起きないですよね。どちらかというと何かがあったときに、みんなは家族アルバムをみたくなるんじゃないかと思う。

引用元 家族写真は「 」である。」 / 浅田政志 (亜紀書房)

多くの写真を撮るようになった今、写真を選んで、プリントして、整理するというのは大変な作業ですよね。でも、そうしてだれかの事を考えながら、手元に残していくことの大切さも感じられる展覧会です。

「浅田政志 だれかのベストアルバム」展は、2022年5月8日まで、水戸芸術館現代美術ギャラリーで開催されています。

展覧会情報

浅田政志  だれかのベストアルバム

公式サイト https://www.arttowermito.or.jp/gallery/lineup/article_5145.html

会期    2022 年 2 月 19 日(土)~ 5 月 8 日(日)
開場時間  10:00~18:00(入場は 17:30 まで)
会場    水戸芸術館現代美術ギャラリー
休館日   月曜日 ※ただし 3 月 21 日(月・祝)は開館、3 月 22 日(火)休館
入場料   一般 900 円、団体(20 名以上)700 円
高校生以下/ 70 歳以上、障害者手帳などをお持ちの方と付き添いの方1名は無料
※学生証、年齢のわかる身分証明書が必要です。詳しくはお問合せください。
◎一年間有効フリーパス 「年間パス」2,000 円
◎学生とシニアのための特別割引デー「First Friday」
→ 学生証をお持ちの方と 65 歳~ 69 歳の方は、毎月第一金曜日(4 月 1 日、5 月 6 日)100 円

2869

ぷらいまり

ぷらいまり

都内でサラリーマンしながら現代アートを学び、美術館・芸術祭のボランティアガイドや、レポート執筆などをしています。年間250以上の各地の展覧会を巡り、オススメしたい展覧会・アート情報を発信。 https://note.com/plastic_girl
Twitter:@plastic_candy

コメント 0件 コメントを書く

この記事にはまだコメントがありません。

related article

related article

ナンスカ

SNSアカウントでログイン