どうして「いけない」の? 素敵なファッションを楽しみながら考える「いけないのファッション展」(アクセサリーミュージアム)

ぷらいまり
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2022.10.08

鮮やかな色、個性的なデザイン… いつの時代のものでも、華やかな服やアクセサリーは見るだけで心が躍りますよね。でも、時代を経て「いけない」ものになってしまい、今は作られなくなってしまった服やアクセサリーもあるそうです。

それらのファッションは、なぜ「いけない」ものになってしまったのでしょうか?

この記事では、素敵なファッションを見て楽しみながら、時代が変わって「いけない」ものになってしまったファッションについて考える展覧会「いけないのファッション展」をご紹介します。

時代が変われば考え方も変わる、今は「いけない」ファッション

「いけない」ファッションと言ったら、何を思い浮かべますか?

現代では受け入れられづらいファッションといえば、まず「毛皮」を思い出す方も多いのではないでしょうか?もともとは防寒用の機能的なファッションであった動物の毛皮も、人工的な機能性素材が登場する中、動物愛護の観点などからあまり使われなくなっています。

「いけないのファッション展」展示風景(写真撮影:ぷらいまり)
「いけないのファッション展」展示風景(写真撮影:ぷらいまり)

一方、代用として、積極的に採用されてきた「フェイクファー」も、生分解されにくい化学繊維でつくられていることから、環境への影響が懸念されているのだそうです。一時は「良いもの」と思われていたものも、時代によって変化するんですね。

このほかにも、例えば象牙や鼈甲(ウミガメの甲羅)、モルフォチョウの羽根といった、生きものの一部を素材にした美しいアクセサリーも展示されています。現代では、乱獲の懸念から、商取引や国際取引が禁止されているそうです。

ルリカワセミやアオショウビンの羽根を使った中国の伝統工芸品(写真撮影:ぷらいまり)
ルリカワセミやアオショウビンの羽根を使った中国の伝統工芸品(写真撮影:ぷらいまり)

動物性の素材だけでなく、展示のなかには、1966年に発売された「ペーパードレス」という衣服も。紙製なので、自分でハサミを入れて簡単に調整でき、数回の着用で捨てられるほど安価なドレスだったのだとか。ところが、破れる心配や、わざと水をかけられるなどの問題で廃れたといいます。この「ペーパードレス」の背景には、大量生産・大量消費がかっこいいとされた時代があり、こうした消費文化もあわせて見直す時期なのかもしれません。でも、華やかなプリントや、軽やかにファッションを楽しめるようなパッケージは今見ても魅力的です。

ホールマーク社のペーパードレス(写真撮影:ぷらいまり)
ホールマーク社のペーパードレス(写真撮影:ぷらいまり)

このほかにも、素材やモチーフ、使われ方など、現代との価値観の違いで「いけない」と思われるようになっていった様々なファッションが展示されています。

色鮮やかだけど危険?! な、「いけない」ファッション

一方、後年から安全上の問題が判明して、現代では「いけない」ものになってしまったファッションも。

例えば、かつて使用されていたヒ素などの有毒な素材が含まれた色素。シェーレ・グリーン、バリ・グリーンといった合成無機顔料は、ヒ素がふくまれていたことで、裁縫師や縫製工場の労働者達が健康被害に苦しんだのだとか。

現在では使用できないとされている染料が使われているというハンカチーフは、目が覚めるような鮮やかな発色が魅力的。また、サフィレットグラスというガラスも、製造方法が不詳のため、ヒ素を使っているのでは無いかと噂されていますが、宝石のように、色合いに不思議な深みを感じられます。

色遣いが印象的な 20世紀前半にイギリスで製作されたプリントハンカチーフ(所蔵:ブルーミング中西株式会社)(写真撮影:ぷらいまり)
色遣いが印象的な 20世紀前半にイギリスで製作されたプリントハンカチーフ(所蔵:ブルーミング中西株式会社)(写真撮影:ぷらいまり)

また、鉛のはいった白粉(おしろい)も、江戸から明治にかけて多く使用されていたものの、白粉を多用した歌舞伎役者の方が“鉛中毒”になったことからその有毒性が広く認識され。1935年に販売中止になったとされています。

鉛入り白粉(19世紀) のパッケージ(所蔵:アダチ ヨシオ)(写真撮影:ぷらいまり)
鉛入り白粉(19世紀) のパッケージ(所蔵:アダチ ヨシオ)(写真撮影:ぷらいまり)

暗闇で美しく光る「ウランガラス」も、ウランが原子力に利用されるようになる1940年代までは、コップや花瓶、アクセサリーなどの用途に大量に製造されたそうです。現在では民間でウランを扱うことが難しいため、新しいものは極少量が生産されているのみなのだとか。

1930-40年代(推定)の、ミリアム・ハスケルというブランドのウランガラス(所蔵:渡辺 マリ)(写真撮影:ぷらいまり)
1930-40年代(推定)の、ミリアム・ハスケルというブランドのウランガラス(所蔵:渡辺 マリ)(写真撮影:ぷらいまり)

実物を見ることで、有害な素材を使ったファッションも、有毒性が分かるまで、多くの人を引きつける魅力があることが伝わってきます。

常設展示から見える、いつの時代にも 革新的で文化的な新しいファッションの世界

こちらのアクセサリーミュージアムでは、企画展示の「いけないのファッション展」のほか、常設展示でも、ビクトリア時代 (1830年代〜) から現代までのさまざまなアクセサリーを楽しむことができます。

常設展示では、コスチュームジュエリーだけでなく、時代ごとの衣服やアート作品も展示されています。(写真撮影:ぷらいまり)
常設展示では、コスチュームジュエリーだけでなく、時代ごとの衣服やアート作品も展示されています。(写真撮影:ぷらいまり)

「アクセサリーミュージアム」は、コスチュームジュエリー研究の第一人者である田中元子さんが館長をつとめる、2010年に開館したミュージアム。私的にコレクションした「コスチュームジュエリー」を、文化・風俗といった時代考証を加えて展示しています。

「コスチュームジュエリー」とは、宝石のように材質そのものに価値のある「ファインジュエリー」に対して、時代ごとの装飾のためにつくられたアクセサリーのこと。材質そのものを見せるのではなく、素材を活かし、細かく美しい細工や、当時、最先端の材料が取り入れられている様子が印象的です。

薄い象牙の板に施された繊細な彫刻(写真撮影:ぷらいまり)
薄い象牙の板に施された繊細な彫刻(写真撮影:ぷらいまり)

例えば、ビクトリア時代に象牙や真珠の細工からはじまり、かぶせガラスやファブリルグラス、七宝、セルロイドやベークライト、アクリルといった新しいプラスチック…と、新しい素材、新しい加工法を取り入れながら新しいアクセサリーがつくられていく様子をみることができます。いつの時代も、最先端で革新的・文化的なものだったのだろうと感じられます。

セルロイド製のブローチ (写真撮影:ぷらいまり)
セルロイド製のブローチ(写真撮影:ぷらいまり)

「いけないのファッション展」の展示品のなかには、現代から見ると「信じられない」と思うものもあるかもしれません。

でも、常設展示でそれぞれの時代のファッションの変遷をたどっていくと、発売された当時の、革新的で文化的な様子が想像されます。

今の時代に良いとされているものも、時代や地域の変化で変わるかもしれない…と、ファッションアイテムたちを楽しみながら、幅広い価値観についても思いを巡らせられる展覧会です。「いけないのファッション展」は、2022年12月17日(土)までです。

アクセサリーミュージアム 外観(写真撮影:ぷらいまり)
アクセサリーミュージアム 外観(写真撮影:ぷらいまり)

展覧会情報

いけないのファッション展

公式サイト http://acce-museum.main.jp/exhibition/

会期    2022年9月1日(木)~12月17日(土)
会場    アクセサリーミュージアム
開館時間  10:00-17:00(最終入場16:30)※特別イベントの場合は変更になることがあります。
休館日   月曜日、日曜日(第4・5)
夏季特別休館(8月13日~8月31日)、年末年始を含む冬季特別休館※毎月の休館日はHPをご確認ください。
観覧料   一般:1000円、学生(小学生以上):600円
障がい者手帳をお持ちの方と他1名様まで:600円/名
※オシャレ割引
以下の期間、それぞれのテーマに合ったオシャレをしてご来館いただいたかたは入館料を100円割引させていただきます。
テーマ:「自然」 2022年9月1日(木)~12月17日(土)(会期中全日)
ファーやフェイクファーは勿論、動物の模様や牙などのアイテムを身につけてご来館ください。
テーマ:「ハンカチーフ」 2022年11月1日(火)~11月6日(日)
11月3日のハンカチーフの日に合わせて、ご自慢のハンカチーフをもってご来館ください。

ぷらいまり
WRITER PROFILE

ぷらいまり

都内でサラリーマンしながら現代アートを学び、美術館・芸術祭のボランティアガイドや、レポート執筆などをしています。年間250以上の各地の展覧会を巡り、オススメしたい展覧会・アート情報を発信。 https://note.com/plastic_girl

Twitter:@plastic_candy

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