ゆかりの地で、知って・見て・巡って「スカジャン」の魅力を体験しよう ーースカジャン展(横須賀美術館)

ぷらいまり
ぷらいまり
2022.12.06

「スカジャン」ってどんなイメージがありますか?光沢のあるジャンパーに、大きく華やかな刺繍… きっと多くの人が同様なイメージを共有できる一方で、なぜ、洋服なのに虎や龍といったオリエンタルなモチーフが多いの?男性も着る洋服に大きな刺繍ってちょっと珍しい?なんて、不思議に感じられる部分もあるファッションですよね。

「スカジャン」とは、実は「横須賀ジャンパー」の略。その横須賀で、今、スカジャンに注目した展覧会が開催されています。この記事では、スカジャンの歴史や魅力に迫る展覧会「開館15周年 PRIDE OF YOKOSUKA スカジャン展」をご紹介します。

「スカジャン展」会場の横須賀美術館 外観(写真撮影:ぷらいまり)
「スカジャン展」会場の横須賀美術館 外観(写真撮影:ぷらいまり)

ルーツは「お土産」? ゆかりの地で知る「スカジャン」の歴史

展覧会の舞台は、第二次世界大戦後の横須賀から。「スカジャン」のルーツは、当時、日本全国に駐留していたアメリカ軍兵士たちに向けたお土産品にあるそうです。着物やひな人形、仏具まで、”日本らしい”ものがお土産として飛ぶように売れたといいます。

会場では、米軍向けの土産物店が並んだ「ドブ板通り」の当時の写真や、実際に販売されていたお土産品が展示されています。こうしたお土産品の中には、日本らしいモチーフや地名の刺繍を施したクッションカバーも。お土産にするのに、こうしたモチーフが人気なのは納得ですね。

《ドブ板通りの米兵向け土産物店「スーベニヤ」》 1956年9月 米公文書館蔵(横須賀市立中央図書館郷土資料室提供)
《ドブ板通りの米兵向け土産物店「スーベニヤ」》 1956年9月 米公文書館蔵(横須賀市立中央図書館郷土資料室提供)

そうした中で、アメリカ人に親しみのあるベースボールジャケットのような衣服に、お土産物として喜ばれそうなオリエンタルな刺繍を入れた「スーベニアジャケット」(お土産物のジャケット) が生まれたそうです。

《YOKOSUKA Dragon》(部分) 1946年 テーラー東洋(東洋エンタープライズ株式会社)蔵
《YOKOSUKA Dragon》(部分) 1946年 テーラー東洋(東洋エンタープライズ株式会社)蔵

生地には、光沢感や手触りがシルクに似たアセテートを使用。また、中綿の代わりに紡績工場などから出る綿くずを詰め、それが重みで下に落ちてくるのを防ぐためにキルティング加工を施したものも。「スカジャン」は「日本で生まれた唯一の洋服」とも言われているそうですが、物資の乏しい時代に、様々な工夫がなされて生まれてきたことが伺い知れます。

そして、このようなジャケットは、1970年代頃から、横須賀の「ドブ板通り」のイメージと結びつき「横須賀ジャンパー」=「スカジャン」と呼ばれるようになりました。

《Mt. Fuji, Cherry Blossoms and Eagle》 1950年代中期 テーラー東洋(東洋エンタープライズ株式会社)蔵 珍しいハンドプリント(手捺染)のスカジャンも。
《Mt. Fuji, Cherry Blossoms and Eagle》 1950年代中期 テーラー東洋(東洋エンタープライズ株式会社)蔵 珍しいハンドプリント(手捺染)のスカジャンも。

展覧会では、戦後すぐに製造された140点もの「ヴィンテージスカジャン」を展示。龍・虎・鷲のようなオリエンタルな柄や、自分の所属していた部隊や基地のエンブレム、基地のある場所の地名や、その土地のランドマークなど、様々なモチーフを見ることができます。

職人技の「横振り刺繍」の魅力

スカジャンの特徴のひとつは、大きな刺繍ですよね。この刺繍、実は「横振り刺繍」という、日本独自の技術が使われています。奈良時代から絹織物の産地として知られる群馬の桐生地域で、和装刺繍を施すために発達した技術なのだそうです。

この刺繍を施すための「横振りミシン」は、一般的なミシンと異なり、足下のペダルで速度、右膝のレバーで針の振り幅を調節しつつ、生地を手で巧みに動かし刺繍を施していくもの。長年の経験と高度な技術が必要とされるこのミシンで、1点1点、職人技で当時のスカジャンが作られてきたことが伺えます。

横振りミシンを使い、手作業で刺繍が施される様子も映像で見ることができます。(写真撮影:ぷらいまり)
横振りミシンを使い、手作業で刺繍が施される様子も映像で見ることができます。(写真撮影:ぷらいまり)

会場には多くのスカジャンが展示されているので、同じモチーフでも、ふわりとした虎の毛並みの繊細さや、糸を重ねることによってモチーフが立体的に見えたりと、ひとつひとつ異なる刺繍表現の魅力が見えてきます。

会場には多くの個性的なスカジャンが。 (写真撮影:ぷらいまり)
会場には多くの個性的なスカジャンが。 (写真撮影:ぷらいまり)

現代では、様々なブランドがスカジャンを手掛けており、Chrome HeartsやDIOR、COMME des GARCONS、Yohji Yamamotoといったブランドごとの個性的なモチーフのスカジャンも見ることができます。

DIOR PRE-FALL 2019 MEN’S COLLECTIONより 《DOIR ✕ 空山基 ボンバージャケット》(写真撮影:ぷらいまり)
DIOR PRE-FALL 2019 MEN’S COLLECTIONより 《DOIR ✕ 空山基 ボンバージャケット》(写真撮影:ぷらいまり)

さらに、スカジャンの刺繍として取り入れられた「横振り刺繍」の手法を作品に活用する現代のアーティスト4名の作品も紹介されています。

2017年に横振り刺繍と出会い、アートピースやアクセサリーを製作しているOZAKI FUMINAさんの作品は、昆虫や動植物のモチーフをカラフルな刺繍で再現。幾重にも糸を重ねた繊細なグラデーションから生まれる幻想的な雰囲気と立体感からは、横振り刺繍の表現力と魅力を体感できる作品です。

OZAKI FUMINAさんによる刺繍作品 (部分)(写真撮影:ぷらいまり)
OZAKI FUMINAさんによる刺繍作品 (部分)(写真撮影:ぷらいまり)

せっかくなら、横須賀でスカジャンを”体験して”楽しもう

これだけスカジャンの魅力を見てきたら、折角なら着てみたい!って思っちゃいますよね。会場では、展覧会に特別協力をしているテーラー東洋(東洋エンタープライズ株式会社)が提供するスカジャンを着て撮影できるフォトスポットも用意されているんです。

「スカジャン展」会場のフォトスポット(写真撮影:ぷらいまり)
「スカジャン展」会場のフォトスポット(写真撮影:ぷらいまり)

両面に繊細な刺繍が施されたリバーシブルのスカジャンや、ふかふかと暖かく着心地が良いスカジャンなど、見るだけでは気づかない魅力も手に取って体験できますよ。

また、現在も多くのスカジャンのお店があり、その魅力の発信を行っている「ドブ板通り」は、横須賀美術館からバスで1本(40分程度)。展覧会と「ドブ板通り」をあわせて巡ることができるお得な「スペシャルバスチケット」も販売されています。サテライト展示やアメリカ的な雰囲気も、ぜひ合わせて体感してみてくださいね。

ドブ板通りには、横振り刺繍をモチーフにしたフラッグも。(写真撮影:ぷらいまり)
ドブ板通りには、横振り刺繍をモチーフにしたフラッグも。(写真撮影:ぷらいまり)

スカジャンの歴史と魅力に触れられる「開館15周年 PRIDE OF YOKOSUKA スカジャン展」。会場では年齢や性別を問わず、素敵にスカジャンを着こなした方々が多く見られ、多くの人に愛されているスカジャンの魅力も感じられる展示でした。ぜひ、会場でその魅力を体験してみてください。

展覧会情報

開館15周年 PRIDE OF YOKOSUKA スカジャン展
公式サイト https://www.yokosuka-moa.jp/
会場    横須賀美術館
会期    2022年11月19日(土)~12月25日(日)
開館時間  10:00~18:00
休館日   12月5日(月)
観覧料   一般1,300円、高校生・大学生・65歳以上 1,100円、中学生以下無料
*所蔵品展、谷内六郎館も観覧できます。
*高校生(市内在住または在学に限る)は無料
*身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方と 付添1名様は無料

※スカジャン割でお得に観覧!
スカジャン着用でご来館の方は観覧料が2割引となります。割引をご希望の方は、チケットカウンターでお申し出ください。
一般 1,300円→1,040円、高校生・大学生・65歳以上 1,100円→880円 でご覧になることができます。

 

ぷらいまり
WRITER PROFILE

ぷらいまり

都内でサラリーマンしながら現代アートを学び、美術館・芸術祭のボランティアガイドや、レポート執筆などをしています。年間250以上の各地の展覧会を巡り、オススメしたい展覧会・アート情報を発信。 https://note.com/plastic_girl

Twitter:@plastic_candy

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