みんなに愛される”拍手ロボット”はどうやって生まれたの? 「ビッグクラッピー」開発者 髙橋征資さんインタビュー

ぷらいまり
ぷらいまり
2023.01.26

ころんと丸くて赤いボディに、ちょっととぼけたような親しみやすい顔、小気味よいトークとリズミカルな拍手で盛り上げてくれるロボット「ビッグクラッピー」。拍手しながらお客さんを呼び込んだり、歌を歌ったりする様子を、街中やSNSで目にしたことがある方も多いのではないでしょうか?

イベントに登場すれば、絶え間なく子どもたちに囲まれ、大人も思わず見入ってしまう大人気のロボットですが、そんな「ビッグクラッピー」はどのように生まれ、なぜ多くの人を引きつけるのでしょうか?開発者であり、バイバイワールド株式会社代表取締役で、クリエイターの髙橋 征資(たかはし まさと)さんにお話を伺いました。

開発者の髙橋 征資さん (ビッグクラッピーの試作品とともに)(写真撮影:ぷらいまり)
開発者の髙橋 征資さん (ビッグクラッピーの試作品とともに)(写真撮影:ぷらいまり)

世界ではじめて?!拍手に着目したロボットはどうやって生まれたの?

「ビッグクラッピー」は、やわらかい手でパチパチ拍手をしたり、通りかかった人に元気に声を掛けたりして盛り上げる”拍手ロボット”。パチパチと心地よい拍手の音と、口をパクパクさせてコミカルにしゃべったり歌ったりする様子がユニークで、一度見たら忘れられない、魅力的なロボットです。

”拍手”は誰もが知っているシンプルな動作ながら、”拍手をするロボット”って、他に類を見ないですよね。髙橋さんは、どうして”拍手”に注目するようになったのでしょうか?

大学時代に、柔らかいインターフェースを研究していたのが発端です。そこからマシンやロボットに発展したいと思ったときに、柔らかい特性がダイレクトに表現に反映され、様々な人に伝わるものは何かと考え、拍手を思いつきました。

”拍手”は、すばやくすれば ”賞賛” や ”感動” を表現できるし、ゆったりとすれば ”けだるい感じ” を表せたりと、手を合わせるという単純な動作なのに色々な意味が持たせられるんですよね。手法はとてもシンプルなのに、表現の広がりがあるという点でピンときました。

そうして、学生時代に高橋さんが制作したのは「音手(おんず) 初号機」という手だけのシュールなロボット。自身の手を型取りしてつくったもので、手はウレタンゴム、腕はウレタンスポンジでつくられています。理想の拍手音を再現するために多くの試作が行われてきたそうです。

「音手(おんず)初号機」(2010)(写真撮影:ぷらいまり)
「音手(おんず)初号機」(2010)(写真撮影:ぷらいまり)

人間の手に近づけることにはこだわっています。「ビッグクラッピー」の手も、三井化学さんと共同開発した手のモデルを何パターンも制作して、一番人間の拍手に近い音響特性になるものを採用しました。

そのユニークなデザインに注目してしまいがちな「ビッグクラッピー」も、思わず気になってしまう根幹にあるのは”リアルな拍手”なんですね。

「ビッグクラッピー」では、”ロボット”に目が行ってしまうよりも先に、”手を叩いている”ことに対して興味をひけるようにと考えています。音は視界よりもより遠くまで届きますよね。拍手の音で遠くから人を引き寄せて、なんだろう?と近づいたときに初めてロボットに気づいて、そのキャラクターのペースに巻き込んでいくことを意識しています。

手だけのシュールなロボットから、多くの人に愛されるキャラクターへ

「音手」からスタートした「拍手ロボット」。その変遷を拝見すると、最初はリアルな手だけで少し不気味にも感じてしまいますが、徐々に丸みを帯びたボディーや、親しみやすい顔、キャラクターらしくデフォルメした手へと変化していきます。なぜキャラクターのように親しみやすく変化していったのでしょうか?

歴代の「拍手ロボット」たち(写真撮影:髙橋 征資)
歴代の「拍手ロボット」たち (写真撮影:髙橋 征資)

僕はもともと子どもの頃には、お笑いや漫画といった楽しいものが好きな明るい少年だったんですが、大学時代になると、将来のことで悩んで行き詰まって暗くなってしまったんです。研究には熱中していて大学院まで進学しましたが、大学院を出ても定職も無く… 逆に吹っ切れて、もともと好きだったポップな表現をもう一度やってみたいと考えるようになりました。

そこで、おもちゃをつくろうと思ったんですが、最初は全然明るいおもちゃにならなくて「音手」を小型化してみたものの、見た目はシュールだし、重いし、こんなもの誰も買わないな、と。量産のことも考慮されていないし、今振り返ってみると無謀なチャレンジに見えますね。

「拍手玩具試作 ver.1」(2012)。最初は「音手」を小型にしたものでした。(写真撮影:ぷらいまり)
「拍手玩具試作 ver.1」(2012)。最初は「音手」を小型にしたものでした。(写真撮影:ぷらいまり)

子どももお年寄りも理解できて、シンプルだけど誰もが楽しめるおもちゃにしないといけないなと思って方向転換したんですが、その方向性が自分にはしっくりと来きました。そこからはポジティブに色々なものをつくれるようになっていったんです。

「拍手玩具試作 ver.2」(2012) 親しみやすいキャラクターの外観へと変化していきました。(写真撮影:ぷらいまり)
「拍手玩具試作 ver.2」(2012) 親しみやすいキャラクターの外観へと変化していきました。(写真撮影:ぷらいまり)

こうして、お腹のレバーを引くとパチッと拍手をするユニークなおもちゃ「パチパチクラッピー」が誕生しました。素材が変わったり、光る機能が加わったりしながら、2023年現在、累計15万個以上販売されています。

その後の「ビッグクラッピー」にもつながる気負わない雰囲気の外観は、ここから始まったんですね。

現在販売されている「パチパチクラッピー」(2021〜)。初代から8年経ってようやく納得のいく製品になったそうです。(写真撮影:ぷらいまり)
現在販売されている「パチパチクラッピー」(2021〜)。初代から8年経ってようやく納得のいく製品になったそうです。(写真撮影:ぷらいまり)

キャラクターといっても、何を考えているのか分からない表情ですよね。媚びを売る感じではなく、”無表情なのになんか面白い” みたいな空気感を意識しました。

ロボットなのに感じられる温かみ。ビッグクラッピーが愛される理由とは?

シュールな「音手」から、ユニークなおもちゃ「パチパチクラッピー」や、ロボット「ビッグクラッピー」へと変化していった”拍手マシーン”。親しみやすい外観も魅力的ですが、「ビッグクラッピー」が多くの人に愛されるもうひとつの魅力は、”おしゃべり” などのキャラクター(性格)です。

ロボットなのに、なんだか温かみも感じられるキャラクターはどのように出来上がったのでしょう?

”おしゃべり” も魅力的な「ビッグクラッピー」(写真撮影:ぷらいまり)
”おしゃべり” も魅力的な「ビッグクラッピー」(写真撮影:ぷらいまり)

僕は以前に他社のロボットアプリケーションの開発に携わっていて、その時の経験が生きています。例えば、お笑い芸人が人を笑わせようとしたら、気を利かせてひねったことを言わないといけないですよね。でも、ロボットって、あえて面白いことを話さなくても、ワードセンスとノリで不思議と面白くなるんです。

なので、ビッグクラッピーには練りに練られたお笑いネタはしゃべらせません。例えば、落ちのある話って何度も聞くと飽きちゃいますよね。ビッグクラッピーでは、面白い ”内容” よりも、イントネーションやしゃべり方、ノリで面白い雰囲気をつくって、なるべく何度聞いても飽きないようにしています。ロボットは普通のことを大声で言うのが面白いんです。

あえてネタやギャグをしゃべらないことが逆に面白さや親しみやすさにつながっているなんて、ちょっと意外ですね。

ガチャガチャの呼び込みをしていたビッグクラッピー。確かに、何度同じ事を言っていても飽きずに見てしまいます。(写真撮影:ぷらいまり)
ガチャガチャの呼び込みをしていたビッグクラッピー。確かに、何度同じ事を言っていても飽きずに見てしまいます。(写真撮影:ぷらいまり)

それから、子どもとお年寄りが楽しめることは意識していて、マニアックな内容ではなく、みんなが理解出来ることを話すようにしています。例えば飲み会のコールみたいなものは飲み会で大人だけが集まる場であれば積極的にやっていきますが、普段のお店やイベントではあまりやりません。子どもやお年寄りが敬遠してしまうものはなるべく外しています。

確かに、「ビッグクラッピー」のおしゃべりは、嫌みがなくて心地よく何度でも聞ける一方で、しゃべり方や動きの面白さで記憶にはしっかりと残ります。おもちゃ開発の当初に初期に上手くいかず、 ”子どももお年寄りも、誰もが楽しめるものを” と考えるようになった経験は、「ビッグクラッピー」にもつながっているんですね。

トークイベントのMCも務める「ビッグクラッピー」(写真撮影:ぷらいまり)
トークイベントのMCも務める「ビッグクラッピー」(写真撮影:ぷらいまり)

また、ファンタジーでなく、実在してそこにいるロボットだというのも重要なんです。だから、ビッグクラッピーには『うどん大好きでーす』とはしゃべらせません。ロボットは食べないから。でも『みなさん、なんだか美味しそうにうどん食べてますねー』とは言わせます。常にロボット視点での発言を意識してキャラクターを作っています。

「ビッグクラッピー」は、あくまでも”ロボット”として、だけど本気で、見る人を元気づけたり応援できたらと考えています。

歴代の拍手製品と髙橋さん(写真撮影:ぷらいまり)
歴代の拍手製品と髙橋さん(写真撮影:ぷらいまり)

「ビッグクラッピー」を見ていると、表情は変化しないのにも関わらず、不思議と人格のようなものや、温かみを感じられてきます。それは、”拍手”という、単純だけれど様々な表情を表現できる動作に加え、多くの人に寄り添って丁寧に育てられたキャラクターによる部分も大きいことが伝わってきました。

”拍手”に特化するという個性的なロボットでありながら、多くの人に愛され、人の生活に溶け込むロボット「ビッグクラッピー」。今後も様々な場所で出会い、その拍手とおしゃべりを聞くのが楽しみですね。

クラッピーたちをもっと身近に楽しめる! 最新の作品たち

「ビッグクラッピー」は現在200台ほど生産され、百貨店や家電量販店、イベントなどで活躍しています。また、「パチパチクラッピー」は、オンラインショップなどでも購入可能です。

そして、2022年末には、新しいクラッピーの仲間がカプセルトイとして登場しました。

ミニマムクラッピー 300円 (全4色)

写真撮影:ぷらいまり
写真撮影:ぷらいまり

レバーを握ると手と口が開き、パチっと拍手をするオモチャ。高さ7cmほどのとっても小さなクラッピーながら、弾くように手を離すと、大きくて良い音が聞こえます。カプセルから出てきたら、手をはめ込むだけの簡単組み立てです。

ミニチュアビッグクラッピー パチパチゼンマイコレクション 500円 (全4色)

写真撮影:ぷらいまり
写真撮影:ぷらいまり

こちらはゼンマイ式で、パチパチ拍手するアクションと、パクパクする口のアクションが楽しめるおもちゃです。カプセルトイのカプセルがそのままボディになっており、その中に組み立てパーツが収まっているというつくりも面白いです。

また、2023年夏頃には、「ビッグクラッピー」よりも小型の「ベイビークラッピー」も発売予定とのこと。こんなクラッピーたちをおうちにお迎えして、拍手で元気をもらいませんか?

2023年に発売予定の「ベイビークラッピー」(写真撮影:ぷらいまり)
2023年に発売予定の「ベイビークラッピー」(写真撮影:ぷらいまり)

企業情報

バイバイワールド株式会社
バイバイワールドはロボットと玩具の企画開発を行うエンタメーカーです。

公式サイト       https://www.byebyeworld.co.jp/
公式オンラインショップ https://byebyeworld.theshop.jp/

ぷらいまり
WRITER PROFILE

ぷらいまり

都内でサラリーマンしながら現代アートを学び、美術館・芸術祭のボランティアガイドや、レポート執筆などをしています。年間250以上の各地の展覧会を巡り、オススメしたい展覧会・アート情報を発信。 https://note.com/plastic_girl

Twitter:@plastic_candy

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