ジュエリーから自然標本まで、博物館で出会う「鳥」の魅力|インターメディアテク開館十周年記念特別展示『極楽鳥』

ぷらいまり
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2023.02.23

「花鳥風月」という言葉のように、自然の美しい風景のなかのひとつとしても挙げられる「鳥」。美しい鳥たちは、ひとが創るものにもインスピレーションを与えてきました。そんな鳥に対して、科学的な視点と美的な視点で注目した展覧会が、東京駅から直結の商業施設KITTEの中にある、学術文化総合ミュージアム「インターメディアテク」で開催されています。

この記事では、鳥をモチーフにしたジュエリーの歴史的名品と、そのモチーフとなった鳥の貴重な鳥類剥製標本やスケッチを紹介し、宝飾品と本物の鳥が競演する展覧会「インターメディアテク開館十周年記念特別展示『極楽鳥』」をご紹介します。

「インターメディアテク開館十周年記念特別展示『極楽鳥』」展示室の様子(写真撮影:ぷらいまり)
「インターメディアテク開館十周年記念特別展示『極楽鳥』」展示室の様子(写真撮影:ぷらいまり)

緻密な装飾に釘付け… 鳥をモチーフにした魅惑のジュエリーたち

今回の展覧会で展示される宝飾品は、日本で初公開となる海外のプライベート・コレクションの、鳥をモチーフとしたジュエリー約100点。19世紀半ばから現代に亘る、メゾンや作家による選りすぐりの作品たちです。

ペンダントやブローチといったこれらの作品は、いずれも数cmほどのサイズ。小さなジュエリーの中で、金属や宝石が緻密に加工された技が見えます。鳥といえば、軽く、ふんわりとしたイメージの動物ですが、こういった要素をどうやって硬い金属や宝石を使って表現するのか、そんな創造性も見えてきます。

ヴァン クリーフ&アーベル、鳥のクリップ(ヴァン クリーフ&アーペル所蔵) 細かい羽根の様子までもがイエローゴールドの彫金で表現されています。(写真撮影:ぷらいまり)
ヴァン クリーフ&アーベル、鳥のクリップ(ヴァン クリーフ&アーペル所蔵)
細かい羽根の様子までもがイエローゴールドの彫金で表現されています。(写真撮影:ぷらいまり)

展示室には、まず、フクロウやスズメといった、実在する鳥たちをモチーフにしたジュエリーが。例えば、フランスの宝石商ギュスターヴ・ボーグランが制作した孔雀(クジャク)のブローチは、パールで表現した卵を抱き、ダイヤモンド、サファイア、ルビーなどの色鮮やかな宝石で羽根の模様が表現されています。

ギュスターヴ・ボーグラン、孔雀のブローチ(個人蔵) (写真撮影:ぷらいまり)
ギュスターヴ・ボーグラン、孔雀のブローチ(個人蔵)(写真撮影:ぷらいまり)

同じクジャクのモチーフでも、様々な宝石を高密度に並べて美しい羽根の色・模様を表現したものから、細い金属に宝石をのせてふんわりと華奢な羽根の様子を表現したものなど、さまざまな方法で鳥の美しさの表現が試みられているのが分かります。

(左) 孔雀のブローチ、作者未詳(個人蔵)、(右)孔雀のブローチ、作者未詳(個人蔵) 同じ孔雀のモチーフでも、様々な方法で美しい羽根が表現されています。(写真撮影:ぷらいまり)
(左) 孔雀のブローチ、作者未詳(個人蔵)、(右)孔雀のブローチ、作者未詳(個人蔵)
同じ孔雀のモチーフでも、様々な方法で美しい羽根が表現されています。(写真撮影:ぷらいまり)

実在する鳥だけではなく、鳥のイメージを抽出した、ファンタジーの鳥をモチーフにした作品たちも。20世紀の宝飾作家ピエール・ステルレによる作品は、色彩豊かな大きな石を胴体に見立てたものに、鳥の羽根や尾、くちばしなどをゴールドや宝石で表現したもの。実在しない鳥ながら、羽根の軽やかさや飛翔のスピード感といった鳥の魅力のエッセンスが表現されているようです。

ピエール・ステルレ、鳥のブローチ(個人蔵)(写真撮影:ぷらいまり)
ピエール・ステルレ、鳥のブローチ(個人蔵)(写真撮影:ぷらいまり)

身近な鳥から珍しい鳥まで 滅多に見られない貴重な自然標本の数々

こうした宝飾品とあわせ、今回の展覧会では、日本唯一の鳥類専門の研究所「山階鳥類研究所」の所有する本物の鳥の剥製展示も行われています。これらの剥製は、これまで劣化を防ぐため、会場である「インターメディアテク」の収蔵展示室に収めたまま展示されていました。今回の展示は、その一部を展示フロアで間近に見ることができる貴重な機会です。

カラスのような、私たちの身近で見られる鳥たちをはじめ、なかなか目にすることのない、鮮やかな羽根の色を持った海外の鳥や、ふわふわと大きな羽根の形が美しい鳥たちも。

左から、コウライウグイス、ルリコノハドリ、ツバメ(東京大学総合研究博物館研究部所蔵)(写真撮影:ぷらいまり)
左から、コウライウグイス、ルリコノハドリ、ツバメ(東京大学総合研究博物館研究部所蔵)(写真撮影:ぷらいまり)

展示の中には、世界最小の鳥として有名な「ハチドリ」11種の標本をケースに収められたジオラマも。飛んでいる様子や抱卵している様子まで、ケースの中で様々な様子が再現され、まるで立体的な図鑑のようです。こうしたジオラマは、かつて、その地域の生物系を一覧できるように多用され、流行した19世紀のフランスでは、こうしたインスタレーションは「鳥の楽園」と呼ばれていたのだとか。

  ハチドリ類ジオラマ(東京大学総合研究博物館寄託)(写真撮影:ぷらいまり)
ハチドリ類ジオラマ(東京大学総合研究博物館寄託)(写真撮影:ぷらいまり)

標本とあわせて解説やコラムも紹介されており、生態系から人との関わり方まで、その鳥の特徴やエピソードも知ることができます。

「極楽鳥」ってどんな鳥? 人と鳥とのつながりを考える

こうして展示された鳥たちの中には、人と深い関わりを持った鳥たちもいるようです。

例えば、ニワトリは、採卵用、食肉用、愛玩用など、人の手で数々の品種が生み出されています。特別天然記念物に指定されている「尾長鶏」は、観賞用に尾羽根の少なくとも一部が換羽せずに伸び続けるもので、展示中のものは3Mを超えるのだとか。

オナガドリ(東京大学総合研究博物館研究部所蔵)(写真撮影:ぷらいまり)
オナガドリ(東京大学総合研究博物館研究部所蔵)(写真撮影:ぷらいまり)

また、身近な鳥であるツバメは、現在、人がつくった建造物にのみ営巣し、その意味では極端に人間に依存した鳥なんですね。

そして、展示の最後にあるのは、展覧会のタイトルにもなっている「極楽鳥」。こちらは、フウチョウという鳥の別名です。

オオフウチョウ(東京大学総合研究博物館研究部所蔵)(写真撮影:ぷらいまり)
オオフウチョウ(東京大学総合研究博物館研究部所蔵)(写真撮影:ぷらいまり)

幸せそうな名前で、ふわふわとした羽根が美しい鳥ですが、過去には美しさ故に乱獲にも遭ったのだとか。現在では産地からの輸出と原住民以外の狩猟も禁止されていますが、「人がパラダイスに到達したとき、鳥にとっての地獄が口を開けた」という解説文からは、人と鳥との関わり方を考えさせられますね。

河辺華挙『鳥類写生図』より(写真撮影:ぷらいまり)
河辺華挙『鳥類写生図』より(写真撮影:ぷらいまり)

こうした標本や宝飾品のほかに、スケッチなどの絵画も展示も。また、会場には、オーストラリア、ケアンズで録音された野鳥の声が流れ、様々な角度から鳥の魅力に触れられる展覧会です。私たちにとって身近な存在である鳥たちを、改めてじっくりと観てみませんか?

展覧会情報

インターメディアテク開館十周年記念特別展示『極楽鳥』

展示紹介ページ http://www.intermediatheque.jp/ja/schedule/view/id/IMT0257

会 期  2023年1月20日(金)- 5月7日(日)
時 間  11:00−18:00(金・土曜日は20:00まで開館)※時間は変更する場合があります。
休館日  月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日休館)、2月20日―27日、その他館が定める日
会 場  インターメディアテク3階
主催   東京大学総合研究博物館+レコール ジュエリーと宝飾芸術の学校
協力   山階鳥類研究所
協賛   ヴァン クリーフ&アーペル
企画   東京大学総合研究博物館インターメディアテク寄付研究部門+東京大学総合研究博物館国際デザイン学寄付研究部門
入館料  無料
住 所  東京都千代田区丸の内2-7-2 KITTE2・3F
アクセス JR東京駅丸の内南口から徒歩約1分、東京メトロ丸ノ内線東京駅地下道より直結、千代田線二重橋前駅(4番出口)より徒歩約2分

ぷらいまり
WRITER PROFILE

ぷらいまり

都内でサラリーマンしながら現代アートを学び、美術館・芸術祭のボランティアガイドや、レポート執筆などをしています。年間250以上の各地の展覧会を巡り、オススメしたい展覧会・アート情報を発信。 https://note.com/plastic_girl

Twitter:@plastic_candy

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