ころころの子犬から迫力ある浮世絵まで。「描く」と分かる 江戸絵画の魅力。|春の江戸絵画まつり 江戸絵画お絵かき教室(府中市美術館)

ぷらいまり
ぷらいまり
2023.04.07

みなさん「お絵かき」って好きですか?小さい頃には楽しかったはずなのに、大人になるにつれ、「絵なんて描けない」なんて苦手意識を持ってしまった方もいらっしゃるのではないでしょうか?

筆者自身も「絵を見るのは楽しいけれど、描くのは難しいなぁ…」なんて思っていましたが、そんな考え方を少し変えてくれるかも知れない、「描く」ことに着目しながら作品を楽しむ展覧会が開催されています。この記事では、東京都の府中市美術館で開催中の「春の江戸絵画まつり 江戸絵画お絵かき教室」をご紹介します。

府中市美術館 エントランス(写真撮影:ぷらいまり)
府中市美術館 エントランス(写真撮影:ぷらいまり)

カワイイ動物たちはどう描くの?日本美術の「描く」を知る展覧会

府中市美術館は江戸絵画に注目した「春の江戸絵画まつり」を毎年開催しており、今年でなんと20回目。今回は「描く」ことに着目した初めての試みだそうです。

展覧会ではまず、江戸絵画の主な題材である「山水」「人物」「花」「動物」という4つのテーマで描き方を紹介しています。なかでも、「動物」の作品は、こちらを見つめる視線に心をつかまれる長沢蘆雪による「雀」や、ころころと愛らしい円山応挙による「子犬」のモチーフなど、かわいらしい作品たちに一瞬で心をわしづかみにされてしまいますね。

長沢蘆雪《雀図扇面》
長沢蘆雪《雀図扇面》

そんな絵画を描くためには、まずは「見てみよう」と”お手本”である作品がどのように描かれているかをじっくりと観察。そして、「描いてみよう」とその描き方のコツが解説されています。イラストレーター長田結花さんによって具体的な描き方のコツが紹介されているので、思わず自分でもチャレンジしてみたくなってくるのではないでしょうか?

美術の授業で習ってきた西洋式のデッサンや、写真のように描く方法とは全く違った表現方法ですが、動物たちの特徴や魅力を捉えた描き方には、”本物そっくり”の絵とは全く違った味わいが感じられます。

「描く」方法を知ることで際立つ 作品の魅力

モチーフの描き方と共に気になるのが、江戸絵画ならではの「道具」や「技法」。使っている絵の具や支持体、表具なども、なかなか日常で目にする機会もなく、解説を読んでも想像しづらかったりしますよね。この展覧会では、そうした「道具」や「技法」を知ることもできるんです。

さらに、この展覧会ならではの面白さは、そうした「道具」や「技法」の解説も、まさにそれらがつかわれた「本物」の作品を目の前に体感できるところ。

例えば、作品を描く主な支持体である「絹」と「紙」の違いも、「絹は滑らかに描ける」「紙はかすれや筆の勢いを見せるのに適している」と言葉でイメージするだけではなく、実際の作品を並べて見ると、その違いが一目瞭然。それぞれの特徴を活かして描かれた作品の魅力も際立って見えます。

円山応挙《狗子図屏風》(部分)<br data-src= こちらも紙に描かれた作品。紙による”かすれ”を活かして毛が表現されていることが分かります。">
円山応挙《狗子図屏風》(部分)
こちらも紙に描かれた作品。紙による”かすれ”を活かして毛が表現されていることが分かります。

さらに、「付け立て」「にじみ・たらし込み」「筋目描き」のような江戸絵画ならではの技法も、伊藤若冲らの実際の作品を目の前にしながら、解説だけでなく、実際に描く過程を示した見本や映像も使って紹介。

展覧会には、円山応挙、長沢蘆雪、伊藤若冲といった、だれもがその名前を聞いたことがあるような、江戸絵画の名品が大集合しています。「本物」の作品を目の前にして解説を読むからこそ、その絵画を魅力的なものにしている技法をよく理解でき、より興味深く作品を楽しむこともできますね。

このほか、江戸時代の画家たちが絵を学んできた方法や、江戸絵画に学ぶ「モチーフから構図、色の選び方」など、これから絵を「観る」ときにも「描く」ときにもヒントになりそうな作品と解説が盛りだくさんです。

自分でも描いてみたい!と思ったら… お絵かき体験コーナーも大充実!

こうして、作品とその「描き方」を見ていたら、なんだか「自分で描いてみたい…!」なんて思えてきませんか?

展覧会の最後には、なんとお絵かきを体験できるコーナーもあるんです。展示で見てきた「蘆雪の雀」や「応挙の子犬」のようなモチーフの描き方から、伊藤若冲の「筋目描き」のような技法まで。さらに、それぞれを描くのに適した筆ペンやカラーペン、紙などの画材も用意されています。

イラスト 長田結花
イラスト 長田結花

筆者も実際に描いてみましたが…簡単そうに見えて、やはり難しい…!シンプルな作品も、丹念な観察や熟練の技による成果なのだと納得するのとともに、上手くは描けなくても、描くのって楽しい!と感じられました。

また、一筆箋に見てきた絵画のモチーフのスタンプが押せるコーナーも用意されていました。好きなモチーフを組み合わせることができるので、「自分で描くのはちょっとハードルが高いな…」と思う場合でも、自分だけのオリジナルの一筆箋が気軽に作れるのは嬉しいですね。

まとめ

今回の展覧会の入り口には、長沢蘆雪の《唐子遊図屏風》という大判の作品が掲げられていました。数人の子どもたちが絵を描いている様子を描いた作品で、大きな紙に向かって、子どもたちが、それぞれの楽しみ方で絵を描いている様子が見受けられます。

長沢蘆雪《唐子遊図屏風》(部分)
長沢蘆雪《唐子遊図屏風》(部分)

大人になるにつれ、「絵を見るのは楽しいけれど、自分で描くのは難しいな…」なんて感じることもありますが、この展覧会を見ていると、子どものように描く楽しさを取り戻せるかもしれません。

「春の江戸絵画まつり 江戸絵画お絵かき教室」展は、府中市美術館で2023年5月7日まで開催されています。

展覧会情報

春の江戸絵画まつり 江戸絵画お絵かき教室

公式サイト https://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/tenrankai/kikakuten/2022_EDO_oekaki_exhibition.html
会期   2023年3月11日(土曜日)~5月7日(日曜日)
前期   3月11日(日曜日)~4月9日(日曜日)
後期   4月11日(日曜日)~5月7日(日曜日)
※全作品ではありませんが、大幅な作品の展示替えを行います。
休館日  月曜日(5月1日は開館)
開館時間 午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
会場   府中市美術館2階 企画展示室
観覧料  一般 700円(560円)、高校・大学生 350円(280円)、小・中学生 150円(120円)
注記:お支払いは現金のみとなります。
注記:(  )内は20名以上の団体料金。
注記:未就学児および障害者手帳等をお持ちの方は無料。
注記:府中市内の小中学生は「府中っ子学びのパスポート」提示で無料。
注記:「江戸絵画お絵かき教室」展観覧料金で常設展もご覧いただけます。
注記:2度目は半額!
観覧券をお求め頂くと、本展1回限り有効の観覧券半額割引券が付いてきます。
注記:最新の開館状況については、当館ウェブサイト、またはハローダイヤル等にてご確認ください。

ぷらいまり
WRITER PROFILE

ぷらいまり

都内でサラリーマンしながら現代アートを学び、美術館・芸術祭のボランティアガイドや、レポート執筆などをしています。年間250以上の各地の展覧会を巡り、オススメしたい展覧会・アート情報を発信。 https://note.com/plastic_girl

Twitter:@plastic_candy

FOLLOW US

RELATED ARTICL

関連記事

SPECIAL

特集

HOT WORDS

CATEGORY

カテゴリ

何気ない毎日に創造性のエッセンスをもたらす日常の「なにそれ?」を集めました。
ちょっとしたアクションで少しだけ視野を広げてみると、新たな発見って実は身近にあるのかも。