「大正ロマン」な空間で 近代文学の世界に没入…!|大正ロマン×百段階段 ~文豪が誘うノスタルジックの世界~(ホテル雅叙園東京 東京都指定有形文化財「百段階段」)

ぷらいまり
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2023.04.21

令和のいま、「平成レトロ」が話題になったり、「昭和レトロ」なテーマパークが登場したりと、少し前の時代の時代にノスタルジーな魅力を感じることってありますよね。時代ごとに違った魅力がある中、大正期の和洋折衷ハイカラな文化は「大正ロマン」とも呼ばれ、おしゃれなイメージもあります。

そんな「大正ロマン」を、同時代の文学作品の世界観を表現した空間で感じることができる展覧会「大正ロマン×百段階段~文豪が誘うノスタルジックの世界~」が都内で開催されています。同時代の建物を舞台に展開される展覧会の様子を覗いてみましょう。

階段を昇って、大正ロマンの世界へ…
階段を昇って、大正ロマンの世界へ…

建築、イラスト、立体展示、音楽のコラボレーションで近代文学の世界観を表現

展覧会の舞台は、目黒にあるホテル雅叙園東京内の東京都指定有形文化財 「百段階段」。それぞれ違った装飾の施された7つの部屋が、階段廊下で繋がれた豪華絢爛なこの建築は、今から約90年前の昭和10年(1935年)に完成したもの。今回は、このうちの6つの部屋で、それぞれ異なる近代文学の作品世界が表現されているんです。

東京都指定有形文化財 「百段階段」。7つの部屋が階段廊下で繋がれています。 photo by ぷらいまり
東京都指定有形文化財 「百段階段」。7つの部屋が階段廊下で繋がれています。(写真撮影:ぷらいまり)

まず、1部屋を覗いて見ましょう。階段を上がって 1部屋目の「十畝の間」は、横山大観らと並ぶ近代日本画壇の大家である荒木十畝(あらきじっぽ)による天井画に彩られた部屋。

この部屋の中では、萩原朔太郎による小説「猫町」の世界が展開されています。

「十畝の間」 萩原 朔太郎+しきみ 『猫町 』展示風景 photo by ぷらいまり
「十畝の間」 萩原 朔太郎+しきみ 『猫町 』展示風景(写真撮影:ぷらいまり)

「温泉に逗留していた主人公がある時迷子になり、見知らぬ町にたどり着くが、そこには不思議な風景が広がっていた…」というあらすじの物語ですが、部屋の中には、振り子時計に、モダンなソファ、蓄音機など、「猫町」の物語に登場する美しい町をイメージさせるノスタルジックな光景が広がります。小説「猫町」が書かれたのは昭和10年。まさにこの建物がつくられたのと同じ時代なんですね。

「十畝の間」 萩原 朔太郎+しきみ 『猫町 』展示風景 photo by ぷらいまり
「十畝の間」 萩原 朔太郎+しきみ 『猫町 』展示風景(写真撮影:ぷらいまり)

さらに、物語をイメージさせる”汽車の音”や”猫の声”が混ざった音楽も。これは、音楽家・ヨダタケシさんにより、この展覧会のためにつくられた6つの部屋それぞれのオリジナルの音楽。振り子時計の音と音楽も混ざり合い、さらに小説の世界に没入していきます。

部屋を進むと、後半は雰囲気が一転し、物語に登場する「猫町」を想起させるかわいらしいたくさんの猫たちがお出迎え!アーティスト・小澤康麿さんによる立体作品です。

「十畝の間」 小澤康麿作品 photo by ぷらいまり
「十畝の間」 小澤康麿作品(写真撮影:ぷらいまり)

文学作品のストーリーを知らなくても楽しめる仕掛けがたくさん

「でも、近代文学作品って読んだことがないからなぁ…」という場合でも大丈夫。

今回の展覧会は、「文豪の名作」と「人気イラストレーターによる書き下ろしイラスト」で構成される書籍シリーズ「乙女の本棚」とのコラボレーション。会場の中には、美しいイラストとともに文学作品が展示されています。

うつくしいイラストと小説が一体になった「乙女の本棚」シリーズ 「萩原 朔太郎+しきみ 『猫町 』」 photo by ぷらいまり
うつくしいイラストと小説が一体になった「乙女の本棚」シリーズ 「萩原 朔太郎+しきみ 『猫町 』」(写真撮影:ぷらいまり)

知らなかった物語も、思わず世界観に没入しながら読み進めてしまったり。文章を読まずに、美しいイラストを辿っていくだけでも、会場全体の演出とあわせてその作品の雰囲気を楽しむことができますね。

この部屋のほかに、中島敦の「山月記」や、太宰治の「葉桜と魔笛」、谷崎潤一郎の「秘密」など、全部で6つの作品の世界観がそれぞれの部屋をまるごと使って繰り広げられていました。

「草丘の間」 太宰 治+紗久楽さわ 『葉桜と魔笛 』展示風景 photo by ぷらいまり
「草丘の間」 太宰 治+紗久楽さわ 『葉桜と魔笛 』展示風景(写真撮影:ぷらいまり)

文化財「百段階段」には、天井画や柱の彫刻といった多くの装飾が施されていますが、それぞれの部屋の装飾ともゆるやかに繋がるテーマを持った作品が選ばれているのも見どころ。

「漁樵の間」 中島 敦+ねこ助 『山月記 』展示風景 「漁樵の間」は中国に伝わる「漁樵問答」をモチーフにした装飾などが施されています。 photo by ぷらいまり
「漁樵の間」 中島 敦+ねこ助 『山月記 』展示風景
「漁樵の間」は中国に伝わる「漁樵問答」をモチーフにした装飾などが施されています。(写真撮影:ぷらいまり)

また、ほとんどのエリアで撮影もOKです。最上階の「頂上の間」は、特定の物語ではなく、緑に囲まれたガラス張りの空間に、レトロな電話や家具たちも置かれています。せっかくなら着物を着て、大正ロマンの世界に入り込んでしまうのもいいですね。

「頂上の間」の大正ロマンフォトスポット photo by ぷらいまり
「頂上の間」の大正ロマンフォトスポット(写真撮影:ぷらいまり)

もっと大正ロマンの世界観に入り込みたくなったら…

物語の世界に入り込める仕掛けがたくさんの展覧会ですが、もっと大正ロマンの世界を楽しめる企画も用意されています。

例えば、「大正ロマン×着物ランチ」は、アンティーク柄のコーディネートを中心とした着物を自由に選んで、着付けとヘアセット、そしてレストランでのランチ(またはアフタヌーンティー)がセットになったプラン。ハイカラな装いで、企画展と食事が両方楽しめます。

大正ロマン×着物ランチ
大正ロマン×着物ランチ

また、「大正ロマン喫茶室」では、ステンドグラスを配した大正ロマン風の空間演出の中で、懐かしの「喫茶メニュー」を気軽に楽しむこともできるんです。

大正ロマン喫茶室
大正ロマン喫茶室

さらに、閉館後の文化財でゆっくりと撮影や見学を楽しめる、人数限定のスペシャルチケットなどの特別チケットもオンライン限定で発売されています。

様々な角度から文化財の空間と近代文学の世界を楽しめる「大正ロマン×百段階段 ~文豪が誘うノスタルジックの世界~」は、2023年6月11日まで開催されています。大正ロマンの世界に没入してみませんか?

展覧会情報

大正ロマン ×百段階段 ~文豪が誘うノスタルジックの世界

公式サイト https://www.hotelgajoen-tokyo.com/100event/roman2023
期間    2023年 3月 25日 土 から 6月 11日 (日)
時間    11:30〜18:00 (最終入館 17:30)
会場    ホテル雅叙園東京 東京都指定有形文化財「百段階段」
料金    [平 日] 当日券 ¥1,200 / 学生 ¥600 [ 土日祝 ] 当日券 ¥1,500 / 学生 ¥800
※未就学児無料 、学生は要学生証呈示

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WRITER PROFILE

ぷらいまり

都内でサラリーマンしながら現代アートを学び、美術館・芸術祭のボランティアガイドや、レポート執筆などをしています。年間250以上の各地の展覧会を巡り、オススメしたい展覧会・アート情報を発信。 https://note.com/plastic_girl

Twitter:@plastic_candy

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