大阪万博から50年…「太陽の塔」の中って、今はどうなっているの?

ぷらいまり
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2023.06.09

1970年の大阪万博から約半世紀。2025年の大阪万博も近づき、さらに、2022年には大規模な「岡本太郎展」が3つの美術館で開催されたことでも再注目の集まる《太陽の塔》。

《太陽の塔》と名前を聞けば、誰もがその外観をぱっとイメージできますが、実は、2018年からその内部も見学できるようになっているって知っていましたか?この記事では、《太陽の塔》を訪問し、その内部展示の様子をご紹介します。

(写真撮影:ぷらいまり)
写真撮影:ぷらいまり

《太陽の塔》ってどんな作品?

《太陽の塔》の内部見学は事前予約制。予約に空きがある場合は当日券の販売もありますが、基本的には前日までに要予約です。オフィシャルサイトから、日にちと、30分間隔の時間を指定してチケットを購入しましょう。

チケットはQRコード。太陽の塔入館料のほかに、自然文化園・日本庭園の共通入園料もセットになっているので、太陽の塔がある万博記念公園にもスムーズに入館できますよ。

チケットを持っていざ万博記念公園へ。写真や映像では何度も見ていても、広場の中に鎮座する太陽の塔のベラボーな大きさを目の当たりにするとやはり圧倒されます。

万博記念公園の中にそびえ立つ《太陽の塔》(写真撮影:ぷらいまり)
万博記念公園の中にそびえ立つ《太陽の塔》(写真撮影:ぷらいまり)

《太陽の塔》は”4つの顔”を持っていて、外からは3つの顔を見ることができます。塔の頂部にあって未来を象徴する「黄金の顔」、正面にあって現在を象徴する「太陽の顔」、そして、背面にあって過去を象徴する「黒い太陽」。「黒い太陽」は、信楽のタイル約3,000枚を敷き詰めて作られています。

《太陽の塔》背面の「黒い太陽」(写真撮影:ぷらいまり)
《太陽の塔》背面の「黒い太陽」(写真撮影:ぷらいまり)

1970年に開催された日本万国博覧会の際に岡本太郎がデザインしたものとしてよく知られていますが、モニュメントや立体彫刻作品として作られたものではなく、「テーマ館」としてつくられたものなんですね。

ただ、《太陽の塔》自身が何を表しているのかは、岡本太郎本人が造形の秘密を一切明かしておらず、意外にも今でも分かっていないのだとか。「太陽の塔」という名前自体も原型が出来上がりしばらく経ってから名付けられたそうで、単純に太陽を造形化したものとも言えないのだそう。誰もが知っている作品ながら、誰にも分からない部分を秘めているとは神秘的です。

地下空間を通り、いざ太陽の塔の内部へ…!

それでは、いよいよ太陽の塔の内部へ。

太陽の塔の後方から地下空間に入り、予約時間の20分前から入館案内が始まります。塔内は1階部分のみ撮影可能ですが、2023年3月からは、塔内撮影専用のスマホケースをレンタルすれば、塔内全域での撮影が可能に。内部の様子を写真に収めたい方は、チケットカウンターでこちらをレンタルしましょう。

塔内撮影専用のスマホケースは500円/個でレンタル可能です。(写真撮影:ぷらいまり)
塔内撮影専用のスマホケースは500円/個でレンタル可能です。(写真撮影:ぷらいまり)

入り口からは《太陽の塔》の構想スケッチが並びます。そして、その先のプロローグ空間には《太陽の塔》の”第4の顔”である「地底の太陽」。博覧会終了後から現在も行方がわからない作品ですが、2018年の再生事業にあわせて再制作されました。

再制作された「地底の太陽」(写真撮影:ぷらいまり)
再制作された「地底の太陽」(写真撮影:ぷらいまり)

「地底の太陽」とあわせ、1970年代当時に展示されていた仮面や神像が展示され、また、万博当時の地下展示室の3つのゾーン「いのち」「ひと」「こころ」をモチーフにした映像が投影されます。当時と現代をつなぐ場所ですね。

その空間の先には、ついに、「太陽の塔」内部の展示である《生命の樹(せいめいのき)》が。

《太陽の塔》内部展示《生命の樹(せいめいのき)》(写真撮影:ぷらいまり)
《太陽の塔》内部展示《生命の樹(せいめいのき)》(写真撮影:ぷらいまり)

アメーバをはじめとした原生生物たちのいる「原始の海」から、カラフルで巨大な樹木のような「生命の木」が天井まで伸び、その上には進化の過程を辿る33種の”生きもの”がびっしりと。ここから階段を昇りながら、生命の生長と変貌を観ていきます。

《太陽の塔》内部展示《生命の樹(せいめいのき)》(写真撮影:ぷらいまり)
《太陽の塔》内部展示《生命の樹(せいめいのき)》(写真撮影:ぷらいまり)

この《生命の樹》は岡本太郎の生命観がそのまま形になっているもので、アメーバからヒトへとのぼっていくものの、「単細胞は下等で、人間が一番偉い」と訴えているわけではないといいます。ヒトもトカゲも、すべてのいきものが1本の木に配置され、どんな生きものも全てが対等同格で、根っこは一つだということを示しているのだとか。

《太陽の塔》内部展示《生命の樹(せいめいのき)》 ヒトのいる枝の先はどこに向かうのでしょうか?(写真撮影:ぷらいまり)
《太陽の塔》内部展示《生命の樹(せいめいのき)》 ヒトのいる枝の先はどこに向かうのでしょうか?(写真撮影:ぷらいまり)

階段を昇るごとに見える生きものたちが変化し、そうした多くの生きものたちを”見上げて”丁寧に見つめる体験というのはなかなかないように感じられました。

最上階まで到達すると、そこでは太陽の塔の「腕」に当たる部分も内部から観られます。1970年当時は、ここにエスカレーターがあり、地上30mの「大屋根」に出て、「未来」を表す空中展示空間に続いていたそうです。今観ても美しく、吸い込まれそうな空間ですね。

《太陽の塔》の腕部分(写真撮影:ぷらいまり)
《太陽の塔》の腕部分(写真撮影:ぷらいまり)

70年の「再現」ではない、「再生」への軌跡

実際に太陽の塔の内部を見学している中で、ひとつ気になった展示物がありました。それは、《生命の樹》の頂点付近にある、頭部のないゴリラの展示物。こちらは、実はあえて1970年当時の展示物をそのまま残してあるのだとか。

1970年当時の展示物(写真撮影:ぷらいまり)
1970年当時の展示物(写真撮影:ぷらいまり)

大阪万博の終了後も、《太陽の塔》は外からは見ることができたものの、半世紀近く放置されていた内部は廃墟同然。《生命の樹》の生物たちの像もほとんどは失われ、残っていたものも損傷が激しく、ほとんどの生物は、再生時に新規に制作されたものなのだそうです。

2016年より「耐震補強」と「展示再生」がスタート。このとき、塔の内部は、当時の正確な復元を目指す「再現」とするべきか、現在の知見や技術も取り入れた「再創造」とするべきかの議論がなされたそう。

1970年当時はエスカレーターだった場所も、軽量化のため階段に生まれ変わり、ゆったりと作品を楽しめます。(写真撮影:ぷらいまり)
1970年当時はエスカレーターだった場所も、軽量化のため階段に生まれ変わり、ゆったりと作品を楽しめます。(写真撮影:ぷらいまり)

結果的に選ばれたのは、両者の中間の「再生」。生物のラインナップや容姿などの基本的な部分は当時のまま、個々の生きもののディテールや照明といった空間演出には現代の技術が取り入れられているそうです。50年前の展示ながら、現代に見ても色あせないのは、そうした残すべき部分と新しいものを取り入れているのが理由のひとつかもしれないですね。

半世紀以上前につくられた作品であり、写真や映像で何度も目にしたことがあっても、実際に目の前で見ると、色あせない魅力が感じられます。2回目の大阪万博も近づく今のタイミングで、この空間展示を体験してみませんか?

近隣にある観覧車 OSAKA WHEEL からは、《太陽の塔》を上から見ることもできます。(写真撮影:ぷらいまり)
近隣にある観覧車 OSAKA WHEEL からは、《太陽の塔》を上から見ることもできます。(写真撮影:ぷらいまり)


※参考資料
・岡本太郎と太陽の塔 平野 暁臣/編著 小学館クリエイティブ
・太陽の塔  平野 暁臣/編著 小学館クリエイティブ

展示情報

太陽の塔

公式サイト https://taiyounotou-expo70.jp/
入館料
太陽の塔入館+自然文化園・日本庭園共通入園セットチケット 大人 /930円、小中学生 /380円
太陽の塔入館のみ(※原則、別途自然文化園・日本庭園共通入園料が必要です) 大人 /720円、小中学生 /310円
開館時間 HPでご確認ください。
休館日  HPでご確認ください。

ぷらいまり
WRITER PROFILE

ぷらいまり

都内でサラリーマンしながら現代アートを学び、美術館・芸術祭のボランティアガイドや、レポート執筆などをしています。年間250以上の各地の展覧会を巡り、オススメしたい展覧会・アート情報を発信。 https://note.com/plastic_girl

Twitter:@plastic_candy

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