東京駅前にオープン。想像することや偶然の出会いの出会いを楽しむアートセンター「BUG」

ぷらいまり
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2023.10.07

東京駅八重洲口に隣接するグラントウキョウサウスタワー。この1階に、新しいアートセンター「BUG」がオープンしました。ガラス張りで明るく入りやすい雰囲気の空間ですが、どのような施設なのでしょうか?

こちらでの第1回の展覧会 雨宮庸介個展「雨宮宮雨と以」(あめみやきゅうとい) の様子とあわせてご紹介します。

東京駅に隣接する新しいアートセンター「BUG」とは?

「BUG」(バグ) は、2023年9月20日にオープンした、リクルートホールディングスが運営する新しいアートセンター。同社が銀座で運営してきた「クリエイションギャラリーG8」「ガーディアン・ガーデン」という2つのアートギャラリーが今年活動を終了し、それに代わるかたちで展開されます。

BUG 外観(写真撮影:ぷらいまり)
BUG 外観(写真撮影:ぷらいまり)

「BUG」の名前の由来は、コンピュータのプログラム上の不具合「バグ」から。「バグが起きた」というと、不都合なことが起きるイメージですが、こちらでは、そのような少し”おかしなもの”も、科学反応のように楽しんでいきたいという意味が込められているのだそうです。

ギャラリースペースにカフェが併設されており、今後、展覧会や参加型のプログラム、独自のアワードである「BUG Art Award」などが開催されます。

BUGのギャラリースペース 雨宮庸介個展「雨宮宮雨と以」 展示風景(写真撮影:ぷらいまり)
BUGのギャラリースペース 雨宮庸介個展「雨宮宮雨と以」 展示風景(写真撮影:ぷらいまり)

会期中に発展し続ける展覧会「雨宮庸介個展『雨宮宮雨と以』」

その「BUG」で開催される第1回の展覧会は、 アーティスト・雨宮庸介さんの個展「雨宮宮雨と以」(あめみやきゅうとい)。不思議なタイトルの中には、作家の名字「雨宮」に続き、「Q(きゅう)」と「問い(とい)」という言葉が隠れています。

アーティスト・雨宮庸介さんとは?

雨宮庸介さんは、1975年茨城県生まれ、山梨県在住のアーティスト。2000年にBUGの前身である「ガーディアン・ガーデン」主催の公募展『ひとつぼ展』でグランプリを受賞し、2011年に渡欧。2022年に帰国し、現在は日本を拠点に活動しています。

アーティスト・雨宮庸介さん(写真撮影:ぷらいまり)
アーティスト・雨宮庸介さん(写真撮影:ぷらいまり)

絵画や彫刻、映像、パフォーマンスなどの領域を横断し、現実と虚構が複雑に絡み合う、世界の条件や普遍性を揺さぶるような作品が特徴的です。

会期中に発展し続ける、インスタレーションとパフォーマンス

本展では、2001年から2023年までに作られた作品で構成したインスタレーションや、新作の「原稿彫刻」作品が展示されています。また、雨宮さんは会期中のほとんどの日程をBUGに滞在し、パフォーマンスや公開制作などを行っていくそうです。

雨宮庸介個展「雨宮宮雨と以」 展示風景(写真撮影:ぷらいまり)
雨宮庸介個展「雨宮宮雨と以」 展示風景(写真撮影:ぷらいまり)

不定期で行われるレクチャーパフォーマンス《For The Swan Song A》は、身体の動きと言葉を使ったパフォーマンス作品。アーティストによる作品解説かと思いながら話を伺っているうちに、現実と虚構が曖昧になるような表現に引き込まれていきます。

雨宮庸介さんによるレクチャーパフォーマンスの様子(写真撮影:ぷらいまり)
雨宮庸介さんによるレクチャーパフォーマンスの様子(写真撮影:ぷらいまり)

雨宮さんが不在の日には、「木曜日はラッキーデー」として、布施琳太郎さんをはじめとした他のアーティストによって雨宮さんの紡いできたレクチャーパフォーマンスを引き継ぐという試みも。

また、《果物彫刻の公開制作》として、会場でも展示されているりんごの彫刻が雨宮さん本人ではないアーティストたちによって制作される様子を観ることもできます。これから会場で公開制作をされる作品もあり、会期中に発展し続ける展覧会です。

《果物彫刻の公開制作》では、作品ができるまでの様子を観ることができます。(写真撮影:ぷらいまり)
《果物彫刻の公開制作》では、作品ができるまでの様子を観ることができます。(写真撮影:ぷらいまり)

1300年かけて完成するプロジェクト《1300年持ち歩かれた、なんでもない石》

こうした雨宮さんの作品の中でも印象的なのは、2014年にはじまり3314年に終了する《1300年持ち歩かれた、なんでもない石》というプロジェクト型の作品。それ自体には価値のないただの石を、6人が1つずつ引き継ぎながら持ち続け、1300年後にその石を持った6名が同じ場所に集まる…という作品です。

雨宮庸介個展「雨宮宮雨と以」 展示風景 手前の紙に《1300年持ち歩かれた、なんでもない石》についての文章が書かれています。(写真撮影:ぷらいまり)
雨宮庸介個展「雨宮宮雨と以」 展示風景 手前の紙に《1300年持ち歩かれた、なんでもない石》についての文章が書かれています。(写真撮影:ぷらいまり)

1300年という年月について、雨宮さんは「とても長い年月でありながら、テクノロジーでは決して届かない部分を、人類に対する漠然とした愛によって補わなければ想像力が辿り着かない年月として、1300年がちょうど良かったのです。」としています。

会場では、このプロジェクトについて記した文章を持ち帰ることもできます。あまりに壮大で、想像力がかき立てられるプロジェクトです。

併設のカフェ「BUG Cafe」で 偶然を味わおう

ギャラリーに併設されているのは、谷中にあるカフェ「HAGISO」の運営する「BUG Cafe」。「偶然を味わうカフェ」をコンセプトとしています。

展覧会とコラボレーションした「1300年後のコーヒー 飲み比べセット」

こちらのカフェでは、BUGの展覧会ごとに展示内容にあわせたコラボメニューも提供されます。雨宮庸介展のコラボメニューは、「1300年後のコーヒー 飲み比べセット」(850円(税込))。

「1300年後のコーヒー 飲み比べセット」(写真撮影:ぷらいまり)
「1300年後のコーヒー 飲み比べセット」(写真撮影:ぷらいまり)

《1300年持ち歩かれた、なんでもない石》に着想して「1300年後のコーヒー」を想像し、カカオやドライフルーツなどを調合した2種類の代替コーヒーと、ブレンドコーヒーを飲み比べることのできるセットです。

「代替コーヒー」でコーヒーの味が再現されるのに驚きつつも、本物のコーヒーのカップを口に近づけると、目が覚めるようなコーヒーの香りと複雑な味が感じられ、コーヒーという飲み物の面白さにも気づきます。

「偶然と出会う面白さ」をつくりだす「はちあわせコーヒー」

また、ユニークなのは「はちあわせコーヒー」。6枚つづりのコーヒーチケットを購入した人が、そのうちの1枚を「こんな人に贈りたい」と記入して”はちあわせ猫”に貼りつけ、そのチケットを見て「わたしのことだ!」とピンと来た人はそのチケットをもらってコーヒーを飲むことも出来るという仕組みです。

はちあわせコーヒー(写真撮影:ぷらいまり)
はちあわせコーヒー(写真撮影:ぷらいまり)

「今日、一番最初にオフィスに着いた人」のために、「昨日、一番最後にオフィスに残っていた人」から1杯が贈られたり、1杯のコーヒーを通じて知らない誰かと交流するような試みです。「これを贈ってくれた人はどんな人だろう?」なんて、想像もふくらみますね。これは、BUG Cafeが大事にしている「偶然と出会う面白さ」をつくりだす仕組みのひとつなのだそう。

「はちあわせ猫」にチケットを貼りつけると 偶然の出会いが楽しめるかも (写真撮影:ぷらいまり)
「はちあわせ猫」にチケットを貼りつけると 偶然の出会いが楽しめるかも (写真撮影:ぷらいまり)

「クリエイションギャラリーG8」や「ガーディアン・ガーデン」ゆかりのグッズも

カフェの中には「クリエイションギャラリーG8」や「ガーディアン・ガーデン」で展示されてきた作品の一部もディスプレイされています。毎年恒例のチャリティ企画で販売されてきた招き猫や升もあり、以前にこれらのギャラリーで行われた展示も思い返せるような、過去とのつながりも楽しめるカフェになっています。

過去のチャリティ展で販売された升もディスプレイされています。(写真撮影:ぷらいまり)
過去のチャリティ展で販売された升もディスプレイされています。(写真撮影:ぷらいまり)

東京駅前で電車やバスを待つちょっとした空き時間に、作品や人との偶然の出会いや、想像力を働かせることを楽しめるアートセンター「BUG」。気軽に立ち寄ってみませんか?

展覧会情報

雨宮庸介個展「雨宮宮雨と以」

公式サイト https://bug.art/exhibition/amemiya-2023/?pid=outline
会期    2023年9月20日(水)~10月30日(月)
時間    11:00 — 19:00
休館日   火曜
入場料   無料

ぷらいまり
WRITER PROFILE

ぷらいまり

都内でサラリーマンしながら現代アートを学び、美術館・芸術祭のボランティアガイドや、レポート執筆などをしています。年間250以上の各地の展覧会を巡り、オススメしたい展覧会・アート情報を発信。 https://note.com/plastic_girl

Twitter:@plastic_candy

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