みなさん、こんにちは。半分台湾人のSeikyoです。
今回みなさんにご紹介するのは、台湾で電柱のあるパーツを再利用して作られた、アンティークな照明ランプです。
早速みていきましょう!
台湾電力会社が立ち上げた、生活雑貨ブランド「TPCreative」
「台電文創(TPCreative)」は台湾唯一の公営電力会社である「台湾電力公司」が立ち上げた生活雑貨ブランド。発電の過程で生まれた副産物や廃棄物をデザインの力で再利用して、電気を使用する人々の生活になじむプロダクトを開発することで、人々の発電による環境問題への意識向上を目指しています。
TPCがこれまで目を向けてきた「廃棄素材」は実に様々で、水力発電に使われるダムの底に堆積した泥土から、一昔前の電柱の上部に取り付けられていた「腕木(うでぎ)」と呼ばれるパーツや絶縁に使われる「碍子(がいし)」、火力発電で燃え尽きた石炭灰にまで及びます。これら全てに共通するのは、どれも発電や電力供給の過程で欠かせない部品や原料、もしくは副産物であったことです。
TPCはこれらの材料を使って台湾のデザイン事務所と共同でプロダクトを開発し、その裏に潜むストーリー性も商品の一部として作り上げることで、ブランドの情緒的価値を消費者に訴えかけ、再利用の価値があまりないとされてきたものを華麗に転身させることを実現させたのです。
かつての電柱に取り付けられていた「腕木」
「腕木(うでぎ)」とは電柱の上部に取り付けられている横向きのアームのことで、碍子や変電設備などを取り付けるのに欠かせない部品です。今では木製のものは、山中の道路に立つ電柱でかろうじて見かけることができますが、台湾では都心部を中心に日本よりも電線の地中化が進んでおり、今では電柱自体も少なってきています。一昔前の台湾の街頭に立つ電柱がまだ木製だった時代に活躍した腕木はその役目を終え、台湾電力会社の材料貯蔵倉庫内に眠ったままの状態となったのです。
材木は幅広く針葉樹や広葉樹から作られていることが多く、かなりの重さが加わるのと風雨にもさらされるので、一定の強度を備えている必要があります。現在では台湾でもほとんどがコンクリート製の電柱と金属の腕木の組み合わせに立て替えられています。
かつて使われていた腕木の表面には、これまで器材や碍子が取り付けられていたことから多数の穴が存在していたり、素材自体が傷んでいたりと、新たな木材として加工処理するにも一定の難易度があり、いかにして再利用するかが目前の課題となっていました。
照明器具の本体部分に見事に再利用される
今回TPCは、持続可能な方法や原料を再利用して、木のぬくもりを感じられる照明ランプを世の中に送り出してきたことで知られる、台湾の照明器具ブランド「META design」と共同で「Whims E010 ベッドサイドランプ」の開発プロジェクトを始動させました。
長年、台湾電力会社の倉庫に眠っていた「腕木」を照明器具の本体部分に使用し、照明部分はMETAの代表的なベッドサイドランプ「Whims」を融合させた照明器具となっています。材料の状態や特性を見極める工程から、商品企画とデザイン・製造販売まで、様々なスタッフの知恵と技術が結集されて、商品化にまでたどり着いたのです。
「Whims E010」は特にベッドサイドでの読書やスマホを見るシーンを想定してデザインされており、壁面に取り付けることで自分に最適な角度や明るさに調整できたりと、寝る前のひとときをやさしい光が照らしてくれます。
役目を終えた「もの」で新たな「ものづくり」を
世界ではまだまだ大量のエネルギーや資源を消費して、人々の生活に必要な工業製品を生産・消費・廃棄しています。現状のままのサイクルだと地球がもたなくなるだけでなく、人々の生活に必要な資源の取得も困難になることが懸念されています。
その中でこのプロジェクトは、新たな材木を伐採するのではなく、倉庫に眠っていた既存の資源に新たな価値を見つけ出すことによって、役目を終えた「もの」から創意工夫をこなして「ものづくり」を行うサイクルを生むことを実現しました。
また天然木材を使用していることから、再利用されたのちも本体一つ一つがどれもオリジナルの木目や色合いを醸し出していて、その模様や質感からもかつて電力を供給するために重要な役割を担ってきた痕跡も感じとることができ、新たに「明かりを灯す」という役割も廃棄された木材に与えました。木のぬくもりだけでなく、電気が使えるありがたさも感じられそうですね。
では、次回もお楽しみに!
商品情報
| TPCreative
https://www.tpcreativego.com/
| META Design
https://www.meta.com.tw/