台湾東部に住む小学生たちが、日々快適に登下校できるように開発されたスクールバッグとは

Seikyo
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2022.07.23
台湾東部に住む小学生たちが、日々快適に登下校できるように開発されたスクールバッグとは

みなさん、こんにちは。半分台湾人のSeikyoです。

台湾東部の台東県は西部の広大な平野と違い、山に囲まれた土地を利用した農業などの一次産業が盛んで、都会から離れた自然豊かな場所として、人気の観光地にもなっています。今回は台東の自治体によって手掛けられた、小学校の児童が使うスクールバッグの開発事例について、ご紹介していきたいと思います。

早速みていきましょう!

へき地に住む小学生のために作られたスクールバッグ

台東県はこれまで、安全で快適な学習環境を提供することや、多角的な学校教育のカリキュラムを制定するなど、教育に力を注いできただけでなく、日本と同じく少子高齢化が進んでいる中で、保護者の負担を軽減するための育児政策の推進にも力を入れてきました。

今回、台湾の新しい学期が毎年の9月に始まることに向けて、学齢期に間も無く入る子供たちを対象に、小学校の通学に欠かせないスクールバッグの開発に乗り出しました。日本のような統一規格の「ランドセル」は台湾にはなく、どういったバッグを学校に持っていくかは、基本的に各家庭に委ねられています。

農村地帯が多い台湾東部(画像提供:©️Taitung Design Center)
農村地帯が多い台湾東部(画像提供:©️Taitung Design Center)

今回新たにスクールバッグを開発するにあたって考慮された点の一つが、低学年の学童たちでも長い時間背負えるということ。というのも、台東は交通の便が都会ほど良くなく、遠い集落から学校まで通う子供も多い中で、骨に負担がかかりすぎないリュックの開発が必要でした。また、二つの山脈に挟まれた東部の平野では、夏になると盆地のように気温が上がることから、体力が奪われやすい天候の中でも軽量で動きやすいバッグが、より必要とされていたのです。

実用性と安全性を兼ね備えたデザインに

今回台東デザインセンターの推薦を受け、10年以上のバッグ開発の経験がある台湾のブランド「Super Double」と共同で開発されることになりました。毎日背負うスクールバッグの快適性と機能性を担保するために、体への負担が軽減されるような設計と、教科書だけではなく学校へ持ち運ぶ様々なものが収納できるようにデザインされています。

また、学童の安全を考慮して、バッグの外側に反射材を取り付けたり、セイフティホイッスルが付属されていたりと、保護者が安心して児童を学校に見送れるように、さまざまな工夫がなされています。

スクールバックの機能についての説明(画像提供:©️Taitung Design Center)
スクールバックの機能についての説明(画像提供:©️Taitung Design Center)

バッグのカラーは、汚れが目立ちにくいベージュの一色に統一され、今の時代に相応しくユニセックスなデザインとなっています。児童の安全を考えて、あえて目立ちやすい色をバッグの外側に使用しているのも伺えます。

台湾では太陽を黄色で表すことから、東から日が昇る意味合いを込めて、バッグの外側は黄色でデザインされた(画像提供:©️Taitung Design Center)
台湾では太陽を黄色で表すことから、東から日が昇る意味合いを込めて、バッグの外側は黄色でデザインされた(画像提供:©️Taitung Design Center)
男女問わず、同じデザインとなっている(画像提供:©️Taitung Design Center)
男女問わず、同じデザインとなっている(画像提供:©️Taitung Design Center)

幼稚園を卒業する園児たちに、特別に贈られる

左上から、星空・海・バルーン・米と、台東のシンボルを表すオリジナル刺繍バッジも付属されている(画像提供:©️Taitung Design Center)
左上から、星空・海・バルーン・米と、台東のシンボルを表すオリジナル刺繍バッジも付属されている(画像提供:©️Taitung Design Center)
子供のその日の気分や好みに合わせて、自由にバッグに取り付けられる(画像提供:©️Taitung Design Center)
子供のその日の気分や好みに合わせて、自由にバッグに取り付けられる(画像提供:©️Taitung Design Center)

未来を担う子供たちにより良い学習環境を提供するという想いを込めて、台湾の卒業シーズンである今年の6月に、県内の一部の小学校の付属幼稚園に卒業お祝いとして提供が開始されました。

同じ学年の児童でも、住んでいる地域によっては通学の状況や学習環境が異なります。そうした中で、それぞれの環境特性に合った社会インフラのあり方や、学習の過程でなくてはならない必須品が、本当に子供たちにとって使いやすく、安心・安全なものであるか、常に見直す必要があるということをとても実感できる事例でした。日々当たり前のように使っている身の回りのものでも、より良い使用体験を作っていくためには、ちょっとした知恵や工夫が必要となり、様々な関係者や専門家を巻き込んでいくことで、今回のようなスクールバッグの開発が実現できたのだと、強く感じました。

では、次回もお楽しみに!

|臺東設計中心(臺東デザインセンター)
https://ttdc.center/

|Super Double
https://superdouble.org/

プロジェクト主催:臺東県政府教育処

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WRITER PROFILE

Seikyo

1996年台湾生まれ。半分台湾人。東京でグラフィック&Webデザイナーとして働きながら、台湾と日本の文化のギャップをデザイン的な視点で発信中。

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