みなさん、こんにちは。半分台湾人のSeikyoです。
今回ご紹介するのは、最近インテリアとしても人気が出てきている「お香」。台湾で伝統的なお線香が、新しく商品化された事例について、お届けしたいと思います。
早速みていきましょう!
90年の波乱の歴史を持つ、台南の老舗デパート「林百貨店」
台湾の古都と呼ばれる台南の繁華街の中心地に建つ「林百貨店」は、台湾が日本統治時代であった1932年に、山口県出身の実業家林方一(はやし ほういち)によって創立された歴史のある百貨店です。台湾に残る現存最古の百貨店で、当時は最先端の技術によって作られたモダンなデパートであり、5階建ての建物も珍しかった時代にエレベーターを備え付けていた百貨店として、戦前は注目を浴びていました。
しかしながら敗戦後は日本人の引き揚げに伴って百貨店としての機能を失い、廃業後は事務所や派出所など役目を転々とし、1980年代には完全に空きビルとなり、長らく廃れてしまうこととなりました。
その後は改めて建物としての歴史的価値が見直され、ついには2010年に大幅な修復工事がなされ、3年ほどかけて当時の姿が蘇ることになりました。戦前は日本の領地であったため、ここ台南も太平洋戦争末期にはアメリカ軍の空爆を受けていたため、当時建物の外壁に残った被弾の跡は、そのままの姿で残されています。
修復工事を終えた建物本体は、民間の運営業者によって新たな商業空間「HAYASHI Department Store」としてリニューアルオープンしました。文化クリエイティブ販売施設として、ご当地グルメや台湾茶など、台南地元のファッションやギフト商品を中心に取り扱っており、開店当初から時には入店の人数制限を行うほど、国内外からの観光客で賑わいました。
BEAMS JAPANと共同で商品開発に取り組む
そんな林百貨店ですが、BEAMS JAPANと地元産業の発掘と商品化に力を入れています。
今回「台南香香パンパン」と名付けられたお香を新たに開発し、「南城歩調」と「近郷之語」の2つの香りのバリエーションを取り揃えました。「パン」とは「香」を台湾語で発音した音で、「香香」と言うと一般的に「香ばしい」いう意味になります。
ピンク色の「南城歩調」はウッディな香りが特徴で、オレンジ色の「近郷之語」はシナモンの香りが配合されています。どちらも心地よい芳香から、台南の歴史ある街中を思わせるような、香りに癒されたひとときを過ごすことができることでしょう。
1895年創業の「吳萬春香舖」の老舗お香専門店
今回お香の生産に携わったのが、台南に1895年に創業した香老舗の「吳萬春香舖」です。取り扱っているお香の原材料は沈香(じんこう)、檀香(だんこう)などがあり、一部天然の漢方素材を配合することで独特の香りを醸成したお香が特徴です。現在は4代目師匠の手によって、合成香料は一切使わずに、古くから受け継がれてきた技法で様々なお香の商品を生産し続けています。
台湾でもお線香はお寺などで一般的に使われており、人と神様を繋ぐものとして古くから人々の生活には欠かせないものとなっていました。しかし機械によって大量生産が可能になり、厳しい価格競争にさらされたことなどにより、徐々にお線香の産業も衰退の一途を辿っていくことになったのです。
そんな時代の流れの中で、吳萬春香舖は伝統的な文化を受け継いでいくという強い使命感を持って、神様に捧げるためのお線香だけでなく、人々の生活シーンの中にも取り入れた新しいお香の商品を多数考案するなど、現代の暮らしに寄り添った形で、文化の継承に力を入れています。
地域の伝統産業の再発掘と、活性化を促す動き
BEAMS JAPANが「日本」をキーワードに、幅広いカテゴリーのコンテンツを発信し、日本の魅力を世界に発信しているように、この事例では「台湾」を起点に、埋もれつつある伝統文化を再発見し、クリエイティブなアイデアを取り入れて、商品化を実現させました。
長らく地域の人々の暮らしを支えてきた伝統産業から、改めてその価値を見い出し、現代の暮らしに合った形で再定義されることが、今後の社会でもますます増えていくことが考えられます。地方創生などといった地域を活性化させることにもつなげていくことで、代々受け継がれてきた先人の技術や知恵が失われてしまわないよう、今後もこういった取り組みがより増えていくことを期待したいと思います。
では、次回もお楽しみに!
商品情報
|台南香香パンパン
https://www.beams.tw/news/220505/