みなさん、こんにちは。半分台湾人のSeikyoです。
今回ご紹介するのは、前回と同じく台北市立美術館のミュージアムショップにて2020年に販売された、フラットだけど立体的に見えるトリックアートのようなお皿セットです。
何をモチーフに作られたのか、早速見ていきましょう!
台湾の現代建築の指標となる台北市立美術館
1983年に建てられた台北市立美術館の建築デザインは、台湾の建築家である高而潘(1928-2022)氏によって手掛けられ、いくつも交錯する四角いパイプ状の外観が特徴になっています。斗拱(ときょう)と呼ばれる、東洋の建築によく見られる屋根の軒を支える木製のパーツをモチーフに作られており、1960年代に日本で起きた建築運動「メタボリズム」からも強く影響を受けた建築様式となっています。
縦と横方向に織り合わさった独特な立方体の展示空間は、中国の伝統家屋の様式の一つである「四合院(しごういん)」からインスピレーションを得ており、直角に配置された家屋の中央にお庭を囲む空間の使い方をうまく再現しています。
美術館がオープンしてから30年ほど経つなか、アートを発信するスペースとしてはもちろん、非常に前衛的な外観は台湾の現代建築のシンボルとしてだけでなく、訪れた人々の記憶に残る存在として居続けました。今回よりフレッシュな視点と切り口から、美術館にまつわる記憶を人々の生活空間に取り入れるべく、新しい商品の開発に取り組みました。
美術館の建物を食卓のアートに変身させたブランド「JIA」
今回台北市立美術館とコラボすることになったのは、香港のデザイナーズブランド「品家 JIA」です。「Jia」とは「家」の中国語の発音を表しており、2007年に活動を始めて以来、華人を中心とした生活様式の再解釈を得意とし、数々の食器を世の中に送り出しています。
美術館の建物をどのようにしてお皿で表現するのか。JIAがたどり着いたのが、一見立体的に見えるが、実はフラットなままであるということを抑えた、異なる角度から器として楽しめるようなお皿を創ることです。お皿としての機能は維持しつつ、人々の記憶に残る台北市立美術館の建物の印象をうまく落とし込むことに挑戦しました。
「ホワイト、立方体、モジュール化」
JIAの専属デザイナーの洪忠權さんは「ホワイト、立方体、モジュール化」の3つのキーワードを原点に、3つの異なるお皿のサイズを提案。自由に配置の組み合わせを変えることで、食卓ごとにあった置き方をすることができます。
どれも六角形をベースに、アイソメトリックの技法で白の磁器の上にグレーのハーフトーンの図形が描かれており、おかずなどの盛り付けが美術館の白い箱に落ちたかのような、トリックアート風な雰囲気を楽しめます。遠くから美術館の建築を眺めているかのような、毎日の食事のシーンをおしゃれに演出することができそうです。
「私は食事も美意識も、生活の質を変えられる癒しの要素になると考えています。今回美術館を食器にリデザインすることで、実験的な改編を行っているかのような気分でした。まるでコミック作品を実写映画に改編させるように、異なる表現方法でありながらも、同じコアな理念を伝えていることに変わりはありません。」と洪さんは話します。
この作品は建築家と食器デザイナーの台北市立美術館への想いが、30年越しに巡り会う瞬間でもありました。アートが美術館だけでなく日常空間の中に移り、美術品を展示するスペースから、「食」を盛り付ける器と化したのです。
現在このお皿セットは、美術館のミュージアムショップで販売されているほか、オンラインショップでもお買い求めいただけます。どこにでもあるような、ありきたりの記念グッズを量産するのではなく、常にオリジナリティの溢れた商品を開発し続ける台北市美術館から、今後も目が離せないと思います。
では、次回もお楽しみに!
商品情報
北美館× JIA 聯名盤
|台北市立美術館 オンラインショップ
https://www.taiwanarttogo.com/products/tfam-%C3%97-jia-plate
|JIA 品家
https://www.jia-inc.com/