2021.10.28

話し声も、歌声も。自分の声を取り戻す装置「Voice Retriever」で広がる「声」の可能性

人とおしゃべりしたり、歌ったり、笑ったり。日常でほとんど意識することなく発している「声」。でも、さまざまな理由で、声が出せなくなってしまう可能性もあるんです。そんな中、「声」を取り戻してコミュニケーションをサポートする新しい装置の開発が進められ、その量産化・改良に向けたクラウドファンディングが行われています。

この記事では、自分の声を取り戻す装置「Voice Retriever」についてご紹介します。

「声」を出す装置、どうして必要なの?

普段、声を出す時って、ほとんど意識しないですよね。その声が出せなくなる状態、というのはなんとなく想像するのが難しいかもしれません。

でも、喉のがんの手術などでのどを取ってしまった場合や、肺に空気を送ったり痰を吸引しやすくするために気管に穴をあけた場合、また、口から”食べること”と”飲み込むこと”がうまくできなくなってしまう摂食嚥下障害(せっしょくえんげしょうがい)という病気の影響で声が出せなくなってしまうことがあるのだそうです。

想像しづらいけれど、ひょっとしたら将来自分にも起こりえることのように思えますね。

「口は話すときのように動かせるのに、声が出せない。」という状態は、想像しただけでももどかしくて、それだけでもコミュニケーションは難しくなってしまうように思えます。

摂食嚥下障害の方を診療されていた東京医科歯科大学 教授の戸原 玄さんは、そうした方々と接する中で「私たちも何かできないだろうか?」と考え、「Voice Retriever」という装置の開発をはじめられたといいます。

前列中央が戸原玄さん、左端が「Voice Retriever」の開発をともに進めている大学院生の山田大志さん
前列中央が戸原玄さん、左端が「Voice Retriever」の開発をともに進めている大学院生の山田大志さん

声を取り戻すための装置「Voice Retriever(ボイス レトリーバー)」とは?

そういえば、そもそも私たちの声ってどのように出ているのでしょうか? 私たちの「声」は、以下のような身体の動きで作られているのだそうです。

 ① 喉にある声帯を振動させることで「原音」が作られる
 ② 喉 〜 口を通過する際に、舌のうごきや息によって、「音色」(母音、音の高低)が変えられる
 ③ さらに口の動きでアクセント「子音」が付けられる
 ④ それらが繰り返されて、いろいろな音、つまり「言葉」が作られる

「声」の出る仕組み
「声」の出る仕組み

手術などで声帯を取り除いてしまうと、① の「原音」を鳴らすことができなくなってしまい、口をいくら動かしても、「声」はでなくなってしまうんですね。

戸原さんたちの研究グループが開発を行っている「Voice Retriever」は、この①の「原音」をスピーカーで代替するというもの。マウスピースで前歯の裏側にスピーカーを仕込み、外部の音源をそのスピーカーにつないで、口の中で音が鳴っている間に口を動かすことで「話す」ことができます。

  マウスピースにスピーカーを仕込みます。
マウスピースにスピーカーを仕込みます。
コントローラーに繋ぎ、ボタンを押すと声が出ます。
コントローラーに繋ぎ、ボタンを押すと声が出ます。

実際にその人の声帯から発話する能力を取り戻せるものではありませんが、自身の声で話す体験に近い発話・会話ができる機能を備えた器具を目指して、開発と改良を重ねられているそうです。

時には、この声に抑揚をつけるために、オタマトーン (©︎MAYWA DENKI、販売元:(株)キューブ) というトイ楽器とつなぐことで、自然な発声に近づけるなんていう検討も。

「話し声」だけではなく「歌声」も。「Voice Retriever」で広がる未来

失ってしまった能力を補う道具といえば、例えば、義手・義足なども思い出しますね。

これまでに「ナンスカ」のなかでは、服や靴と同じように「身につけることを楽しめる」ように楽しめる義足の開発や、テクノロジーとファッションで身体を拡張を拡張する試みなど、足りないものを補うだけではない、その先を目指す取り組みをご紹介してきました。

この「Voice Retriever」の目指す未来も、使う人が、単に「何とか話せた」というのではなく、むしろ「話しているところを見せたい!」、「ちょっと練習して歌でも歌っちゃおう!」と思えるくらいのところにあり、そこまで行かなければ、本当の意味での完成には近づけない、と考えられているのだそうです。

その目指す未来は、「話し声」だけではなく「歌声」にもひろげられ、世界的に有名なギターブランドのESPもこのプロジェクトに賛同しているそう。実用化や改良が進めば、声を失った方が歌手デビューするということも、夢ではなくなるのかもしれません。

Voice Retriever

「Voice Retriever」、現在、試作機はほぼ完成し、すでに何人かの患者さんにもお試しいただいているそうです。そして、現在はひとつずつ手作りで作っているものを量産できるようにしたり、さらに装置を改良していくために、クラウドファンディングを実施しています。

3年計画で
Step1(2021年度):実証研究へ向けた検討
Step2(2022年度):機器の改良と量産化のための検討
Step3(2023年度):より「自由」な発声を目指した検討
といった計画で進められる予定とのこと。

Voice Retriever

現在、第一目標の300万円、第二目標の800万円を達成し、Step3のための第三目標(サードゴール)1800万円を目指して、2021年11 月 25 日(木)23時まで継続されています。「声」の可能性が広がる未来。新着情報にも興味深いものがたくさんのっていますので、気になる方は是非一度、プロジェクトページをチェックしてみてくださいね。

プロジェクト情報

Voice Retrieverの開発で、自分の声を取り戻す体験を!

公式サイト https://readyfor.jp/projects/voiceretriever

実行者     戸原玄/山田大志(東京医科歯科大学 摂食嚥下リハビリテーション学分野)
第三目標金額 1800万円
形式     寄付金控除型/All or Nothing

・公開期間  9 月 27 日(月)10 時〜11 月 25 日(木)23 時
・資金使途  Voice Retriever および外部装置の開発、改良、および量産化

1954

ぷらいまり

ぷらいまり

都内でサラリーマンしながら現代アートを学び、美術館・芸術祭のボランティアガイドや、レポート執筆などをしています。年間250以上の各地の展覧会を巡り、オススメしたい展覧会・アート情報を発信。 https://note.com/plastic_girl
Twitter:@plastic_candy

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